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米政府債務が上限到達、年央に不履行も 議会は調整難航~米議会は激しく対立するだろう~【日経新聞をより深く】

1.米政府債務が上限到達、年央に不履行も

米政府の債務が19日、法定上限を突破した。米財務省が特別措置で年央まで資金繰りを支える間に、米議会は上限の引き上げや停止に向けた合意を得る必要がある。与野党の隔たりは大きく、調整は長期化が必至だ。直前までもつれ込めば、市場混乱などを招く恐れがある。

米国は財政規律を働かせるため、国債などを発行して借金できる債務残高に米議会が上限を設けている。超えると新規の国債発行ができなくなるため、利払いや期限を迎えた国債の償還などに応じられなくなって債務不履行(デフォルト)に陥る。

今回は米財務省が公務員退職・障害者基金などの運用を変更して資金繰りをつなぐ特別措置を発動した。6月5日までの措置で、少なくともその時期までは不履行を避けることができる公算が大きい。

米議会はそれまでに約31.4兆ドルとなっている上限を引き上げたり、凍結したりする必要がある。米国の債務残高は戦後から拡大の一途で上限の引き上げや措置の停止を繰り返してきた歴史を持つが、近ごろは二大政党間の分断が大きくなり合意が難航するようになった。

野党の共和党は歳出抑制と減税による「小さな政府」が基本理念だ。債務上限への対応で協力する見返りとして、政権に高齢者向け公的医療保険「メディケア」や社会保障の削減などを求める見通し。共和党が過半数を握る下院のマッカーシー議長はバイデン米政権に対して早期の協議開始を求めている。

増税と手厚い社会保障などを掲げる民主党は政策転換として支持層の信頼を失う歳出削減には慎重で、共和党に無条件の協力を求めている。上院民主トップのシューマー院内総務は17日の声明で「債務上限をめぐる政治的な瀬戸際外交はあってはならない」と批判した。

下院の共和党も僅差で多数派になったため、混乱を経てようやく議長席に座ったマッカーシー氏も一部の強硬派の意見を聞かざるを得ない状況だ。債務不履行の危機が迫り、それが共和党の責任だと世論に受け止められるリスクが高まるまでは早期の妥協に踏み込めない事情がある。

過去に同じような状況になったのは、草の根保守運動「ティーパーティー(茶会)」の支援を受けた共和党がオバマ政権と対峙した2011年。当時は直前で債務不履行を回避したが、米国債が初めて格下げされた。オバマ政権で米大統領経済諮問委員会(CEA)委員長を務めたファーマン氏は「今回は当時よりもリスクが高いかもしれない」と警戒している。

バイデン米政権は3年目に入り、24年の大統領選を見据えた後半戦に入る。議会で神経戦が続く間、大きな歳出増を伴う政策の実現などは難しくなる公算が大きい。イエレン米財務長官は19日、マッカーシー氏らにあてた書簡で「米国の全面的な信用を守るために、議会が速やかに行動することを要請する」と訴えた。

(出典:日経新聞2023年1月20日

2.米国債務上限問題

米政府の財政問題です。米国財政は現在、巨額の債務となっています。

米国憲法は、連邦議会に対して、米国の信用を背景にした資金調達の権限を付与しており、連邦議会を管理する義務を負っています。

この上限に関する法律は第一世界大戦の1917年に定められました。同年、第一次世界大戦に応え、米国政府が戦時国債を発行する際に、議会は市民の経済安全保障を守るために連邦政府の債務の上限を自由国債法(リバティボンド)法で定めました。

1917年に第二次自由国債法として定められた法律は、当初、短期債、中期債、長期債ごとに別々に設けれていた限度額が、第二次大戦の始まった1939年、ほとんどすべての国債を網羅する総合的上限へと変わりました。

当時の国債残高404億ドルに対して、設定された上限額は450億ドルでした。その後、大戦を通じて3,000億ドルにまで引き上げられた上限額は、さらに数度の増減を経て、1962年3月再び3,000億ドルに戻りました。

連邦財政は、わずかな黒字を計上した1969年度を除いて赤字続きでした。70年を通じて赤字幅も広がりましたが、レーガノミクスはその赤字を一挙に膨張させました。

レーガンが政権を引き継いだ1981年度の国債残高9,948億ドルから86年度の2兆1205億ドルへと、建国以来積み上げた借金をわずか5年で倍増させたのです。

国債上限額の引き上げに予算の強制削減条項を加えてGRH法( 第1次グラム・ラドマン法)が成立した背景の一つには、この残高2兆ドルという圧力がありました。

議会は91年度までに財政赤字をゼロにすることを政府に義務付ける法律を85年に可決することになりました。

その後、1990年代後半に至ってようやく財政収支が改善しました。レーガン以来3代の政権の試行錯誤が、冷戦後の景気拡大という追い風を受けて結実したことになります。

1997年8月には、クリントン大統領と議会の妥協により、2002年の均衡を目指す1997年均衡予算法(BBA97)が成立しました。

同時に成立した減税法とセット生まれた同法は、財政規律を継続するとともに国債上限額の変更は不要でした。

しかし、ブッシュⅡ政権の大減税と対テロ戦争は直ちに財政を悪化させ、2002年からは、ほぼ連年に渡って上限額の引き上げを余儀なくされるに至りました。

2008年のリーマンショック以降、上限の改定がいよいよ頻繁になり、2007年度末の9兆ドル台からわずか8年後の2015年には18兆ドル台にまで急伸しました。

このように1917年に債務上限が法定化されて以降も米国債の残高増加が維持している為、連邦議会は断続的に法定債務上限の変更を行ってきました。議会調査局によれば、第二次世界大戦以降、現在までおよそ100回上限変更が行われています。

