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比例投票先精密分析【更新停止中】

 この記事には過去6年間にわたる政党支持率と比例投票先のグラフを載せています。更新を継続していくつもりですが、大変なので毎週はできないかもしれません。

※直近の更新は2024年10月9日です。


自民党

 以下の図1は、自民党の比例投票先の平均の推移です。

図1. 自民党の比例投票先

 各社の世論調査は方法などの違いによって、特定の政党について高めの数字が出やすかったり、低めの数字が出やすかったりする固有の傾向をもっています。ここではそうした傾向を打ち消すように補正したうえで平均を求めました。一つ一つの世論調査を補正した結果は以下のリストの点のとおりで、平均は曲線で示しました。

 図1には曲線が途切れている箇所があることに注意してください。これは、選挙が近い雰囲気にならないと比例投票先は調査されないことが多いため、欠落する期間があるからです。実際に先の図1からは、参院選が終わると各社は一斉に調査から外したことがうかがえます。本当はその期間も選挙ドットコム・JX通信の合同調査だけは比例投票先を聞いてきたのですが、1社の調査によって平均が決まるのは目的にそぐわないため、図1ではそうした期間を点線で接続しています。

 他方で自民党の政党支持率を次の図2に示しました。こちらは調査のたびに必ず聞かれる項目なので連続した平均を得ることができます。

図2. 自民党の政党支持率

 図1と図2を重ねあわせてみましょう。ここまで自民党には緑のカラーを用いてきましたが、そのまま重ねると見づらくなってしまうので、政党支持率はモノクロにしました。

図3. 自民党の支持率と比例投票先

 自民党の支持率と比例投票先はほぼ重なって動いてきたことがうかがえます(※)。それらは2023年の後半に裏金問題などをめぐって大幅に下落しましたが、2024年8月に岸田首相が退任の意思を示すと上昇に転じました。総裁選と石破内閣の発足をうけ、現在は裏金が問題となる以前の水準を回復しています。ただしいずれも第49回衆院選(2021年)当時の水準には到達していません。

 直近の比例投票先はすでに頭打ちになっています。2021年も総裁選の直後に衆院選がありましたが、図1や図3からは、総裁選の伸びが頭打ちとなってから、投票日にかけては下落していたことが読み取れます。図1や図3には前回参院選や前々回参院選もありますが、ここでも投票日にかけた明確な伸びはほとんど見られません。こうした前例が通用するならば、つまり今の自民党や石破氏が選挙の大局的な闘い方を変えるとか、与野党の攻防のありかたが大きく変わるといったことがないならば、これまでよりも自民党には厳しい選挙となることが予見されます。

 立憲民主党の立ち位置の変化や、野党の候補者の分裂などといった事情は異なる要素ですが、それがどれほど影響するのかは、公示後の最初の調査で明らかになると思います。

 ※もっとも、政党支持率と比例投票先が重なっていることは、自民支持層のほとんど全てが比例で自民党に投票することを意味しているわけではありません。自民支持層の一部には、投票先を決めかねていたり、野党に投票する意思を持っている人がいることが世論調査からはうかがえます。しかし、他方で支持政党を持たない無党派層や、野党支持層の一部にも自民党に入れる人がいます。それらが打ち消し合った結果、グラフが重なっているのだと思われます。


無党派層と未定層

 自民党に関する図3の結果は、政党支持率と比例投票先がおおむね重なるという平凡なものでしかないように見えます。しかしそのことは果たして野党についても言えるのでしょうか? 野党について見ていく前に、次のグラフから検討してみましょう。

 これは無党派層の割合と、比例投票先の未定層を重ねて表示したものです。前者は政党支持率の質問で「支持政党なし」とした人たちの割合で、後者は比例投票先の質問で「未定」や「不明」などとした人たちの割合です。つまりいずれも政党を選ばなかった人たちですが、その割合には大きな差があることがわかりました。

図4. 無党派層の割合と比例投票先の未定層

 そして、まさにこの大きな差こそ、比例投票先の質問の意義であるといえます。

 開票速報で伝えられる出口調査に「無党派層の投票先」があるように、無党派層の中にも投票に行く人は多くいて、選挙の結果を左右します。しかし政党支持率の質問からは、そうした無党派層の動向を把握することができません。どこに入れるのかを直に聞く比例投票先は、この点に踏み込める質問です。

 すでに図3で見たように、自民党の支持率と比例投票先に大きな違いは見られないのでした。他方で図4からは、比例投票先の未定層は、無党派層の割合を下回ることが明らかです。このことは、野党の支持率と比例投票先には違いがあることを意味しているわけです。

 また次の点からも考えてみましょう。図4に示した無党派層の割合には、衆院選や参院選の時期に深い溝が刻まれていることがうかがえます。これは選挙運動や報道の影響をうけたり、自分の投票先を考えることを経て、無党派層の一部が政党を支持するように変化することのあらわれです。政党支持率には選挙ブースト(国政選挙の前後で急上昇する現象)がありますが、無党派層の溝はこれに対応するものだといえるでしょう。

 けれども図4の比例投票先の未定層には、政党支持率にあるような選挙時の深い溝が見られません。もちろん第25回参院選(2019年)と第26回参院選(2022年)の後は途切れてしまうので、選挙に前後する正確な変化がわからない点には注意が必要です。しかし調査の揃っている第49回衆院選(2021年)でも、溝は起伏の小さなものとなっています。

 すると、時と場合によるとはいえ、比例投票先には選挙ブーストのような現象が見られないか、あっても小さなものとなる傾向があることが期待されそうです。普段の政党支持率で選挙時の情勢を予測する際は、選挙ブーストの推定が困難なことが問題となりますが、比例投票先を併用することで改善が見られるかもしれません。


 ここからは、現存するすべての政党について、政党支持率と比例投票先の推移を見ていきます。全文公開の形でなくて申し訳ありませんが、これを作るのはかなり大変なので、見ていただけたらとても嬉しいです。

 みちしるべでは様々なデータの検討を通じて、今の社会はどのように見えるのか、何をすれば変わるのかといったことを模索していきます。今後も様々な発見を共有できるように取り組んでいくので、応援していただけたら幸いです。


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