「生殺与奪の権を他人に握らせるな…」 趣味がつないだ絆の物語

僕は派遣社員。

趣味でシナリオを書く平凡な社会人。
とある日の書店巡りの帰り、立ち寄った公園で僕は少女と奇妙な出会いをする。
その少女は公園のベンチで小説だろうか読書をしていた。
Tシャツやズボンは学校には行っていないのか、
洗濯されているのか、
疑問に思えるほどその姿は妙にみすぼらしかった。

だからふと彼女の事が気になって声をかけてみた。
「こんにちは、読書ですか?」
「その本面白いですよね!」

「はい、すごい本です!」

「その本面白いですよね!」

「私、この作者に憧れてるんです!」
彼女はそう言った顔は少しやつれているようにも思えたが声をかけられたのがうれしかったのか少しはにかんだ。

その日からたわいない会話で少しずつ距離を縮める毎日、
僕は彼女の違和感について少しずつ話してくれた。
彼女は16才であり、
親がろくに働きもせず、中卒でアルバイトを強要されていた事、
家に居場所がなく、バイト代は搾取され、
満足な食事もほとんどできていない状態にあった事、
僕は何かできないかと僕のお勧めの本を貸したり、お弁当を出来は良くなかったが作ってあげるようになっていた…

仲良くなった内の一コマ
何かプレゼントしようと好きだと言っていた小説のキーホルダー型のグッズを渡した。

「これ…大したものじゃないけど好きだって言ってた小説のグッズつけてあげるよ!」

「すごく高い物なんじゃあ…悪いですよ、この作品すごく人気なんじゃあ…」

「いや!いいんだ!貰い物だし…」
「ファンの子に着けてもらってる方がキーホルダーも喜ぶよ!」
「それに…」
「いろいろあるだろうからこれに慰めてもらいなよ。」

が実際それが良くなかった…

とあるベンチの読書タイム中、
ふと彼女が走っていくのが目に入った
彼女は靴を履いていなかった…
ただ事ではないように思い、走っていって声をかけた声をかけた…
息を切らせて肩をたたくと僕だと気づくといきなり抱き着いてきた。

案の定彼女は泣いていた。
「…」
泣いて縋り付く
どうにも要領を得ないがどうにかなだめて、
訳を聞くと怒りで血の気が引くのを感じた。
どうして彼女にこんな心無いことができるのだろう…


彼女は泣きながら話してくれた。


帰宅直後靴を脱いでいると
嫌な声が聞こえてきた。

「あんた似合わないキーホルダーどうしたの!」

嫌らしい声…嫌な予感…

「あんなもの買うお金あったらお金もっと出せたでしょ!」

責める言葉…頬を伝う汗…

「無能なあんたにあんなものいらないからネットで出品しといてあげたわよ!」

絶望のキーワード
「うそ…」
ガサガサ…ない…
さらに追い打ちをかけるかの如く声は続く。

「あんたの本も売っといたわよ!」

衝撃的過ぎて気が付かなかったが
借りていた本もあったのに本すらなかった。

「あんな本読んでる暇があったら夜の店で働きなさい!」

何を言っているの?…意味すら分からない…

「今日面接に行くわよ!準備…」

バン…最後の声も聞かず鞄だけ持って泣きながら家を飛び出した…

    …そうか…
僕は慰めるように頭をなでながら言う…


ごめんなさいを連発する彼女に…

「あの家にいちゃだめだ!君がダメになる!」

「しばらくうちに来ないか?」
彼女をなだめながら僕は言う。

「それじゃあなたに迷惑がかかる…」

「あなたの本は身体を売ってでも弁償します。」
彼女はなおも泣きながら自分を責める。


   …本当にこの子は…
僕は優しく抱きしめてこう言った。

「生殺与奪の権を他人に握らせるな…」


「本の受け売りだけれども
君は今家族に人生というものの生殺与奪の権を握られている状態なんだ。」

…ゆっくり…

「それじゃあ君は幸せにはなれない。」

…優しく…

「自分の命を自分で責任を持つことは不安かもしれない。」

…慰めるように…

「大丈夫だよ…僕がそばで見守っててあげるから。」

…だから…


数年後…
「ラノベ大賞受賞おめでとう。」

「ありがとう!これであなたに近づけた!」

「そうだね!これで文豪の仲間入りだね…」
「人気投票でランキングが抜かれるとは思わなかったよ!」

「ふふふでもあの作品があなたの作品だったとは思いませんでした…」

「僕もあの作品には感謝してる…最高の幸せを届けてくれたから…」

「そういうなら私もです。本当にありがとう。」
「私の人生を救ってくれたのはあなたの全て…」
「愛しています。あなた」

…僕の趣味がつないだ絆の物語…

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