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【日経新聞から学ぶ】3つの米バブルに「リーマン級」の警戒サイン~米国発第二のリーマン・ショックはあるか考えてみよう~

1.3つの米バブル

米国株を中心に金融・資本市場の調整が長期化している。過去2年半で膨らんだ米国の株式、住宅、イノベーションの3つのバブルに、米連邦準備理事会(FRB)が立ちはだかる。「市場vs中央銀行」の対立で資産価格は乱高下し、2008年9月のリーマン・ショック前後に観測された警戒サインが相次いで発せられている。

13日の米ダウ工業株30種平均は前日比1276ドル(3.9%)安と今年最大の下げ幅を記録した。14日の日経平均株価も大幅安で始まった。

上昇率が市場予想を上回った8月の米消費者物価指数(CPI)のポイントは家賃を中心とする住居費の伸びが高水準だという点だ。FRBは保有する国債や米住宅ローン担保証券(MBS)の削減(量的引き締め=QT)を9月から本格化しているが、「進捗」は大幅に遅れている。

(日経新聞2022年9月15日)

この記事で指摘している3つのバブルについて見ておきたいと思います。

2.住宅バブル

住宅バブルが崩壊してきているというサインとして、「iシェアーズ米国MBS上場投信(ETF)」が年初来安値に近づいていることが上げられています。

  • iシェアーズ米国MBS上場投信(ETF)

iシェアーズ 米国 MBS ETF(MBB)は、米国政府機関が発行もしくは保証する投資適格モーゲージ・パススルー証券(MBS)に分散投資を行い、バークレイズ米国MBS指数に連動する投資成果を目指すETF。

(出典:ブラックロックHP/iシェアーズ 米国 MBS ETF(MBB))
  • モーゲージ・パススルー証券

金融機関が自ら貸し出した住宅ローンの中で一定条件を満たすものを一まとめにしたもの(プールしたもの)を政府系金融機関へ売り渡し、それを政府系の金融機関等が保証して発行した証券。 これはもととなる住宅ローンの元利金支払いがそのまま証券を購入した投資家に通過させて支払うためパススルー証券と呼ばれる。

これは、MBS(住宅ローン担保証券)の信用力が落ちてきており、住宅バブルの崩壊のサインかもしれません。

では、MBSについても簡単に解説します。

  • MBSとは

正式名称はMortgage Backed Security(住宅ローン担保証券)といいます。住宅ローンの元本や利子の返済資金を裏付けとして発行された証券のことです。一般的に元利金の支払いが保証されることから比較的信用力が高いとされるほか、満期よりも前に繰り上げて返済される可能性もあり、通常の債券よりも金利が高いのが特徴です。

  • MBSの発行の流れ

MBS発行の流れとして、まず最初に金融機関は住宅購入者に対して住宅ローンを貸し出した後に、債務不履行リスクの外部への切り出しなどを目的に、金利や償還期限などで似たような性質を持つ住宅ローン債権を売却します。買い取った金融機関は複数の住宅ローン債権を束ねる「証券化」という作業を施してMBSという金融商品を組成し、投資家に販売しています。

  • MBSと金融危機との関係

信用力が高いというふれこみから2000年代の米国では発行額が伸びていましたが、住宅ローンの不良債権化が起きたサブプライムローン問題をきっかけにMBSの価格が暴落し、08年の米金融危機を招きました。新型コロナウイルス対応の金融緩和の政策以降、米連邦準備局(FRB)は金融システムの安定を目的にMBSを買い入れていました。

FRBはインフレ抑制のために保有している国債やMBSを売却し始めています。9月からは2倍速で行うということですが、進捗は遅れているようです。

それは、QT(量的引き締め)が急速に進むと、景気悪化につながりかねないからです。iシェアーズ米国MBS上場投信(ETF)が下落しているのは、FRBによる政策金利の引き上げから住宅ローン金利が上昇し、住宅価格の高騰で販売にブレーキがかかってきたからです。現在、住宅ローン金利は上昇し、住宅価格は急落しており、販売も明らかな減少となっています。

(出典:TRADING ECONOMICS/米国住宅ローン金利
(出典:TRADING ECONOMICS/米国住宅価格指数(年率)
(出典:TRADING ECONOMICS/中古住宅販売戸数
(出典:TRADING ECONOMICS/新築住宅販売戸数

