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15_チョコレート嚢胞だった

手術2日後の11月2日。

病院は朝の6時から起こされる。検温と血圧測定。この日は血液検査もあった。

壮絶だった術後の嵐は去ったようだった。昨日のどこかのタイミングで、たしか深夜だった気がするが、嘔吐した記憶もある。しかし今朝は吐き気も痛みもやんでいる。でも7度台の微熱がある。脚に巻き付いていたうっとおしいポンプも取ってもらえた。うっとおしかったけど、これのおかげで血栓を防いでくれていたらしい。

手術日のレポはこちらから ↓↓↓

あと忘れてたけど、術後しばらくは酸素マスクも付けられいて、これもかなり苦しかった。これはしんどいので途中で頼んで取り外してもらったような気がするが、それがいつだったか記憶はおぼろげだ。それと、右の人差し指におそらく心拍数を計るためのクリップが指に挟まれていて、モニターがベッドの横に置いてあった。とにかく、身体じゅうに色んなものが取り付けられていたのだ。

昼すぎに、「今日の担当です」と言って、まだ20代前半と思われる頼りなさげな男の子がそっとカーテンを開けた。学生が看護師のユニフォームを着て立っているといった感じだ。そして、身体じゅうに取り付けられていたものたちを取ってくれた。

言い慣れない口調で「着替えましょうか」と言うので、おそるおそる起き上がった。「(自分の)パジャマはありますか」と聞くので、よろよろとベッドから起き上がり、備え付けのタンスから用意してきたパジャマを取り出し、ベッドに横に座るように促されたのでそうした。まだ点滴をしているので、着替えるには介助が必要だ。

問題はここからだ。手術の際にブラも何もはぎとられていたので、はだけた浴衣パジャマの下からのぞくのは私の遠慮がちなバスト・・・。

点滴が取れていないので一人で着替えができず「自分でやるから向こう向いてて」とも言えず、互いに非常にきまずい思いをした。まな板にレーズンの私のおっぱいでも、他人に、ましてや若い見知らぬ男性にただで見せるには恥ずかしすぎる。

いくらなんでも42歳の私にも、そしてまだ「研修中」のタグを胸に付けている、必死で仕事をまっとうしているだけのうら若きこの彼にも、羞恥心は大いにあるはずだ。

あまりの恥ずかしさによく覚えていないが、たしか私が浴衣パジャマを脱いで、上半身素っ裸になったタイミングで、彼が「身体を拭きましょうか」と言ってあつあつのタオルを渡してきた。「背中を拭くのを手伝いますね」とか言っている。この状況は正常なのだろうか?私はまな板にレーズンの自身のありのままの姿のまま、若い男性に背中を拭かれている。彼は背中を。我は脇の下や腕や、貧相な胸をあつあつタオルで拭いた。

思えば、さっさと自分のパジャマに着替えてから自分で拭けば良かったのかもしれないが、とにかく術後のボォッとした頭で言われるままになっていた。点滴してるから介助が必要だったし。というか、浴衣パジャマを脱いだ時点でおっぱいは見られてるのだから、今さらあがいても仕方ない。開き直るしかないって感じだ。

それだけでもじゅうぶん恥ずかしいのに、今度は彼が私の足元に座り、大きなパックを持ち上げたので「それ何ですか」と聞くと尿道カテーテルですと。たぽたぽとパックを揺らす彼に「いつ取れるんですか」と聞くと、「今から取ります」って・・・、え・・・。この人に尿道カテーテル外しまで頼まなあかんの?しかもちょっと尿の匂い漂ってるし。激烈に恥ずかしい。っていうか、あたしの尊厳どこ。

この人、てきぱきとやってくれたならまだ羞恥心も紛れるのだが、相手も戸惑っているのか、上記尿道カテーテルのくだりのごとく、こちらが促さないと動いてくれない。単純に業務に慣れていないのもあるかもしれない。これはかなりきつかった。42歳のまな板にレーズンとおしっこを見たのだから、彼も衝撃だったんだと思うけど。

おっぱい見せなきゃいけないお着換えとか、ヴァジャイナからカテーテル引っこ抜くお仕事には、昨日までてきぱきと点滴を変えたりポンプを巻き直したりゲロ袋を片付けてくれてた、ベテラン女性看護師を寄こしてよ!!!!!!

