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第2期第1回ミライツナガル会議開催レポート2024.7.30〜柳津町の「住宅政策」を考えよう〜

福島県柳津町は町民参加のまちづくりを目指し「ミライツナガル会議(以下、ミラツナ会議)」を開催しています。2024年7月30日に第2期第1回ミラツナ会議が開催されました。今回のテーマは「住宅政策」。第2期ミラツナ会議メンバーに加えて、町長・副町長も参加し、活発な議論が行われました。

ミラツナ会議グラレコ(みらいくる作)

はじめに

ミラツナ会議の様子

ミラツナ会議への小林功町長の思い

第2期初回のミラツナ会議に参加いただきましてありがとうございます。昨年度から議論を重ね、ミラツナ会議は単に意見を聞く機会ではなく、町と一緒に政策を生み育てていく場であるという方向性が明確化しました。そして、その延長線上に政策提案会を設け、みなさんが練った政策を実現していけるよう、予算もつけています。

私がミラツナ会議のみなさんに最も期待することは、会議の場で検討をしながら町の課題を解決していくことです。また、それだけではなく、「町の課題は何か」、そして「課題を解決する方法は何か」を話し合いながら学んでいくことです。これにより、将来、柳津町の政治や経済を引っ張っていく存在になってくださったらいいなと願っていますし、きっとなってくださると信じています。

論語には、「近き者説(よろこ)び遠き者来(きた)る」という言葉があります。「柳津町の人が楽しそうに未来に向けて取り組んでいる」という噂が広がれば、遠くの人たちも「その楽しさに触れたい」「一緒にやってみたい」と感じ、集まってくると思うのです。ぜひ、みなさんには「近き者よろこび」を体現し、ワクワクしながら楽しい町づくりをしていってほしいと思っています。

これから、ミラツナ会議と町は一緒になって地域のために取り組んでいきます。町が事業をおしつけたり、一方的に引っ張ったりすることはありません。協働しながら取り組んでいきたいと思っています。町の振興計画にも「協働の町づくり」と掲げています。ミラツナ会議はその旗印になるように進んでいくことを期待しています。

ミラツナ会議への矢部良一副町長の思い

少子高齢化は柳津町を含め多くの日本の自治体における課題です。人口が減っていく中でも、せめてゆるやかに減っていくようにするには、町民が「柳津町に住んでいてよかったな」と感じられる環境整備が不可欠です。そして、町民が幸せに暮らしていける町づくりには若い人たちの意見が必要だと考えています。

ミラツナ会議では、思いやりや気づき合いを大事にしながら、自分たちの持っている考えを伝えていってほしいと思っています。たくさんの課題がある中で、どのポイントをミラツナ会議で取り上げていくかも検討していく必要があるでしょう。みなさんで意見を出しながら、町として予算をつけて、一つ一つクリアしていけるといいのではないかと思っています。

ミラツナ会議への期待はとても大きいものです。ご自身が日頃思っていることを素直に言葉にしていただければ、これほどよいことはないと思っています。役場も一緒になって取り組んでいきますので、どうぞよろしくお願いいたします。

ミラツナ会議の目指す姿

青森大学の石井重成先生がファシリテーターとなり、今期のミラツナ会議の目指す姿を整理。その後、ミラツナメンバーによる「住宅政策」についての議論が行われました。

(1)「最高の議論をしよう」「地域の未来につなげよう」
(2)第2期に向けてバージョンアップを図る


<バージョンアップ内容>
①論点
住宅政策のテーマについてどう話し合っていくとよいか枠組み含めて目線合わせを行います。(詳細は後程掲載)
②フィードバック
ミラツナ会議で話されたことがどういった受け止めをなされるのか、フィードバックを得る機能が必要です。「実現可能性はあるのか」「実現が難しいとしたら、何が難しいのか」、そういったフィードバックがないと、「色々話したけれど、あれはどうなったんだっけ?」と成果が見えません。
③実証
政策提案会ができて、ミラツナ会議の議論が起点になって政策につながっていく期待が高まっています。会議で生まれたいいアイディアを小さく試してみる機会が設けられたことは素晴らしいと思っています。

町長から協働の町づくりの旗印にしていきたいというお話もありました。それはどういうことかを私なりに考えてみました。

一般論として、時に民間から町に対して「その政策は本当に必要かな?」「そこじゃなくて……」と思うことはあると思います。多くの場合、政策を実現するための自治体の財源負担の割合は20%〜30%ほど。残りは、国や県からの財源になります。すると、すごく意識していないと、「県がこういう方向性だから我が自治体でも同じような取り組みをしよう」「国がこんなことをしているから、うちの自治体でも実施した方がいいのかな」と流されていきます。こうやって、国や県の方向性に左右されすぎることは誰にとっても幸せではありません。

ミラツナ会議には、官と民がフラットに話し合っていく機会です。「柳津町はなんでこんな政策をするんだろう?」という疑問は、「民←町」の部分です。しかし、話し合いの中から、町の政策の作り方や国からの助成の仕組みまで見えてくると、「町←国・県」の部分まで視野が広がるようになります。

