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低用量ピルと女性の自己決定権 セックス・アンド・ザ・シティから考えたこと

みなさん婦人科を受診したことはありますか。
私は生理不順の改善、生理痛とPMS緩和のために低用量ピルを4年ほど服用しています。ピルの処方を受けに3ヶ月に1度受診しています。

※少しデリケートなお話を書きたいなと思っています。苦手な方ごめんなさいね。

仕事で、女性が婦人科に行きづらい理由を探っています。
生理に関してなんらかの不調や悩み事があり、婦人科の受診を検討したけれど受診に至らなかった女性5人にインタビューしました。結果的に婦人科を受診した女性も含めると20人以上に聞きました。

インタビューをする中で強く感じたのは、「自分の体を自分でコントロールすることに対する抵抗感を持つ女性がとても多い」ということでした。
「低用量ピルでホルモンバランスをコントロールするのが不自然に感じて怖い」
「旅行のために生理を遅らせるなんて自分勝手に感じる」

SRHR/セクシュアル・リプロダクティブ・ヘルス&ライツ(性と生殖に関する健康と権利)という言葉を最近よく耳にします。
JOICFPによると、SRHRは4つの言葉からできているそうです。具体的には、自分の性や産む・産まないについて、私達それぞれが適切な知識と自己決定権を持ち、自分の意思で必要なヘルスケアを受けることができ、尊厳と健康を守れること、ということです。


1994年、カイロで行われた国際人口開発会議で「リプロダクティブ・ヘルス&ライツ」という言葉が定義されました。2002年にはWHOがセクシュアル・ヘルスという言葉を定義し、SRHRがとひとまとめにされるようになったということです。
日本では2022年に、日本産婦人科学会が「リプロダクティブ・ヘルス普及促進委員会」を立ち上げました。

ただ日本では、「自分の体は自分自身で決める」という当たり前のことがまだまだ浸透していないのではないでしょうか。
SRHRとは、周囲の習慣や文化、宗教によって強制を受けず、個人が自分の性のあり方を決め、産む・産まない、いつ産むか、何人産むかを決められる権利だと解釈しています。
日本の少子化対策を始め、「女性は産む機械」という政治家の発言、女性は母になって初めて一人前であるという雰囲気、子どもを急かす親族などSRHRが十分に浸透していないことを表す事象は枚挙に暇がありません。

元を正せば、日本の家父長制、家主が決定権を持ち女性は従属的立場であったことから始まっているのかもしれませんね。
配偶者の同意がないと中絶手術ができないのは、それを端的に表しているように思います。

アメリカのドラマ「セックス・アンド・ザ・シティ」で、ミランダが思ってもいなかった妊娠をしてしまい、中絶を悩むシーンがありました(シーズン4、エピソード11のようです)。悩みを聞いたキャリーとサマンサが「私は◯回」、「私は◯回」とミランダに語りかけるのです。
最初にそのシーンを見た時、正直ぎょっとしました。命を軽々しく扱い過ぎではないか、性に奔放な女性の描写なのかも…と。ただ、時を経て少し印象が変わりました。

自分のお腹に一度宿った命を断つのが、女性たちにとってどれほどの苦痛とその後の苦悩を与えるか、妊娠した経験がない私でも想像することができます。現に妊娠を知ったミランダは非常に悩んでいました。
中絶を体験をした彼女たちが、友のためとはいえ、笑顔でその体験を話せるようになるまでにはたくさん傷つき、苦悩したと思います。
でも、「私の体は私のものであり、産む・産まないを決めるのは私だけの権利」という前提が彼女たちの中にしっかりと根を張っているからこそ生まれた会話なのではないでしょうか。だからこそ、彼女たちは中絶を決断することができ、その経験を受け入れて語ることができるのだと思います。

女性が中絶を気軽にできるような世の中になってほしいとは思いません。中絶は女性の体にも心にも深い傷が残るのではないかと思うから。でももし、妊娠を継続できない、したくない理由があった時に、女性が自分の意思で中絶を選ぶことができ、必要以上の罪悪感を1人で抱え込まずに済む世の中にはなってほしいと思います。

ピルの話に戻ります。日本の低用量ピルの普及率は2.9%と、先進諸国の中で突出して低いです。

国連の調査で、「低用量ピルを避妊のために飲んでいる人数」のため、月経困難症やPMSの治療目的で飲んでいる人が排除されていると考えられます。そのため、一概には言えませんが、この数字もSRHRが日本で浸透していない証ではないかと思います。

インタビューをしていると、本来は低用量ピルを飲むことでもっと元気に過ごせて、自分の力を出し切れる女性が多いと感じます。ピルを飲まないという選択が、習慣や文化の外圧と無関係な自分の意思に起因するものなら全く問題ないと思います。ただ、習慣や文化は、知らないうちに降り注ぎ首を締めてきます。その息苦しさに気づき、自分を開放することを手伝えたらいいなと思っています。余計なお世話でしょうか…。

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