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映画『夜明けのすべて』


公開してすぐの休日、ちょっと気になるし朝早起きして観に行こうかなーなんて思っていたはずなのに、朝の準備が進まない。
というか気付けば昼だし、なんだか気持ちが重くて映画館には行けそうにない。

次の日は、もっと気持ちが重かった。
のろのろと準備してもなんだか気持ちがざわついて、上着を着て靴を履いてドアノブに手をかけるまでしてもまた引き返して座り込んでしまう。
正直近所のスーパーに買い物だって行けないくらい。
どんどん深みにはまっている。このままずっと家にいたらやばい。
焦ってなんとか外に出て、1時間ほど近所を自転車で意味もなく走ったら、少し気持ちが落ち着いた。


映画館で観るのって結構ハードルが高い。

近所にないから電車で行かないといけないし、乗り遅れたら観れなくなるから電車の時間も映画の時間も確認して、その上乗り換えもしなくちゃいけない。
私からしたら結構大変だ。

観たい映画があっても、そんなこんなで映画館に行けないまま上映が終わるなんてことはこれまでもしばしばあった。
また今回も観れないかーなんて思っていたけどある朝早く目が覚めて、なんか今なら行けるかも!と思えた。

そうなればあとは準備して家から出さえすればなんとかなる。

作品の情報はなんとなくしか知らなかった。

ただ、『思うように行かない毎日。それでも私たちは救いあえる。』というコピーになんとなく惹かれただけ。

なんとなく、私の気持ちも救ってくれそうな気がした。それだけ。



PMS(月経前症候群)とパニック障害という病気を抱えた藤沢さんと山添くんを中心に物語がはじまる。

最初はお互いに自分の尺度で相手を測って苛立っている場面も見られ、理解し合えないふたり。

自分の尺度で相手を測るなんて傲慢な価値観の押し付けだ。
とはいえ自分の感情が自分の感覚中心になるのは仕方ないことでもある。

この作品で描かれている栗田科学の従業員たちはそんな藤沢さんや山添くんに必要以上に干渉しない。
調子が悪そうなら心配するしサポートをして、余計な詮索はしない。

藤沢さんと山添くんはあるきっかけで少しずつ互いに相手を助けられる存在になっていくが、そこにも一定の距離感が保たれているように感じた。

相手のことを尊重して、踏み込みすぎない関係性が心地良い。


映画のなかでプラネタリウムがかなり重要な存在になるが実は原作にないオリジナルの設定らしい。

今回映画館で観る映画体験とプラネタリウムの相性が良すぎて、どうしても観たくなって映画館を出てすぐ、近くにプラネタリウムがないか検索した。し、その足でそのまま観にいった。

映画館で観ることができて本当に良かったと思えた作品だった。


私は、今日やたらイライラするなと思ったら生理前なんてことはあるけど、藤沢さんほどでは無い。
時々どうしようもない不安に襲われることはあるけど、電車には乗れるしたまには出かけたり楽しみを見つけることもできる。

藤沢さんや山添くんのような辛さは私には想像もつかない。

ただ、種類が違っても、大きさが違っても人それぞれ苦しさを抱えているし、その苦しさは他の人には測れない。

自分がこの世で一番辛いってくらい苦しくなる夜もある。

でも、夜明け前が一番暗いって、この作品が教えてくれたから

そんな夜はあと少し、夜明けまで待ってみようと思う。


あと、自転車で走ることって心身ともに良いのかもな、なんて改めて思ったり。


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