今後、住宅市場のさらなる冷え込みから、金融危機へとつながる可能性のサインは出ているといえます。

3.リスクプレミアム

リスクプレミアムとは、リスクのある資産の期待収益率から無リスク資産の収益率を引いた差のことです。株式に投資するということは、大きな値上がりを期待できる反面、値下がりする可能性も高く、そのブレの大きさを受けいれたということになります。

リスクの大きな株式と無リスク金利(リスクフリーレート)商品が同じリターン(収益)であれば、みんなリスクのない無リスク金利商品に投資するでしょう。

投資家は無リスク金利にいくらの利回りを上乗せすれば、リスクのある株式を買う気になるのかというその上乗せ部分がリスクプレミアムになります。

もし、TOPIX(東証株価指数)の年間上昇率が7%で国債の利回りが4%であったならば、株式投資に要求する市場リスクプレミアムは3%になります。

この場合、理論上、投資家は7%以上のリターンが見込めないと値下がりリスクのある株式投資はしないということになります。

リスクプレミアムは数字が低いほど、わずかな超過利益を求めて投資家が株式に殺到し、株価が割高なことを意味します。

S&P500種ベースの直近値は年2.3%前後となっています。リーマン・ショック直前の07年秋並みの低い水準にとどまり、リーマン・ショック以降の平均を約1.9ポイント下回ります。株価が下落しても10年物国債の利回りの上昇が大きく、割高感が解消していません。金利が上がると株が売られるのはこのためです。

東証株価指数(TOPIX)やドイツ株価指数(DAX)、香港ハンセン指数はいずれも7.6%程度で、リーマン後の平均よりは高い状況です。しかし、米株にショックが起きると、米株とともに各国の株式リスクプレミアムも跳ね上がる(株価は急落する)性質にあります。

株価が急落するのはなぜかというと、以下のようなことになります。

リスクプレミアムの上昇は理論株価の下落となる。

  • 理論株価

理論株価の算出方法に配当割引モデルというものがあります。割引配当モデルとは、その株が割高か割安かを判断するための理論モデルの一つです。その株式を保有し続けることで得られる配当金総額を、市中金利などを計算した期待利子率で割り引いて理論株価を算出します。

  • 定率成長配当割引モデル

少しずつ配当金が成長して増えていくと予想した場合、以下のような計算式で理論株価を求めることができます。

理論株価=1株あたり予想配当÷(期待利子率-期待成長率)

期待利子率は、将来得られる収益(期待収益率)です。期待収益率は、無リスクレートとリスクプレミアムの合計です。

もし、リスクプレミアムが上昇したら、理論株価の式における分母が大きくなります。分母が大きくなるので、理論株価は下落します。

4.イノベーションのバブル

(出典:TRADING ECONOMICS/ナスダック総合指数

英・フィナンシャルタイムズの記事にもこんな一文がありました。

But over the past year, the same investment philosophy has run into the buzzsaw of rising interest rates, inflation, war and the prospect of a looming recession. Many of these once high-flying names have been left nursing heavy losses, as tech stocks were sold off and the easing of lockdowns led so-called Covid-19 winners such as Zoom and Peloton to fall back to their pre-pandemic valuations. Investors have bought staid defensive names that have largely been overlooked by Wall Street for years.
しかし、この1年、同じ投資哲学が、金利上昇、インフレ、戦争、そして迫り来る不況の予感という凶刃の刃に突き当たったのである。ハイテク株が売られ、ロックダウンの緩和でZoomやPelotonのようないわゆるCovid-19の勝者が流行前のバリュエーションに逆戻りし、かつて高騰したこれらの銘柄の多くが大損害を被ることになったのだ。投資家は、長年ウォール街で見過ごされてきた堅固なディフェンシブ銘柄を買っている。

(出典:フィナンシャルタイムズ2022年9月14日

※全文訳はこちら↓

コロナパンデミック以降の金余りが産み出したバブルが今まさにはじけようとしているのかもしれません。

以上、日経新聞の記事の3つの視点を見てみました。

どうも、米国の資産バブルははじける方向に向かっているようです。というよりも、すでにバブル崩壊はスタートしており、米国の景気後退は、来年に向けて深刻となり、バブル崩壊から、恐慌といわれる事態にまで発展しかねないのではないでしょうか。

まだ、資産バブル崩壊は、始まったところで、今年後半から来年にかけて、さらに進むのではないかと思われます。

未来創造パートナー 宮野宏樹


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