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親の借金の相続

第1,親の借金を相続した場合の調査

(1)親の借金の相続調査

親御さんが亡くなり相続が発生した場合、不動産や預貯金といった財産をどのように分配するかご家族で協議することも大切ですが、注意しなければならないのは親御さんが「借金等の負債を残していないか」という点です。

例えば、亡くなられた親御さんが銀行でカードローンを組んでいなかったか、入院費・治療費で未払いのものはないか、未払いの家賃がないか、といった事情を調べる必要があります。

子どもさんが、親御さんと同居されていた場合は比較的調べやすいと思いますが、別居されている場合は親御さんの家計の状況について子どもさんが把握されていないことも多いです。
このような場合、親御さんの通帳の記帳や、郵便物の中身などをチェックして、債務がないかを確認していく形となります。

(2)個人信用情報機関での親の借金の調査

どうしてもわからないという場合は、個人信用情報機関で亡くなられた方の情報開示請求を行うという方法もあります。個人信用情報機関は、下記のとおり3か所がありますので、どういった業者から借入れされていたか全くわからないという場合は3か所すべてで情報開示請求をしていただくとよいかと思います。

○個人信用情報機関のまとめ

☆信販会社からの借入れの場合
CIC  https://www.cic.co.jp/index.html

☆消費者金融業者からの借入れの場合
JICC https://www.jicc.co.jp/  

☆銀行からの借入れの場合
全国銀行協会 https://www.zenginkyo.or.jp/ 

 調べた結果、財産よりも借金等の負債の方が多いということであれば相続放棄を行うという方法があります。
 相続放棄ができるのは、原則として相続が始まったことを知ってから3か月以内というタイムリミットがあります。
 借金等の負債を調査するのは早ければ早いにこしたことはありません。

第2,複数人で親の借金を相続した場合

なお、借金等の負債の相続について次のような誤解をされる方がいらっしゃいます。具体例でご紹介しましょう。

 ある一家のお父さんが亡くなりました。
相続人はお母さん(亡くなられた方の奥様)、長男、次男の3人です。お父さんは、暮らしていたマイホーム(土地と建物)と預貯金2000万円、そして個人事業をしていたとき銀行から借りたローン1500万円を残して亡くなりました。
 お父さんの死後しばらくして、相続人3人で遺産分割協議(相続をどのように行うか話し合いをすること)を行った結果、今後お母さんと同居して面倒を見ることになった長男が、マイホームと預貯金1500万円を相続し、次男は預貯金500万円を相続することが決まりました。借金1500万円については、長男がすべて支払うと言いました。

ところが数か月後…次男のもとに銀行から、お父さんの借金を返済してほしいという連絡が入ります。次男は、「遺産分割協議で、兄がその借金を返済することに決まったから兄に請求してほしい」と言います。

 しかし、銀行は親の借金の返済義務は法定相続分どおり引き継がれることになるため、次男にも4分の1の375万円の支払い義務があると主張しました。

 次男は、相続した預貯金500万円ですでに車を購入しており手元には現金が残っていませんでした。
 そのため、銀行からの請求に頭を抱えることになってしまいました。

 この事例で次男が誤解していたのは、遺産分割協議で兄である長男が借金1500万円を全額返済すると決めたことが、債権者である銀行に対して通用しないという点です。

 財産について、遺産分割協議あるいは遺言書で記載された内容どおりに相続されたとしても、借金などの債務に関しては、法定相続分どおりに支払い義務が及ぶことになります。

 法定相続分は配偶者2分の1、子供が2人の場合、それぞれ4分の1ずつです。
 そのため、上記の事例では、何も相続しなかったお母さんでも借金750万円の支払い義務が及ぶことになり、お父さんの子である長男・次男には、借金375万円の支払い義務が及ぶことになります。

第3,相続放棄

 上記のように、対債権者との関係でも完全に借金を支払いたくない場合どうすればよいのでしょうか。

 この場合、相続放棄をするという方法があります。家庭裁判所に申請をする必要がありますが、相続放棄をすれば、最初から相続人でなかったものとみなされるため、借金の支払義務は完全になくなります。

 この相続放棄は原則、被相続人が亡くなってから3カ月以内に申請しなければならないので注意が必要です。また、相続放棄をするという事は、借金等の負債だけではなく、不動産や預貯金などのプラスの財産も完全に相続できなくなることを意味します。

 そのため、これらのプラスの財産も本当に相続しなくてよいのか、よく考えてから相続放棄をするようにしてください。

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