羞恥心への配慮お願い

前日は飲食禁止で丸一日何も飲み食いできず、そして今日も朝食抜きで、さすがに空腹で胃がぺったんこだ。にもかかわらず、昼からお粥食がスタートしたのに、薄味の魚とまずいおかずと薄い汁物。泣けてくる。ほとんど口を付けられずにトレイを返してしまった。食べ物にケチをつけるのは好きじゃないけれど、食べることぐらいしか楽しみのない病院生活で、食べ物が美味しくないのは正直しょげた。

術後2日目は痛みと吐き気から解放され、U-NEXTでHBOのドラマシリーズを一気見したりして過ごした。

動き回ったほうが回復が早いと聞いたので、談話室に自販機の水を買いに行ったりフロアをぐるりと回ったりした。一人でトイレにも行った。生理2日目ぐらいの量の鮮血があり、ナプキンを当てた。この出血は術後3日続いて、今これを書いている11月5日現在ほとんどなくなった。

身体にまとわりついてた色んな管が取れ、麻酔の後遺症の吐き気はもうすっかりない。これだけでかなり身軽で、健康の有難さを改めて感じた。

ところで近日、着替えやカテーテル外しの作業が発生するのに、その日の担当とはいえ、うら若い男の子を私にあてがった件で、病院に意見を書こうと思う。病院としては、ただルーティンで順番が回ってきたその子が、順番だから担当として来ただけだろう。

しかし、ただルーティンで順番が回って来ただけのこと、そこが問題だと思うのだ。たとえ今日のこの部屋の当番が彼だったとしても、着替えや身体拭き、そしてカテーテル外しといった、いってみれば患者の尊厳に関わるような作業が発生することがわかっているのだったら、その作業だけでも女性の看護師をあてがってくれるという配慮はできなかったものか?患者の羞恥心への配慮は?

人手不足で仕事が機械的になる。それは当然だ。いちいち感情をこめず、合理的に進めたほうが、早く済む。でも患者も、医療従事者も感情のある人間だ。感情のある人間どうしのやり取りだ。そこを忘れないでもらいたかった。

大げさにクレームする気は全くない。「若い男の子にまな板レーズン見られたよ。彼も見たくないってね!(笑)」の笑い話に昇華させて終わりにすることもできる。だけど、人と人のやり取りに、配慮がなくなったなら、仕事はロボットでいい。いや、ロボットがいい。

そういえば最初の病院で男性の医師に超音波検査をしてもらってるときに、医師と私を隔てているカーテンを急にシャッと開けられて医師の顔先に股を開く形になったのも相当恥ずかしかったな。

どうしても文句ばかり書いてしまう。ネガティブな点ばかり目についてしまうのは悪い癖かも。看護師さんがおおむね明るくて気さくでいてくれて、どれだけ助かったか。めちゃくちゃ忙しい中、明るく雑談してくださったことで、どれだけ不安が小さくなったか。申し訳ないと思いながら廊下を急ぐ看護師さんに声をかけてちょっとしたことを聞いても、足を止めて親身に聞いてくれた。

念のために書いておくけど、さっきの「研修中」a.k.a 私のまな板にレーズンを目撃したうら若き男性も、むしろゴメンねっていう思いだ。あんなもん見せて。彼は担当で来ただけだから、当たり前だけど一切何も悪くないし、彼もまだ経験が浅いだろうから40代女性の裸にしどろもどろだったろうけれど(そうかな?しらんけど)、場数をこなして女の裸になんの感情もなく淡々と業務をこなせる日が来る日も近いだろう(っていうか、やっぱり異性に裸見られるの強い抵抗ある人いるだろうから、その配慮は病院として検討して欲しい)。

そんなこんなな術後2日目でやんした。そろそろ終わるよ!

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