昭和の展示物かと思ったら

現松本幸四郎のお父さん(白鸚)は若いころ染五郎だったが、当時の彼がCMに起用された商品がこれだった。それまでの男性化粧品つうたら柳屋アットレーとか加美乃素Aとかポマードを塗ったくる暑苦しいおっさんのイメージだったから、初めてこれを見たときはまさに先端文化に触れた感があった。けれども当然に田舎のよろず屋じゃ売ってなかったし、通販なんてのは少年漫画雑誌のあやしげな金の延べ棒くらいしかなかったので県境越えた4Km先の町まで未舗装の砂利道をえっちらおっちら自転車漕いで買いに行ったが、なにやってたんすかね。あれから幾星霜、くだらないことに一生の大半を費やしてしまったけど、まあ食いっぱぐれなかった(まだわからんけど)だけマシだったと思わねば。心底自分が好きな事物を見つけるにはそれ用の思考センスが必要なんだけど、これって訓練して身につく代物ではないところがじつに悩ましい。しかもひとつだけってことでもないから余計だ。日本人てひとつごとを一生かけて追求する、みたいな姿勢を賞賛するのが好きだけどじつは不器用で拡張性が無いだけだったりするから。この国は〈職業を選ばなければ食うだけなら何とかなる〉って言われてるがそれは〈自分だけなら〉の条件つき、しかも往々にして楽しくない。だから死ぬまで自分探しを続けたいなら他人を巻き込まないほうがうまく行くんじゃないかな。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?