また、近年で見ても、クリントン政権下の財政黒字からブッシュⅡ政権下で財政赤字に転落した01年以降で債務上限見直しは18回に上っています。

一方、法定債務上限額は通常、具体的な金額を法律に書き込むことになっていますが、2012年1月に16.4兆ドルの上限額で合意されて以降は、与野党対立により、議会が具体的な金額で合意することができておらず、窮余の策として法定債務上限を暫定的に適用しない旨の時限立法を成立させてしのぐ状況が続いています。

また、時限立法の期限までに期限の再延長や新たな債務上限額で合意できない状況も頻発しており、その場合には、期限到来時点の対象債務残高が新たな上限として設定される仕組みとなっています。

このため、法定債務上限額と債務上限対象の債務残高の推移を見ると、12年までは連邦債務残高が法定債務上限を下回る状況となっているものの、13年以降は逆に連邦債務上限を上回っていることの方が多くなっています。

また、時限立法の期限が切れると、前述の通り期限到来時点の残高が上限となるため、その後、連邦政府は実質的に債務残高の増加を伴う国債発行が不可能となります。

連邦議会が法定債務上限不適用期限の延長や法定上限額の引き上げで合意できない場合には、財務省は、議会が合意できるまで連邦政府債務残高が法定上限に抵触しないように時間稼ぎをするための「非常手段(Extraordinary Measures)」を発動します。

現在、財務省が提示している手段は、連邦職員退職制度が米国債で運用する基金に対する再投資延期、為替安定化基金への投資延期、公務員退職・障害基金(CSRDF)及び郵政公社の退職・健康保険給付基金(PSRHBF)に対する新規債権発行の延期など、です。

非常手段によって稼げる時間は、採用する非常手段や規模によるものの、数週間から数カ月程度なります。

一方、これらの非常手段が時間切れとなり、財源が不足する場合は、国債の利息支払いなどが不可能となるなど、債務不履行(デフォルト)が発生します。

法定債務上限は、一部予算関連法に組み入れられる場合があるものの、基本的には独立した法案として審議されます。一方、現在の予算編成プロセスは「1974年議会予算・執行留保規制法 (Congressional Budget and Impoundment Control Act of 1974)」に基づいて執行されており、議会は歳入や歳出の見込み額に加えて国際発行限度を含む予算決議を可決することになっています。

予算決議は法律ではないため、債務上限を別途法制化する必要があります。ただ、議会が予算決議した場合には債務上限額に異論の余地は無く、法制化はスムーズに進行するはずです。

しかし、実際にはそうはなっておらず、債務上限の法制化は難航することが多いのです。

これは、議会で合意された予算執行に基づく資金調達であっても、それに見合う額の債務上限で合意できない場合には、財源不足から米国債が債務不履行となるリスクがあるなど影響が大きいことから、予算審議において野党が交渉を優位に進めるための政争に債務上限を利用するためです。

一方、過去には法定債務上限と予算決議の審議を一体化するための取り組みが行われたこともありました。民主党のゲッパート下院議員によって提唱され、1979年に成立した下院規則で、下院での予算決議と債務上限の金額をリンクさせ、債務上限の法制化を一度に行うことを目指すものです。(通称ゲッパート・ルール)

実際、同規則が制定されてから30年度のうち、20年度では同規則に従って、債務上限が処理されました。しかし、同ルールは共和党が下院で過半数を獲得した2011年からの第112議会で廃止されました。

その後も、議会では債務上限問題を政治問題化させないための仕組みを導入しようとする動きはみられるものの、実際に制度改正につながるほどの支持は集められていないのが現状です。

現状、与野党議員ともに債務上限問題を交渉材料にするものの、債務不履行を回避する点では一致していると思われます。しかし、債務上限問題が引き上げられない状況が長期化する場合には、米国債のデフォルトリスクがくすぶり続け、資本市場が不安定化する可能性も否定できません。

以下の記事も参照に

3.米議会は激しく対立するだろう

最近、特に感じることは、メインストリームメディアと言論の検閲を止めたTwitterでの情報に格差があることです。イーロン・マスクのお陰で検閲の無くなったTwitterでは、事実が飛び交っているように感じます。

一方で、メインストリームメディアは、忖度した報道になっているため、面白くない。

日本の報道を見ていると、また、米国のメインストリームメディアを見ていると、うまくいっているバイデン政権に対して、極端な政策を掲げる、ちょっとおかしなトランプが後ろで操っている共和党が米国を混乱させているという空気です。

しかし、Twitter上で飛び交う、あるいは真実を報道しようと頑張っているメディアでは、真相が出てきているように感じるのです。

そして、それがいよいよメインストリームメディアにも広がりつつあるのかもしれません。

民主党、そしてバイデンを支援してきたCNNがバイデン批判に転じました。そして、バイデンファミリーを犯罪者のように扱っています。

きっかけは機密文書の問題です。これはバイデンにとって、それだけ大きな問題になるということでしょうか。

いずれにしても、共和党側が追求する材料はバイデン大統領の機密文書だけではなく、息子のハンターバイデン氏が関わるとされる中国、ウクライナ問題にバイデン大統領が関与しているのかどうか、こういった大スキャンダルになる可能性を秘めた問題が出ているのです。

これらは、日本の報道ではなかなか出てきません。しかし、日本でもTwitterを見ていると、様々な情報が飛び交っています。(もちろん、真偽は自らの責任ですが)

債務上限の問題にしても、バイデン大統領、民主党は共和党に譲歩せざるを得ない場面が出てくるのではないでしょうか。

喫緊の課題となっている債務上限問題を筆頭に、バイデン政権には難問がのしかかっています。今後、米議会は激しく対立していくに違いありません。

未来創造パートナー 宮野宏樹
【日経新聞から学ぶ】

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