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【イベントレポート】実践者に聞く!ミライの教育の見つけ方 Vol.2 ゲスト 今井洋介さん

※本noteは、2022年8月20日に開催した「実践者に聞く!ミライの教育の見つけ方Vol.02 アフターGIGAスクール 〜遠隔授業を活用したサテライトスクール〜」のイベントレポートです。

「実践者に聞く!ミライの教育の見つけ方」 は 毎月第3土曜オンラインイベント

はじめに

こんにちは、ミライの学校です。2022年8月20日、ミライの学校が主催するオンラインイベント「ミライの教育の見つけ方」の第2回の様子をお届けします。

現役の学校の先生がトークゲストという珍しいコンテンツとなりました。しかも、現在日本で3校しかない(しかも、日本で初めての)株式会社立の学校・充実した英語教育・ICT活用・LCAサテライトスクールなど、保護者としても気になることばかり。

では、「GIGAスクールって何?」というところから盛りだくさんのイベントレポートをお届けします。


(1)スピーカーのご紹介

ゲスト:今井洋介さん

今井洋介さん| LCA国際小学校 参与・学校イノベーション統括

東京都町田市出身。横浜美術館子どものアトリエが教育活動の原点。公立・私立・会社立の小学校の先生として様々な現場で教壇に立つこと約20年。担任・主任・副校長と学校現場の最前線で活躍しながら、アーセナルサッカースクールで起業するなどユニークな経歴も。教育を軸に横断的に活動する、パワフルで情熱的な、ちょっと変わった(?)先生。

LCA国際小学校では、2021年から遠隔授業を駆使して家族とともに地方に出かけて体験授業を行う「LCAサテライトスクール」を立案・実施し、牽引。さらに、企業と連携した製品開発プロジェクトや、オリンピアンやプロアスリートとの連携プログラムなど、学校の既存の枠にとらわれない、10年先を見越した教育モデルの創出に奮闘中。

(出典:実践者に聞く!ミライの教育の見つけ方 Vol.2 ゲスト今井洋介さん のご紹介|ミライの学校|note

モデレーター:高畑拓弥

高畑拓弥|ミライの学校 代表理事

神奈川県横浜市出身。柏陽高等学校卒業後、慶應義塾大学SFC在学時に株式会社COMPASSファウンダーの神野のもとITスタートアップを経験。
県立海部高校の魅力化コーディネーターとして県外生を10倍以上に。辺境の地では異例の第2寄宿舎設立を実現。

ミライの学校 公式Webサイトより)


(2)本編1 GIGAスクール構想

※今回、資料が60ページあるため、簡略化した内容を記載いたします。本来であれば、今井さんの軽妙なトークをそのまま記載したいところですが、何卒ご了承ください。

(授業がはじまります!黒黒板懐かしいですね)
(まずは今井先生が関わっている小学校のお話から 「私立(学校設置会社立)LCA国際小学校」)

日本で初めての会社立の小学校。2008年に文部科学省の認可を受ける。「一条校」と言われる文部科学省認可の学校で、国際教育特例校。学習指導要領に従って英語で授業を行う。一方で、いわゆるインターナショナルスクールはこの一条校ではない。株式会社立の学校は、2022年8月20日現在、全国でも、株式会社エデューレエルシーエーが運営するこのLCA国際小学校を含む3校のみ。

学校は、公立(区立、市立、町立、村立など)と、国立、そして学校法人が運営する私立が一般的だが、株式会社立になると「国からの補助金を受けることができない」「でも税金は全て払う」。利点は、経営判断・投資判断を早く行うことができる(例 オンライン授業の環境を整えるための投資判断スピード)。

(GIGAスクール構想とは?)

