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ECB専務理事、0.75%利上げに慎重 「小幅実施が適切」~揺れるヨーロッパ~

1.ECB専務理事、0.75%利上げに慎重

欧州中央銀行(ECB)のレーン専務理事は21日公表のインタビューで、次回12月の理事会で「0.75%のような非常に大きな利上げを検討するプラットフォームはもはやない」と述べた。先々の利上げについては「適切なタイミングで小幅に実施することが妥当な議論だ」との考えを示した。

レーン氏はECBのチーフエコノミストを務め、市場では金融引き締めに慎重な「ハト派」とみられている。ECBは10月まで2会合連続で通常の3倍となる0.75%の大幅利上げを決めており、次回12月の利上げ幅が焦点になっている。

量的引き締め(QT)に向けた保有資産の圧縮を巡っては「機械的なものになるはずだ」と指摘。今後数カ月にわたり、一定のペースで減少できるよう具体的な計画を策定する方針という。景気後退は「緩やかで短い期間になる」とも語り、賃上げの動向を注視する考えを示した。

レーン氏は経済メディア「マーケットニュース」とのインタビューで答えた。

(出典:日経新聞2022年11月22日

ECBの専務理事による発言が取り上げられています。ただ、市場に対しての意図的なハト派発言ではないでしょうか。

EU圏のインフレは深刻です。しかし、引き締めにタカ派的発言が続くと、株価の下落や、国債金利の上昇を招きかねないため、金利引き上げ一辺倒では市場に対するメッセージが厳しすぎるとの見方ではないでしょうか。

18日にはECBのラガルド総裁はタカ派的な発言をしています。

2.ECB総裁「一段の利上げ想定」 景気後退でも物価高警戒

欧州中央銀行(ECB)のラガルド総裁は18日の講演で「一段の利上げを想定している」との認識を示した。次回12月の理事会では保有資産の圧縮方法も話し合う予定で「バランスシートを慎重かつ予測可能な方法で正常化することが適切だ」とも述べた。

フランクフルトの欧州銀行会議で語った。ECBは10月まで2会合連続で通常の3倍となる0.75%の大幅利上げを決めた。10月のユーロ圏の消費者物価上昇率は前年同月比10%超と過去最高を6カ月連続で更新しており、当面もインフレ抑制へ利上げを続ける方針だ。

ラガルド総裁は足元のインフレ率が「高すぎる」とした上で「長期にわたり高止まりする可能性がある」と指摘。景気後退のリスクは高まっているとしつつも、域内景気の冷え込みで「インフレ率が大幅に低下する可能性は低い」と語った。景気より物価の安定を優先させる方針を改めて示唆した形だ。

ECBは10月の理事会で、銀行に低金利で資金を貸し出す支援策(TLTRO)の見直しも決めた。11月18日発表の資料によると、資金供給分のうち1割強にあたる約2960億ユーロ(約43兆円)が23日に返済される見込みだ。金融引き締めに向けた早期返済を促す措置の第1弾で、金融政策の正常化を急ぐ。

(出典:日経新聞2022年11月19日

こちらがECBの本筋ではないかと思います。

(出典:TRADING ECONOMICS/EU圏インフレ率

EU圏のインフレ率にはいまだ歯止めが掛かっていません。今、金利上昇の手綱を緩めると、さらなるインフレが待ち受けています。

しかし、インフレ抑制のため金利を引き上げれば、不景気が待ち受けています。

(出典:TRADING ECONOMICS/EU圏総合PMI)

EU圏のPMI(購買担当者景気指数)は好不況の判断の50を下回っており、さらに下落傾向です。

明らかにスタグフレーション(不景気の中の物価高)です。しかし、エネルギーと食品では、ウクライナ戦争という特殊要因があるため、簡単には物価は下がりません。

3.ヨーロッパの課題は経済から政治へ

これまでは、ヨーロッパの課題は主に経済問題として見られていました。政治的には外向きの対ロシアへの姿勢だけが注目されていました。

ところが、今では、国内政治の問題になっています。つまり、インフレ対策への政府への批判、インフレを生み出している対ロシア制裁を決めている政府への批判が噴出しています。各地でストライキ、そして、反戦デモが起きています。

ヨーロッパのリーダーたちは、米国の意向に沿って対ロシア強硬姿勢をとり続けるのか。この場合、金利を引き上げても、インフレはなかなか収まるものではなく、不景気とインフレが同居するスタグフレーションが続くことを意味します。

逆に、対ロシアへの強硬姿勢を見直していけば、エネルギー危機や食糧危機は緩和されますが、米国の指針に反することになります。

最も、米国の指針というのは、ネオコンによる戦争推進の勢力ということでしょうから、民主党から共和党へと力加減が変われば、米国も変化する可能性はあります。しかし、現在の民主党政権、バイデン政権が一定の力を持つ限りは戦争推進でしょう。英国も同様です。

米国、NOTO、EUは戦争推進です。これに各国のリーダーが反する行動をとれば、西側社会からは離脱することを意味します。

今後、ヨーロッパは市民からの批判が噴出し、それがヨーロッパを揺らすことになるでしょう。この冬はデモとストライキがヨーロッパ中に広がっていくでしょう。

未来創造パートナー 宮野宏樹
【日経新聞から学ぶ】


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