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キス魔の恋人のこと

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そのキスの孕む熱が、わたしを繋ぎとめる。
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2019年8月の記事一覧

舐めたい背中

肌が汗より早く溶けるような盛夏だった。 たまたまお互いの休日が重なったので「出かけようよ」と誘ったら、山歩きを提案されたので朝から繰り出すことにする。 彼と時間を過ごしたことはこれまでにも何度かあったものの、複数人での飲み会で言葉を交わしたり、言葉もなくただ星を見上げたり、絶え間なく降り注ぐキスに言葉を奪われたりしてきたから、白昼素面で話題に困りはしないかしらと実はひそかに心配していた。けれど、日常のよしなしごとや幼少期の記憶、旅の行く先、仕事への向き合い方、好きなものの