他方、町は国・県に向かった方針になりがちなところを、ミラツナ会議のような場があることで「民」を意識して政策を作っていくことができます

ミラツナ会議を継続することには、そういったメリットがあると考えています。

「住宅政策」議論進行のイメージ

「住宅政策」の進め方について共有する

今回のテーマ「住宅政策」についてどう議論を行うか。進め方のイメージの目線合わせしたいと思います。

図の左側に「適切な目的を設定・共有する」ということが置かれています。その後に、課題を考えて設定する際には、受益者が誰で、その受益者が本当に持っているニーズは何かを深掘りしていく「ターゲットやニーズを深掘りする」があります。それに掛け算して、「現状の打ち手や悩ましい点を整理する」ことで、「新たな打ち手や工夫を考案する・紡ぎ出す」ことにつながっていきます。これがいい政策づくりをする上でのフレームだと考えています。

以上の内容を、細かく分解したのが下記の図です。特にピンクで囲っている2つの枠について、本会議では話し合いたいと思っています。

論点の一つ目は、「ターゲット・ニーズ」です。住宅政策のニーズはどういった人たちに発生しているのかを明らかにしていきます。

実は、空き家回収補助や宅地造成など、現状においても柳津町が取り組んでいる住宅政策はさまざまあります。この今ある政策についても前提となる情報として後程共有します。

ニーズには、「ゲイン」と「ペイン」の2つの側面があります。「ゲイン」とは、「こうあったらいいな」「こうなったらいいな」という得るもののことです。「ペイン」は「痛み」で、「これが嫌だ」「こんな課題がある」といったことです。今いる住民の住宅のニーズが満たされないことでもしかしたら人が出ていっているかもしれません。あるいは、柳津町への引っ越しを検討している移住希望者が住宅ニーズが満たされないことで、「やっぱりやめよう」と思っているかもしれません。ここは日常生活に根差した感覚や周囲の人がどんなことを言っているかなど、市民目線が重要となってくるポイントです。

二つ目は、「どういう人のどういうニーズに対して政策を打っていくとよいか」ということ。新たなアイデアや今ある施策への工夫の余地について話し合えるとよいと考えています。

それを考えていくにあたっては、取捨選択の軸も必要になります。たとえば、なるべく町の財政負荷をかけずに投資をしていくという目線もあるでしょうし、町のビジョンと整合性がとれているかという視点もあるでしょう。いくつかの視点を行ったり来たりしながら、施策を考えていけるといいと思います。

以上は、住宅政策だけでなく、すべての政策を考える上で重要な枠組みだといえます。

住宅政策についての意見・アイデア

「住宅政策」について、すでに柳津町で取り組んでいることについて共有されたのちに、論点1(ターゲット・ニーズ)として「どんな人の、どんなニーズがありそうか」、論点2「どういう人のどういうニーズに対して政策を打っていくとよいか」の議論が行われました。

柳津町で現在実施されている住宅政策

・柳津町定住促進対策新築住宅補助金
定住を促進することを目的とし、住宅の新築に要する費用に対し補助
町内業者で1/10 上限200万円
町外業者で1/20 上限200万円
・空き家補助(除却・家財処分)
空き家の除却に対する補助
不良度検査を実施し、基準以上は不良空き家、基準以下は空き家。
不良空き家:条件無し
空き家:跡地を地域の活性化のために地元行政区等へ10年以上無償貸与1/2 (上限50万円)
・空き家補助(改修)
町内への定住を促進するため、空き家の改修工事に係る経費に対し補助
町内業者で1/2 上限100万円
町外業者で1/4 上限100万円
・町営住宅整備
柳ヶ丘団地 39戸 入居数34
大平団地 48戸 入居数36
柳ヶ丘団地(戸建て)入居数2 
柳ヶ丘団地若者定住促進住宅 入居数19
・住まいづくり支援事業補助金
個人住宅の改修工事を行う場合に、その費用の一部を助成
町内に住所を有し、申請者が改修工事を行う住宅等の所有者で自らそこに住んでいること、町内に本店・支店等の事業所を置く事業者、又は個人事業者が施工することが条件
5万円以上の工事費1/2(上限10万円)
・柳津町高齢者にやさしい住まいづくり助成事業
高齢者が自宅における転倒等により要介護(要支援)状態とならないように住宅改修を実施する者へ改修資金を助成
9/10(上限18万円)
・住環境整備補助
「特定環境保全公共下水道事業」及び「農業集落排水事業等」により下水道を整備する者に対して、接続・住宅改修等のために要する資金の一部を助成2/3(上限10万円)

意見・アイデア(抜粋)

