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第6話:男性はなぜ育休を取らないのか

男性育休の法改正までのヒストリーを語るマガジン。前回、第5話では、行政や政治へのアプローチを軸に、「なぜ男性育休が必要か?」を説明するのに用いた手法とデータについて紹介し、私たちの矢が国会まで届いたところまでをお話ししました。

今回の第6話では、育休を取得する当事者へのアプローチとして、取得した人の割合と取得したい人の割合を紹介し、2018年頃、そのギャップの原因がどこにあるのかをどのように分析していたかについてお話しします。


(1)育休を取得した人の割合

男性の育休取得率の推移

毎年6月上旬になると、厚生労働省から雇用均等基本調査結果として、男性の育休取得率が公表されます。2019年6月4日に発表された2018年度の取得率は6.16%。下図のように1桁のパーセンテージに低迷し続けており、2020年の政府目標13%の達成見込みは低いと言わざるを得ない状況でした。

低迷し続けていた男性育休の取得率

当時、メディアの記事での書かれっぷりも散々です。
もはや、啓発では足りないのは明らかだ(ハフポスト)
過去最高も政府目標遠く(日経新聞)

月単位の育休男子は絶滅危惧種!?

取得率もさることながら、取得日数はさらに壊滅的な状況。取得者の大半が5日未満で、1か月以上の取得者は約1%、100人に1人いるかいないかの絶滅危惧種的存在でした。

月単位の育休取得者の割合

男性育休が必要だと頭ではわかっていても、いかに強メンタルであってたとしても、この状況で月単位の育休を申し出るには、相当なハードルがあったのはまぎれもない事実です。

そこで私たちは、ファーストペンギンだけの頑張りに頼るのではない、「赤信号みんなで渡れば怖くない作戦」(第5話参照)によって、取得率を6.16%からグッと押し上げ、月単位の取得者があちこちに当たり前にいる状況をつくろうと思ったわけです。

(2)育休を取得したい人の割合

育休取得が進まない中で、「取りたいけど取れないの?」「そもそも取りたくないんじゃないの?」という議論もありました。当時、どのくらいの人が育休を取得したいと思っていたのでしょう。

公益財団法人日本生産性本部「2017年度 新入社員秋の意識調査」では、男性の79.5%が「育休を取得したい」と回答しています。

20代~50代を対象にした日本労働組合総連合会の調査結果(下図)でも、20代では72.2%、30代では59%が「取得したかった」「取得したことがある」と答えています。

育休を希望する男性の割合

男だってホントは育休を取りたいんだ

この2つの調査からわかるのは、大半の男性は「取りたいけど取れない」「男だってホントは育休を取りたいんだ」と考えていたということです。

であれば、取りたいけど取れない原因を明らかにし、その「壁」を取り払えれば良いじゃん!と私たちはシンプルに考えました。

(3)取りたいのに取れない原因

男性が育休を取りたいのに取れない原因は何か?この答えも政府の調査結果にヒントが記されていました。

厚生労働省「仕事と家庭の両立に関する実態把握のための調査研究事業」(平成27年)の226ページにわたる膨大な資料の中から、P.161にヒントが記されていたのです。

敵は○○にあり!

この膨大で味気ない(笑)レポートを読んでください、と言っても、私たちが訴えたいことは伝わらないし、そもそも読んでもらえません。そこで、男性が育休を取りたいのに取れない原因は何かをパワポ1枚にまとめ、敵は職場にあり!というメッセージをわかりやすく伝えるようにしたのです。

男性育休の壁は職場にあり

次回:パワーワード「義務化」

今回は、育休を取得した人、取得したい人の割合を示すデータから「取りたいけど取れない」状況を説明した上で、職場にその原因があったことをお話ししました。

次回、第7話では、職場、つまり会社に働きかけていく上で、あえて「義務化」というパワーワードを使い、議論を巻き起こしていった様について紹介します。ぜひお楽しみに。

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(文責:りょうたっち)

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