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「昔の男」とすら形容できないくらいごく数夜だけ関係をもったあのひとがくれた服は、今夜もちゃんと暖かい。4年前の早春の雨の朝以来、冬の夜にはあのひとの服に抱かれて眠り、夏の夜にはあのひとの服を抱いて眠ってきた。そうすることでしかやり過ごせなかった夜があった。花の名前を思い出すよりも、わたしを抱いたあのひとの温もりを思い出していたいから、縋れるよすががあることを嬉しいと思う。 いつだったか眠れない夜にあのひとのSNSを遡ったら、世界のあちこちでこの服を着たあのひとが笑っている写