見出し画像

とにもかくにも足が遅い

わたしは歩くのが遅い。

別に人と比べて足が特別短いわけじゃないし、皆と同じテンポで歩いている。むしろ、かなり頑張っていると思う。
皆についていこうと足を地面に打ちつけながら歩くから、その衝撃でスネが痛むほど。歩幅が狭いのかと思い歩幅を広げてみると、途端にテンポがずれる。テンポがずれた分、皆から半歩遅れだす。
自分一人で歩いていると、多くの人に追い抜かれる。でも私は、当然ながら私のペースが心地よかった。

皆と歩くテンポが半分ずれると、途端に世界からずれたような気持ちになる。世界は言い過ぎかもしれない。例えるならば、所属する、その小さな集合体で仲間外れになったような。

友人たちと歩くとき、大抵私は後ろに居る。それが3人の時ならひとりだし、4人のときならふたりで後ろを歩く。会話に入れていないわけではない、前を歩く友人がふざけたことを言って、もう一人がそれにのっかって、私がツッコむ。それが日常だった。でも私は必ず、後ろに居た。

歩きづらいから、置いて行かれたいと思うくせに、その集合体を外れると、何者でもなくなったような気になってしまう。本当はひとりで何でもできるのに、何かを一緒にしてくれる誰かを求めてしまう。この現象に、名前を付けられないものか。

わたしはひとりが好きだし、ひとりが怖い。
休みの日はひとりで出かけたいし、ひとりで映画を見たい。なのに仕事の研修に行くと、隣に座る誰かや昼食を一緒に食べる誰かを探してしまう。このギャップがもどかしい。
休憩時間になってもひとりで本を読んでいる同期を視界の端に、さして変わり映えのしない話題で大学生のように笑っている。
そんなことを憂鬱に思っているくせに、本気で笑っている。楽しいと思っている。人と話すことは好きなくせに、ひとりになりたいなんて心の中ですかしている。

自分のやることなすこと、すべてにケチをつけないと気が済まない性分なのだ、結局は。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?