GIGAスクール構想(Global and Innovation Gateway for All)とは、2019年12月に文部科学省が発表した教育改革案のこと。具体的には、「児童生徒1人1台の学習用端末」「クラウド活用を踏まえたネットワーク環境の整備」。どの学校の先生も(LCAに限らず)みんながんばっています。実は令和5年に完了する案だったものがコロナの影響で2年前倒しで導入となった。

(LCA国際小学校のGIGAスクール構想対応の様子)

LCAでは、教科書や問題集を電子データ化し、複数の学習アプリを導入。1年生から6年生まで全ての児童(保護者も)ICTを駆使した学習に対応できるようになった(右上)だけでなく、自分の状況に応じて自宅からでも授業に参加できる(左下)、ハイフレックス型の授業体制(学校での対面授業と自宅からのオンライン授業の両方)までできるようになった。

(左側の写真をよく見ると、それぞれ学習している内容が違うことがわかる。それぞれの学習のペースにあわせて学ぶ。)
(業務基盤の移行はとても大変。えいやでできない。コンサルも入れての一大プロジェクト。LCAでは、いざとなれば自宅から授業ができるまで環境が整いました)

GIGAスクール構想で期待されている効果は「個別最適化された学びの提供」「教員の働き方改革」の2つ。では、それが達成されたらその先は?

「学校から抜け出して、授業を行う。しかも親子で行こう!」ということで、学校でありながら学校らしからぬ取り組みを始めることになった。LCA国際小学校は2021年から「LCAサテライトスクール」の準備を始め、ミライの学校の「デュアルスクール」の話を聞きつつ、2022年1月、2022年6月にLCAサテライトスクールを実施した。


(3)本編2 LCAサテライトスクールのコンテンツ

●2022年6月の実施の様子 ①JALの協力の下空港の中へ

(2022年1月のLCAサテライトスクールでは、4家族・15名が参加)
(2022年6月のLCAサテライトスクールでは、13家族・47名が参加。前回の3.5倍。)

JALさん協力の下のコンテンツも面白そう。これも普段の授業の一部として実施できるのがすばらしい。家族からすると、親子で旅行。学校からすると体験授業+普段の授業。詳しくは下記の記事もご覧ください。

●2022年6月の実施の様子 ②普段の授業はオンライン

(普段の授業もオンラインで受けます。学年もクラスも違う。個別最適・それぞれの授業にオンラインで参加できるから、参加する学年がバラバラで実現できる)
(「どこでも勉強できる、そうタブレットさえあればね」の時代。勉強中)
(左:図工の授業/右:音楽の授業で踊っているところ)
(授業の休み時間は、こんなところでのんびり)

●2022年6月の実施の様子 ③藍染めの体験だけでなく背景を学び、語学も体験する

(藍染の藍の畑に親子で体験学習。5人の英語教師の派遣で、英語で会話。現地ならではの情報を、現地在住の英語教師から、英語で得る。)
(学校で授業をしている時間帯に、体験学習をする。この場合授業内容は、インターネット上のクラスルームで学校の授業内容をあとから児童自身が確認するできる。学校に戻ったら先生たちからフォローアップの体制も万全)
(藍をつくるには水が大事。四国最大の大滝・轟の滝をご神体とする「轟神社」まで足を運ぶ)
(轟神社にて、神社の総代でもあり藍染の文化を広げる地元の方から親子で話を聞く)

●2022年6月の実施の様子 ④「牡蠣」についての体験学習

(牡蠣の殻から身を取るのは、案外コツがいります(スタッフより))

●2022年6月の実施の様子 ⑤放課後は体育館を借りて、親子で地元の方と一緒にスポーツで交流

(はじめましての大人でも子どもでも、一緒にゲームをすればハイタッチするぐらい仲良しに)

●2022年6月の実施の様子 ⑥お寺で座禅体験&英語でお説法

(仲良くなると、雨も楽しい。お寺への移動の様子)
(英語でお説法 ご住職スゴイ(スタッフの感想です))

●2022年6月の実施の様子 ⑦放課後に海部小学校の体育館にて、海部小学校の児童と一緒に、LCAの授業を受ける

(画面右上は相模原市の「LCA国際小学校」の授業。これを海部小学校の体育館のスクリーンに映して、徳島県海陽町海部小学校の児童さんとLCA国際小学校の児童さんと一緒に授業に参加)
(プログラミングが得意な海部小学校の児童さん・英語が得意なLCA国際小学校の児童さん。両方がそれぞれ得意とする部分で助け合ってロボティクスの授業を進める)

