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昭和~令和 家庭教育の問題

以前、某会報誌で中田先生にお話をうかがったときの内容を一部ご紹介します。(内容は一部抜粋し、加筆編集しております)M.M

家庭教育の崩壊

 家庭教育は、そもそもの目的は子どもを家庭で一人前にするということでした。子育ての目的となる教育です。
 しかし、この教育がきちんと広がらずに問題だけが増えている現状があります。それはこの教育は学校教育と違い先生がいて教えてくれるわけではありません。誰かがそれぞれの家庭に入り込んで教えるわけにはいきません。それは家庭というのはどこか密室的なところがあるからです。その中で今、ひきこもりだとか家族の仲が悪いとか、DVと言われる暴力などがかなりの頻度で起こっている状況が見えてきました。そして何よりもわからないところで子どもの安全が脅かされています。虐待、ネグレクト、育児放棄などの問題が表面化してきています。
 そのような状況になって家庭を立て直す、整えることが早急に必要になってきています。

家庭に影響する経済の発展と崩壊

 このような問題が増えてきた理由は、それは、過去50年以上前にさかのぼります。高度経済成長期と呼ばれたころです。日本の経済があまりにも早く発展してきたことにあります。そのため、父親の仕事が夜遅くまで残業になったり、休日出勤したり、単身赴任だとか海外赴任などで父親が家庭の中にいなくなり、家の中心になるべき父親の存在が無くなってしまったわけです。 父親が家の中にいて、家族や家庭を守っていくという形が維持できなくなりました。父親が常に家庭の中を理解して守っていくという理想的な家庭と家庭教育を打ち出しても外的な条件がそろっていなければ不可能です。
 では地域でそれをフォローできるのかといえば、地域の人もその土地に対する愛着などが希薄になってきています。なぜならば、多くの人がその土地に生まれ育って、その土地で職をもっているわけではないです。
 職住一緒ではなくなったからです。本来は結婚して夫婦となって家庭を築き、子どもを2~3人くらい設けて、その子どもの養育も自分たちの生活もきちんと成り立っていくということを家庭の理想としてきましたが、様々な問題が起こったことで、この状況は崩されました。


少子高齢化の問題

 バブル経済が崩壊し、リーマンショックなどの経済事情もそうですが、少子化や高齢化なども家庭教育の崩壊の原因です。国で「2人産んでください、3人産んでください」などというわけにはいきません。
 そして今は、親が子どもを大学まで出して自立するまで面倒を見ることが難しくなっています。もちろん、自力で頑張って大学を出て就職をする子もいますが、そういう子ばかりではありません。
 逆に仕事もしない、結婚もしない、働かない日本の若年無業者のニートやひきこもりもいます。その数は80万人にのぼると言われています。同じくらいの人数の中高年無業者もいるということで、その数は急増しています。
 だから親は、自分の老後を自分で守らなくてはいけなくなりますからお金を貯めるわけです。お金をためて老後に使おうと思っていても、使わないうちから認知症になったり、管理があいまいになってきたりします。そうすると今度は、オレオレ詐欺や振り込め詐欺にあってしまうという今の様々な問題が出てくるわけです。若年層は働かないし、高齢者はお金を使わないから経済がまわっていきません。経済の影響は家庭に影響し、家庭の状況は経済に影響します。

(チャイルドケア会報誌Peekaboo No52号より一部抜粋 http://www.childcare-jp.com/)

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家庭を考えるときに、社会や教育などの背景も考えながら柔軟に取り組む必要がありますね。
昭和の古い考えが令和になった今でもどこか引っ張られ、影響しているように思います。「ねばならない」ということで苦しんでいる若い世代もいることでしょう。
令和の新しい「家庭キョウイク」を皆さんと考えていきたいですね。(M.M)



●プロフィール●中田 雅敏(なかだまさとし)
日本家庭教育学会 会長。
八洲学園大学教授(博士・学術)、韓国韓瑞大学客員教授。公立高校教頭、1997年目白大学客員教授を経て2003年より現職。数々の家庭教育に関する著書を出版されるほか、俳人 中田水光として俳句に関する著書も多数出版されている。


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