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縁ができたな

 ドンブラザーズが終わってしまった。

 まさかハマるとは思わなかった異色の戦隊。

 これについて、語っていいものか悪いものか、下書きは書いたものの、投稿しようかどうしようか考えあぐねているうちに、今日、同志をみつけた。

 しばまるさん、いきなり引用させていただき、すみません。 
 でも嬉しかったので!

 記事を読んで、やっほーい!ドンブラ好きな人がここにもいた!という、喜びがあふれ出てきた。

 しかし、厳密に「同志」といっていいかどうかわからない。
 
 なぜなら我が子は5歳児ではないのである。

  子供がもうすぐ高校生だというのに戦隊をチェックする自分にも呆れるが、好きなので毎回、初回チェックは必ずしている。途中抜けはあったが、子供が小さいうちから相当数の戦隊を見た。

 配信でまとめ見でいいかな、という戦隊はそれ以後見ないし、自然に離れてしまう戦隊もある。
 前回は初回でまあいっかなと思ってしまった。ゼンカイジャーだけに。
 でも見ておけばよかった。今回いろいろ絡みがあったはずだからだ。

 それにしても、ドンブラはとにかく別格だった。
 なぜか初回からグイグイ不思議な魅力につかまれ、録画してまで観てしまった。

 物語はひとくちには説明できないほどシュールでハチャメチャで、やりすぎな部分は大いにあったけれど、いったいどう始末をつけるのだこれは、と思いながら毎週見続け、最終回は(いまだに謎は多いのだが)切なくも爽やかな大団円(縁)だった。

 オトナのかたは、戦隊なんて子供だましでしょう、とおっしゃると思うが、私は「子供だまし」大歓迎。面白いファンタジーで私をだませるものならだましてくれぃと思うほうだ。

 子供って言うのは意外と騙されないもの。誤魔化そうとしてドツボにハマった経験のあるかたも多いと思う。 

 「戦隊」や「仮面ライダー」や「ウルトラマン」で、もし俳優さんが真剣に演じなかったら子供からはそっぽを向かれる。顔の出ないスーツアクターさんでも、悪役で被り物でもそれは同じだ。子供は真剣に遊んでくれる大人と空想が大好きなのだ。

 暴太郎戦隊あばたろうせんたい、というのはどうやら「アバター」戦隊らしいのだが、正直なところ、彼らがいったい「何と」戦っているのかはよくわからない。ただひとつはっきりしていることは「人間を守っている」らしいことだけだ。

 敵と味方が混戦するカオス。「戦隊をめぐる物語」のほうに重点が置かれていて、サイドストーリーのほうが重要だった。戦闘シーンはほぼおまけで、番組終了前に1分ぐらいで終わることもあった。次々新しい形態を出しては終わる形だ。

 スポンサーの手前、玩具は売らなければならない。
 子供には人気が出なければならない。
 でもそれに、必ずしも善悪の闘いは必要なのか、と、この戦隊は問いかけてきた気がする。

 制作側は、なにかもうあきらめたのか吹っ切ったのか、シュールを追求し貫き通した。立派だ。そして最初から最後まで評判が極端に別れていた。

 嫌いな人は大嫌いだったようだが、私は面白かった。

 大人の複雑な恋愛も描かれていて、子供の教育に悪いという人も多かったが、私は息子が今5歳だったとしても一緒に観たと思う。

 もちろん、配慮は必要だし、幼い子供の柔らかい心を無闇に傷つけることは罷りならんと思う。が、大人の世界から切り離された子供の世界なんてウソなんじゃないだろうか、とも思う。

 「戦隊」や「ライダー」は時代を映す鏡でもある。映像表現もそうだが、ある問題点を含めたもう少し先の未来をコンパクトに世界の中に詰め込んだファンタジーとして作られていることが多い。

 確かに昔の手作りの危険な爆発シーンと違い、戦闘シーンはCGなどで目がチカチカして何が起こっているのか分からなくなっている点は否めない。良くなっているようで実は改悪のような気もするが、スーツアクターさん達の身は守られる。

 昨今は「こんなもの暴力だ」と嫌悪し、ジブリのほうがいい、という親子は増え続けているらしい。

 私は平和を愛するしリアル世界の戦争を憎む。
 いまだに前時代的なやり方で戦い続ける地球人を見ると、地球の男に飽きる前に地球人に飽きてくる。

 確かに戦隊は「戦う隊」だから、なにやらと戦っているし、武器などを使って相手をやっつけたりする。ライダーは少し違うが、戦隊は対象年齢が幼児なので、いつも「ごっこ」が前提のようなところがある。
 
 それにもまして、今回の「ドンブラザーズ」には、相手が「気持ちいい」と感じて心を改めるような戦い方があり、「な、なにこれは。癒してるの?敵を癒してるの?」と驚いた。

 最近の戦隊は、悪が悪ではなく、「普通の人のストレスや欲求が嵩じて怪人に変身してしまう」パターンが多いが、ドンブラもそうだった。
 この場合は、やっつけられた怪人や悪人はやっつけられたあとは我に返って善人に戻ることになっている。殺害目的の戦闘ではないことを明確にされていることが多い。