●2022年6月の実施の様子 ⑧予定のない放課後は川辺へ

(今の学校でできない メリハリと緩急。遊ぶときは思い切り体を使う)

●2022年6月の実施の様子 ⑨リモートワーク&リモートスタディ 親子ワーケーションのワーク部分

(子どもたちがオンライン授業中、大人は仕事をしています)

●2022年6月の実施の様子 ⑨親子ワーケーションの「バケーション」部分に学びと遊びがたくさん

(地元の猟師さんに獣道を教えてもらう。写真左の左端は保護者。大人も前の方で聞きたい)
(親子で一緒の体験が、学校を介して実現できる。新しいカタチ)
(地元の方から「6月の誕生日の方いる?」と差し入れをいただく)

●2022年6月の実施の様子 ⑨親子ワーケーションの「バケーション」部分に学びと遊びがたくさん

(1日の終わり 空の色が変わりつつある広い空を眺めて)
(地元の方、企業の方の多大な関わりの中で実現できた「LCAサテライトスクール」)


(4)本編3 なぜLCAサテライトスクールをはじめたのか、の真面目な話

(VUCA(ブーカ)の時代。先行きが不透明)
(VUCA(ブーカ)の時代に、社会に必要なこと・子ども&大人に必要なことは「多様性」)
(多様性は「違いを認め合い、尊重しあう」+「『集合知』で立ち向かう」。「多様性の反対=均一性・画一性」的状態だと、集合知が偏る。認知的多様性があると「集合知」で立ち向かえる)
(そもそも「多様性のある社会」は、実は結構大変かも。価値観や考え方の違う人々と過ごすのは、気力・体力が必要なこと。同じような考え方の人たちだけで仲間を作りがちだし、価値観の違いは受け入れにくいもの。)
(それでも、多様性は、人も社会も豊かにする)
(多用性を培うためには、多様でリアルな経験を蓄積すること。いろんな人に出会い、いろんな経験をすることで、自分の価値観や考え方が広がる。経験の蓄積はメタ認知を促し、世界の観えかたに変化を与えていく。)

●【参考資料】居場所の数と自己肯定感(内閣府資料より)

(出典:内閣府 令和4年版 子ども・若者白書)
(Well-being Self-esteem)

●【参考資料】親子で取り組むことに意味がある

(出典:東京都教職員研修センターと慶應義塾大学との共同研究)
(そのために、多様な経験・居場所の増加・親子の体験 → 「LCAサテライトスクール」実施)


(5)本編4 質疑応答編

●学校の存在意義はあるか?

Q. (高畑から質問)学校外の多様な体験に意味があることがよくわかりました。高校以上だと学校そのものがない事例もあります(例)N高などの通信制。今は小中学校の通信制はないですが。今井先生自身は学校の意義は「学校そのものはなくてもいい」と考えているのか「いや学校自体はあったほうがいい」と考えているのかどちらでしょうか?


A.学校は大事な場所だと思います。
例えば、今回やってみても知識のインプットとかなら個別最適でパソコンだけでもいいかなとすごく感じたんですね。でも同時に「学校じゃないとできないこと」も絶対にあって。それはいわゆる「協働的な学び」と言われるもの。お互いにいろんな話をすることから生まれるそれは、人間関係の中から生まれるもの。人の成長は時間軸で流れているので、共に時間を過ごすことがすごく大事だと思っている。

「学校じゃないとできないこと」と「学校じゃなく『ても』できること」を既存の小学校の枠組みで行う。今回「学校『では』できないこと」を実現するために「LCAサテライトスクール」に行き着いた。子どもたちの出ていく場所の原点となる居場所としては学校が必要だと思う。ただし、あり方はいろいろあると思う。N高さんであっても定期的に集まる。アメリカのミネルヴァ大学でも、自分たちの居場所・コミュニティがしっかり確立した仲で移動していくから。コミュニティの形成のしかたをどう考えるかによっては、もしかしたら学校という、ぼくらのイメージする「コンクリートの箱の中へ行く」という話というのが、形態が変わってくる可能性があるし、それはあってもいいと思う。

