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羊をめぐる冒険をめぐる旅 北海道美深町

旭川から特急で1時間と少しの、北海道美深町に行ってきました。
北海道の角の入り口の当たりの内陸部です。

美深町は、村上春樹の初期三部作三作目「羊をめぐる冒険」の舞台になった「十二滝町」という架空の町のモデルと言われています。

言われている所以は主に3つ。

・作中の記述
「札幌から260キロ」
「大規模稲作北限地」
これらの記述が美深町と一致する

・現在は廃線となっている路線「美幸線」との一致
作中にある「日本で第3の赤字路線」は、美深町の路線「美幸線」と一致すると考えられています。

・ドライブ・マイ・カーに出てくる「上十二滝町」からの考察
上十二滝町という架空の町出身の女性が、ドライブ・マイ・カーに登場するのですが、出版直後は、北海道中頓別出身と書かれていました。事情があって(笑)単行本化される時に「上十二滝町」と名前が変更されました。
地図上で見ると、中頓別の下にある、つまり「十二滝町」の位置にあるのが美深町なのです。

ここまでは、以前からたくさんの考察で明らかになっています。
今回、その美深町を尋ねてみました。

札幌から特急ライラックで1時間25分。旭川で特急サロベツに乗り換えて1時間15分。

美深駅

美深駅。なんとも趣ある駅舎でした。
改札はなく駅員さんがホームで切符を回収してくれました。

宿へはお迎えの車が来てくれて10分ほど美深の町を走りました。
宿は「TOURIST HOME & LIBRARY  青い星通信社」


外観
図書館
お部屋

開けた草原に佇む宿。明るい玄関が迎えてくれ、脇には図書館があります。奥に進むと、出窓に一人が腰掛けられるくらいのスペースがありそこで本を読むことも外を眺めることもでき、ゆったりした時間を過ごせます。

お部屋はネイビーを基調とした内装で落ち着けました。
9月半ばでしたが酷暑だった今年。爽やかな北海道の夏とぴったり合う宿の雰囲気が穏やかな気持にさせてくれました。

ちゃんと持ってきました。羊をめぐる冒険

夕食はチーズフォンデュがメイン。
ニンジンやじゃがいも、おくら。よくある野菜がとにかくおいしい。
夕食後に外に出てみると、満点の星空。吐く息は白かったです。

夕食。一つ一つすべて美味しかったです

羊をめぐる冒険の舞台のモデルということはもちろんですが、美深という土地自体に非常に惹かれました。
宿のご主人が美深について教えてくれたのですが、美深町には「天塩川」という川が流れていて、そこが稲作の境になっているそうです。つまり天塩川以北は米が育たない。
天塩川に橋がかかったのが昭和38(1963)年。
冬になると川が凍結してしまい、橋がかかる前までは子どもたちが橋の向こうにある学校に行けなかったそうです!
冬の間は先生方が毎日凍結した川の上を歩いて渡り、子どもたちに勉強を教えていたそうです。先生たち命がけです。

昭和38年って、そんなに大昔ではないですよね。「開拓」を間近に感じました。
私は雪が降るのが滅多にない土地の出身で、スキー場以外で自然に降る雪を見たことがないです。
生命の危機と隣合わせの冬に、未開の地を開拓した人たちが確かにいたんだな、どういう気持ちだったんだろう。
想像は実体験には及ばないから余計に惹かれました。

天塩川の看板

羊をめぐる冒険の舞台のモデルは、宿からもう少し先の仁宇布地区と言われています。今回はそこまで行くのは諦めたのですが、次回はそちらにも行きたいと思います。

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