 その中でも、「相手を癒すことで正常に戻す」という戦い方は異色だったなと改めて思う。

 かつての戦隊は「悪。悪といったら悪」みたいな想定で絶対的敵対勢力があったものだが、今回は「人の欲望が作り出すもの(=ヒトツキ)」、「感情を理解できないデジタルなもの(=脳人のうと)」、「本能のみで知性のないもの(=獣人じゅうと)」が当初、入れ替わり立ち代わり敵として登場。

 そもそも「桃太郎」をベースにしていながら、仲間にはキジトラサル以外に鬼娘おにっこ・「鬼頭はるか」さんがいた。漫画家を目指すこの鬼っ娘が私は大好きだった。演じていた志田こはくさん、変顔ばかりさせられて気の毒だったが、『銀魂』でハナクソほじらされた橋本環奈ちゃんも成功している。これからの活躍に注目したい。

 ちなみに最近、『電王』のお姉ちゃんだった松本若菜さんが大ブレイク中だ。いつ何時、キャリアが花開くかわからない。頑張れ、志田さん。

 閑話休題。

 主人公の桃太郎=桃井太郎は、宅配便で働いている勤労青年で、もともとはデジタルな世界から来たから人間らしい嘘がつけない。嘘をつくと死んでしまうという特性があり、きびだんごを食べることで回復する。

 キジトラサル鬼娘は「わるいもの(=ヒトツキ)」が現れるとアバターとして現場に召喚され、変身しないときの仲間が誰だかわからないままに桃太郎の「お供」として戦う。子供たちになじみ深いゲームなどと一緒だ。

 戦っていると邪魔者(たいてい脳人)が現れ、脳人がヒトツキを倒したりするので訳が分からない。戦いが終わるとみんな、召喚される前にいたところに戻る。そのせいで、物語終盤まで、一緒に戦っている仲間が誰なのかをお互い知らないというようなことが起こる。

 脳人グループも一筋縄ではいかない。彼らは桃井太郎を倒すというタスクを与えられているが、その意味を知らない。人間に触れる機会が多くなるにつれ、人間に惹かれ、人間を理解し仲間になりたいと思うようになる。それをよしとしない脳人との間で分裂が起こったりする。

 ヒトツキ(邪悪なものに憑かれた、という意味なんだと思う)も一皮むけば善良な人間だし、なんと戦隊の仲間もしょっちゅうヒトツキになっていた。獣人の中にも人と共存しようとしたものがいで、善悪の境目がはっきりしない。

 いちばん謎だったのは「ムラサメ」。
 おばちゃんにはその存在がどうにも理解できなかったが、もしかしたら「AI」みたいなものだろうかと思う。「AI」は使いようによる、ということの暗喩だったのか??

 この戦隊は全体に、多様性もここに極まれり、という感じだった。善悪が曖昧になり、何が正解かや価値観の落とし所がわからない社会に生きる今の子供たちが「仲間」「友達」を作るのがとても困難な状況が見て取れる。一緒に釜の飯を食えば友、というが、MMORPGで遊ぶばかりで一緒に釜の飯を食べる機会すらなかなかない今の子供たちの現状は、混沌としていて複雑なのだ。

 ちなみに、戦隊の彼らが一緒に釜の飯を食う場所は「喫茶どんぶら」。ここは昔のキムタクのドラマ「HERO」で出てきたバー「St.George’s Tavern」のオマージュ。

 「HERO」のバーでは、田中要次さん演じるマスターがどんな注文にも「あるよ。」と答え、どんなメニューでも注文通りに出てくるのだが、「喫茶どんぶら」のマスター(役名:五色田介人/演者:駒木根葵汰)も同じ。「あるよ。」と答えてなんでも出てくる。

 このマスターは2021年の戦隊『機界戦隊ゼンカイジャー』のゼンカイジャーと同じ役名・同じ演者だが、ドンブラでは別のキャラクターとして登場している。たまにゼンカイジャー(だとしか思えないのだが違うと言い張ってる)に変身してメンバーを助ける。ナルシストで謎の男だ。

 ゼンカイジャーもかなり物議を醸しだした「たいがいな」戦隊だったらしい。2年続けて戦隊に出続けた気持ちはいかがだっただろうかゼンカイジャー。

 幸い(?)、5月にドンブラとゼンカイジャーの映画が上映される予定だとか。

 このふたつの戦隊、混ぜるな危険、といわれているらしい。

 怖いもの見たさで観てみたい気がするが、戦隊とライダーの「映画」はこれまで面白かった試しがない(たまに例外はあるものの)。

 いやしかし、もしかしたら映画でゼンカイジャーやムラサメの謎が明かされるかもしれないから、正直気になる。
 でも劇場にはいかない。
 いかないよ、たぶん。笑

 どうでもいいことだが、戦隊で4000字近く語ってしまえる自分を、今、ちょっと嫌だなと思っている。

 読んでくださってありがとうございます。
 1年間見続けた記念に、語らせていただきました。

 ※タイトルの「縁ができたな」は桃井太郎の名セリフ。

好きだった回は「太郎がピアニスト息子役を演じた回」と、「鬼っ子はるかちゃんの電話ボックスゴースト回」。毎回のタイトルも秀逸だった。






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