グループに分かれてアイデア・意見を出し合う
グループに分かれてアイデア・意見を出し合う

・都会の人が「静かに暮らしたい」という思いで移住してくる
子どもが高校に行くタイミングで、家族で町外に出ていくことが多い
・高校進学で外に出るのを食い止めればいいということではなく、柳津町出身の生徒が住める共同寮(べこ寮)をつくる
・町にある住宅は家族向けが主なので単身者には適さない。賃貸がないので賃貸住宅があるといいのではないか
・空き家を回収する際にDIY系YouTuberとコラボレーションして、PRできるのではないか。YouTuberも実績を積んでいくような仕掛けをする
・敷金・礼金をなくすと移住しやすくなる
・住宅に家具がもともと付いているといいのでは(べこパレスなど?)
・子どもが結婚したときに、2世帯・3世帯にできるようなリフォームの補助
・仕事のための転居の場合には交通費補助があってもいいのでは
・宅地が買えない人に向けてのサポート
・高額納税者に住んでもらうような施策
・物価高に合わせた新築への支援
・家庭を持って戸建てを建てたい人向けなのか、新築についてはまだ考えていない若者に向けた政策なのかを分けて考えていく必要がある。若者に来てほしいのに、それに対しての施策が新築補助ではターゲットのニーズとずれてしまう。気軽にパッと入居できる住宅があってもよいのではないか(べこシェアハウスなど?)
個人が補助制度を利用するのではなく、町の事業体などが住宅を整備する補助が得られるような仕組みも考えられるとよいのではないか
若い人たちはいい家に住みたいのか、コミュニティのあるところに住みたいのか。そして、町としても、いい家があるから住みたいという人にきてほしいのかを考えていく必要がある
・建物ありきではなくて、どういうコミュニティにしていくかが大事。コミュニティマネジメントやコミュニティナース、集落支援員などの必要性
・お試し移住できるような制度。家でいつでもバーベキューができたり自然の豊かさを感じられたりできる機会を設ける
・起業支援などもわかりやすく示してほしい
・西山地区では蛇口をひねると温泉が出る。温泉つきリノベ物件をPRしては
・柳津町からどこに出ていっているのか、どんな人に戻ってきてほしいのかなどを明確化していくとよいのでは。会津若松では、Uターン移住給付金や家賃補助、奨学金返還支援なども行なっている
・わかりやすく住宅補助の内容を伝えてほしい
→制度がわかりにくいという問題については、「西会津町の移住支援制度」一覧を参考に改善するとよいのではないか

参考 西会津町の移住支援制度
参考 西会津町の移住支援制度

参照URL:
https://www.town.nishiaizu.fukushima.jp/uploaded/attachment/11597.pdf

出てきた意見を付箋に書いて貼っていく
意見・アイデアマッピング

おわりに

会議のまとめ(石井先生)

全体を通して、政策については各種支援制度をわかりやすく可視化して、地域内外への発信を強化することが必要だということが明らかになりました。また、一元的な相談窓口を設ける必要があるのではないかとも感じました。

今回の会議において、4つのターゲットについて話が挙がりました。
ターゲット①中学生の子どもを持つ親世代(子どもの高校進学時に転居が生じる)
ターゲット②地域内外の若年×単身者
ターゲット③地域外の子育て世帯
ターゲット④地域外のリッチ層

そして、それぞれのターゲットへの政策アイデアをまとめると下記の通りになります。

【ターゲット①向け】べこ寮 
高校への進学タイミングで、家族で柳津町を出ていく現状があることが明らかになりました。高校生が進学先の土地で入居できる「べこ寮」を設け、さらにその寮が教育的効果や付加価値が高まっていくような仕組みにできるといいのではないでしょうか。

【ターゲット②向け】べこパレス/べこシェアハウス
現在も住宅支援はあるものの、若い世代が気軽に住めるような制度は抜け落ちているのではないかという状況が見えてきました。古民家はリノベーション後であれば、住むハードルが下がる可能性があります。そこを賃貸などで希望者に提供していく政策を作っていけると実りのあるものになるのではないかと考えます。町の事業体がリノベーションを請け負い、賃貸として提供するような仕組みが必要ではないかという意見も出されました。

【ターゲット③向け】既存の支援策の強化・周知
一戸建ての支援拡充や土地獲得の支援・コーディネートなど、今ある政策をより強化して、必要とする方に伝えていくことが重要です。あるいは、二世帯・三世帯住宅のリフォーム支援を行っていくといった案も挙げられました。

【ターゲット④向け+α】温泉付き川辺物件@西山
西山地区の集落で温泉付き一戸建てのリノベをしていく案も出されました。こうした自然環境を活かした住居づくりもポイントとなりそうです。

町長からのコメント

住宅政策はこれまでもさまざまな取り組みを行なってきましたが「伝わっていない」という課題があることがわかりました。これから、そうした点をきちんと強化していかなければいけないと感じました。

また、今ある施策の中にさまざまな隙間があることも見えてきました。リアルな声から、町民の「住み方」はいろいろあるのだということを改めて認識することができました。

「何に取り組んでいくことが効果的なのか」ということを考えていくには、今日の議論の咀嚼が鍵になると思います。役場内の一つの課で完結することではないので、しっかりと横串を通して議論を進めていきたいと考えています。

【今後のミラツナ会議もnoteにて発信していきます! ぜひフォローをよろしくお願いします】



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