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2019.10.20「発達障害とともに軽やかに生きる」イベントレポート【番外編】昭和大学烏山病院 横井英樹氏講演の総括

2019年10月20日(日)、調布市市民プラザあくろすにて実施した、発達障害の子どもを持つ家族のためのセミナー「発達障害とともに軽やかに生きる」。番外編として第二部、昭和大学烏山病院に勤務する臨床心理士・横井英樹氏による講演の総括をご紹介します。

<当日の構成>
【第一部】発達障害を抱えながら職業生活を送る中村陽介氏の体験談
【第二部】昭和大学烏山病院に勤務する臨床心理士・横井英樹氏/大人のデイケア・プログラムについて
【第三部】パネルディスカッション


1.経験の場~デイケアは学校のような場所

生きづらさを抱えた人の中には、孤立が続き集団でいることの良さを知らないというケースも考えられます。安心できること、自分と合う仲間の存在などを経験するのは大事なことではないでしょうか。

SNSで盛り上がる。ポケモンで盛り上がる。そういったことは1人でも経験できますが、同じ空間を共有する経験は、デイケアのような場でないとできません。自閉症スペクトラムの方は共感性が弱い。子どもは誰しも共感性が低いものですが、成長とともに体験を経て、共感性を獲得していきます。しかし、自閉症スペクトラムの子どもはその経験ができないのです。

場を得ることで、40歳や50歳になってから、他の人と分かり合えることもあります。シニアの参加者が言っていました。「みんな、俺たち人に興味がない、やっぱり俺たちは人と違う」という気持ちを共有できたと。もともと働けそうにないと思われていた人が今では、しっかり働いています。仕事のあとに集まって、グループ活動をし、終わったら飲みに行ったりしています。

集団の中にいると他人を客観視できます。自分のことは分からなくても、自分がどう見られるのか、なんとなくイメージできるようになるのです。

デイケアは学校のような場所になっています。経験はとても大切です。同質な他者と関わる環境の中で自己理解が促進される点こそがデイケアの良さではないかと思います。

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2.まだまだ少ない医療機関

課題もあります。医療機関がまだまだ少ない。冒頭でお伝えしましたが、特にASDには薬がありません。薬がないから、医師にとってみるとやることが診断以外にない。加えてデイケアも行っていないとなると、患者を受け入れようがありません。診断しか行わない病院に誰も行こうとはしません。

正しく診断が行われるかという点にも課題があります。診断がきっちりしていないと、過剰診断に繋がる可能性があります。反対にグレーゾーンの人々の問題も。自分に発達障害の特性があると思っても、診断基準を満たす方は結構少ないのが現状です。診断がついたりつかなかったりというタイプの方は、傾向はあっても検査結果には出てないこともある。たとえ診断がつかなくても、その人の生きにくさは変わらないのです。

厚生労働省が研究を進めていて、全国に発達障害専門の医療の拠点機関をつくろうとしています。昭和大学が中心となって、大人の機関、子どもの機関と連携をしながら、各都道府県に1箇所程度、発達障害を正しく診断できる場所をつくる計画です。そのためのガイドラインをまとめている最中です。

清和病院と烏山病院が中心に、小さなクリニックが協力機関になってネットワークを広げていければと考えています。連携している拠点が、全国に広がってきています。この近辺ですと、横浜のハートクリニック、登戸のきしろメンタルクリニックが、2019年1月からASDのプログラムを始めています。


講演者プロフィール

>>>横井英樹氏
昭和大学発達障害医療研究所、昭和大学附属烏山病院に勤務。臨床心理士。


>>>NPO法人子どもの未来を紡ぐ会
https://tsumugu2017.jimdo.dom
https: //www.facebook.com/tsumugu2017/
>>>学習教室ミライエ
https://miraie2017.wixsite.com/home

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