里山の雨上がり
「今日こそは草刈り機で草を刈るぞ!」
わたしは手ぬぐいを首から下げて、意気込んだ。
ウィーン!と大きな音。
振動が手に伝わってくる。
その重さに、慣れない草刈り機の持ち方の定位置が定まらない。
予定してた範囲を、一旦刈りおえた。
大きく、太く成長した、まだ咲かぬコスモスを剪定した。
その茎を植えるために、鎌で土を掘り起こす。
あちこちに南天の木が根付いていて、掘るたびに根っこにぶつかる。
キレイに土を整えるのを諦め、まだあちこちに雑草の根を生やしたまま、コスモスたちを土に戻した。
近所のおじちゃんが、軽トラをわたしの前に止めた。
「草刈ってんのかー?ずいぶん下手くそやなーって見ててん!」
と言った。
おじちゃんの刈ったあとは、芝生のようにとてもキレイな刈り跡だった。
「デートに行くわ〜!」
と笑いながら去っていくおじちゃん。
おじちゃんのやり方を見よう見まねで、また刈りはじめる。
さっきよりはキレイに刈れてるな…と自画自賛。
移動スーパーを待っている、お向かいのお母さんがわたしに声をかける。
「あんたにこのこと言おうと思うててん」
と、10日分くらいの溜まっていた、たわいもない話をお互いする。
お昼ごはんを食べて横になったら、いつの間にか寝ていた。
午前中かなり体力を使っていたみたいだ。
用事があり、街のほうにクルマを走らせた。
コワーキングスペースないかな…田舎には無いか…
なんて、考えを巡らせていたら、ふと海を思い出した。
長雨のあとの海は、湿った匂い。
波も、波音もいつもより強く感じる。
肌にまとわりつく湿気。
雲におおわれた隙間から見える、太陽の光。
そのわずかな光が、水面を輝かせる。
流木で遊ぶ家族連れ。
ウォーキングする人。
海で泳ぐ若者。
ゴミを黙々と拾う人。
ここに移住して半年。
土を触るのも、海を眺めるのも、すっかりわたしの愛おしい日常になった。
読んでくださり、本当にありがとうございます^ ^