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小さな町の食堂の話

私は小さい田舎町である国の料理店を営んでいる。長年東京の外資系企業で働き、フリーランスで様々な仕事をしていたが、コロナの時に地元にUターンした。店は金土日のみの営業。今でも他の仕事を単発で続けている。セミリタイアメント後の趣味半分として始めたので、それほど必死で働かないことにしている。借金はあるけど。

店はそれなりにお客が入っている。値段はリーズナブルな方だと思う。移住者ならもっと強気な値付けをできるのだろうが、地元出身の人間には同級生やご近所さんとの切っても切れないつながりがある。彼らが来店するどうかはわからなくても、興味を持った時に気軽に来られる程度にしておかなければならない。店の雰囲気も値段も。

今は市外と市内のお客さんが半々くらい。同級生やご近所さんも来てくれて、ちょうどいいバランス。ドレスコードはないけど、この前は料理に合わせたTシャツを着てきてくれたお客さんがいた。和服を着てきてくれる同級生もいる。田舎で他に着ていく場所も機会がないというのが理由ではあるが、わざわざ手間をかけてくれたことがうれしかった。

うちの店はファミリーテーブルがテーマ。「Eat fun.(楽しく食べる)」という隠れたメッセージもある。友人の家に招かれたような気持で食卓を囲んで、いろんな話をしながら楽しく食事をしてほしい。何を食べたか、どんな食材を使っていたか、そんなことははっきり覚えていなくていい。店を出る時に「なんだか知らない料理を食べて楽しかったね。」と言いながら帰ってもらえれば最高だ。




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