しかし、自分の原点となる場所というのは特に子ども達の成長の過程を考えた時には、クラウド上なのか実物なのかは別として、常に「ぼくの同窓生」「ぼくの同級生」といった『ぼくの居場所』というのが子どもにとってあるべきだとは思う。

【補足】高畑が「高校は通信制がありますが、小中学校で通信制はやらないのはなぜでしょうか?」と率直に文科省の関係者の方に質問したところ、「人の発達段階として、精神的に親から自立できていない期間を義務教育としている。つまり、小中学校の期間。集団生活をすることで自立を育むために学校という場所に集まるとしている」との回答を聞いたそうです。

●ハイフレックスが進んだら生徒は学校に来なくなる?

Q. (今井先生が他で受けた質問)LCA国際小学校で、ハイフレックスが進んだら、子ども達は学校に来なくなってしまうのではないでしょうか?学校の存在意義がなくなってしまうのではないでしょうか?


A.そんなことはありません。LCAの子ども達はオンラインよりリアルに学校に行きたがっています。学校に行きたくてしょうがない。我慢して「(コロナの感染抑制のために)しょうがないから自宅で授業を受ける」としている。
今回のサテライトスクールは、「滞在先の現地での体験が最高に楽しくて、それをしたいから行きたい」から行く。滞在中の別のクラス・別の学年・親子ぐるみの大きな集団である意味大きな家族のように過ごす。またLCA国際小学校に戻った時に、このつながりが継続する。


【補足】
(高畑より)前提が違う。学校が楽しくないか、学校に行きたいか。本当は、学校が楽しくて行きたいと思える状態であるといいですね。

●将来的に、LCA国際小学校の児童でなくてもサテライトスクール参加は可能?

Q. (参加者から質問)LCA国際小学校のサテライトスクールに、ツアー参加のような形で「学校『外』の生徒が参加するような企画」の予定はありますか?体験学習メインの4泊5日のようなもの。


A. ぼくらはファーストペンギンの立ち位置にいるから、こういった学校外の生徒が参加できるような企画もできるようになりたいなと思っています。形はどんなものになるかは、ミライの学校さんとも相談しながらになると思います。多分、それぞれの学校によってできることできないことたくさんあると思いますが、ユーザー目線で「やってみたい」と思った人達に開かれる世の中でありたいと思っている。ぜひぜひ検討していきたいと思っています。

例えば、既にLCA国際小学校の中でも、土曜に学校外の子ども達が受講できる英語のクラスがある。夏や春にも同様の一般向けの授業がある。なので、サテライトスクールも同様の実施ができる可能性を探ってい来たいと思う。

今回のまとめと次回イベント

高畑より、最後にイベントに参加いただいた皆様へ

今回小学校の取り組みで今井先生にお話してもらいました。次回は、高校の文脈でのお話です。僕たちが高校を選択する時は、学区に基づいてその中の偏差値でなんとなく高校を選んでいました。今、別の選択肢として、都市から地方の高校を受験する流れがでてきました。「地域みらい留学」という制度です。実際に、高畑自身も徳島県の海部高校の地域魅力化に携わっていますが、初めた年と直近の年度比較すると、県外入学生は15倍に増えました。

次回9月17日(土)10時からの「実践者に聞く! ミライの教育の見つけ方 Vol.03」のゲストのご紹介

※2022/09/18時点イベントは終了しています


▼イベント概要▼

名称:実践者に聞く!ミライの教育の見つけ方 Vol.03
   ~地方は世界の最先端!?高校進学の新たなカタチ~
日時:2022年9月17日(土)10:00-11:00(毎月第3土曜日開催)
方法:Zoom(オンライン) 
参加費:無料
申込:
https://peatix.com/event/3320391