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葛の花


足元ばかり見ていたら
路面にこぼれる花を見つけた

見上げれば
空まで届けと樹を登る
葛の花と実りつつあるさや
鮮やかな色に立ち止まる

晴れ間に鳴く油蝉
ミンミン蝉の声は無い

「ミンミンは暑い時にしか鳴かねだよ」

頭の中に響く声は父
子供の頃に聞いた言葉

信濃の夏は濃密で
束の間で

遠ざかるいつかの夏
茶の間の一時が甦る

夏と秋の狭間にひとり
あの楽園の東に立つ


よろしくお願いいたします。