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外国の調査で安倍首相の支持率が31%だったことについて

 ⭐安倍首相の支持率が31%?

「モーニング・コンサルトの世論調査で安倍首相の支持率が31%になっている」という問い合わせがだいぶ来ていました。

 この調査は4月21日に実施されたもので、安倍首相の支持率が確かに31%となっています。政治家や評論家など、多くの人がこれに関心を寄せているようです。


⭐モーニング・コンサルト発表の支持率はいつも低い

 実は、モーニング・コンサルトが実施した世論調査は、今回話題になったものだけではありません。この会社は世論調査を毎週だしています。そこで、今年になってからの推移をまとめてグラフをつくりました。

20200426モーニング

 これをみると、今回の31%が特異な数字ではないことわかりますね。ですから今になって「支持率31%」と騒ぐ必要はなさそうです。(データ出典: How the Coronavirus Outbreak Is Impacting Public Opinion


⭐日本の世論調査と比較すると

 では、日本の新聞社やテレビ局が実施する調査とモーニング・コンサルトの調査を比べるとどうでしょうか。

 モーニング・コンサルトの表記ではPM Abe(安倍首相)の支持率となっており、Abe Cabinet(安倍内閣)とは異なります。ここではそれに留意した上で、日本の世論調査と比較してみましょう。

 下の図は、ここ一年間の日本の世論調査について平均を計算したもので、赤い曲線が内閣支持率となっています。また、モーニングコンサルトの結果(支持率)をピンクの直線で示しました。

20200425内閣加工

 内閣支持率には、読売新聞は高めに出す、朝日新聞は低めに出すといった各社に固有の傾向がありますが、グラフにはそうした偏りを打ち消す補正を行った結果を表示しています。そのため、各社が発表した生の数字とはずれがありますが、平均の結果は最も正確です。

 対してモーニング・コンサルトは日本のものとは独立して扱うわけですから、補正をしていません。つまり、日本の世論調査を代表した平均である赤い曲線と、モーニング・コンサルトが発表した生の数字であるピンクの直線を比較するグラフになっています。

 モーニング・コンサルトの方が10ポイントほど低いことがわかりますね。

 このずれは、おそらく調査方法によるのでしょう。日本の世論調査は、時事通信社は個別に訪問し面接する形式で、他は携帯電話と固定電話にかける形式でされています。しかしモーニング・コンサルトはWebを介した調査となっています。こういった方法の違いが固有の偏りを生んだと思われます。

 しかし大切なのは、日本の調査も、モーニング・コンサルトも、ともに2020年2月中の下落や、2月末から3月中旬にかけておきた上昇、3月末から4月にかけた下落をとらえていることで、増減はちゃんと整合するんですね。


⭐虹色の内閣支持率

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 上の図は、2013年以降に実施されたおよそ1000件の世論調査について、各社が発表した内閣支持率をそのまま表示したグラフです。高めに出すものから低めに出すものまで並べると虹ができるのです。

 これはつまり、「高めのところはいつも高めに」「低めのところはいつも低めに」という偏りがあるものの、増減は整合していることを意味します。

 世論調査は、調査の方法や質問の仕方など、各社の形式によって固有の偏りがつくられます。しかし適切な手法で行われているからこそ、異なる新聞やテレビ局の調査が整合的に動くのです。

 朝日新聞による支持率は常に低めになっています。読売新聞や日経新聞、JNNによる支持率は常に高めです。「一体どっちが正しいんだ」としばしば議論がおこりますが、世論調査の結果が調査の形式によって左右される以上、これはむしろ当然のことなのです。

 朝日が低い支持率を出しがちな中で、前回の衆院選は与党が圧勝を果たしました。読売が高い支持率を出しがちな中で、前回の衆院選はやはり与党が圧勝を果たしました。どちらだって事実は変わりません。

 高めであろうと低めであろうと、選挙の勝敗は常につきつけられてくるものです。だからこそ「どっちが正しいんだ」という議論は本質的なものではありません。前回選挙で与党が勝利したという事実があり、その時点の支持率と比べてどのように変化したのかということこそが大切です。政権は、次の選挙で実力としてあらわれるからこそ、世論の推移を注意深く見守り、時には震え上がったりもするわけです。

 ですから一つの調査にこだわるよりも、ぜひ推移を見ることを意識してください。そしてできたら複数の調査から全体的な傾向をとらえてみてください。そういった視点があれば、一つ一つの世論調査に翻弄されることはなくなります。


⭐P.S.

 2017年に虹色の内閣支持率をつくってみたときは感激しました。そして、この「虹」を一本にまとめることができるのではないか? という発想から、みらい選挙プロジェクトは始まったような気がします。一本にまとめられた「虹」は、どの調査よりも高い精度で支持率の動きを示すでしょう!

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 これが補正の結果、虹をまとめて「白色光」にしたグラフです。プロジェクトではこんな過程を経て、毎週の内閣支持率を発表し続けているんですよ!٩(๑❛ᴗ❛๑)۶

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note: みらい選挙プロジェクト情勢分析ノート