見出し画像

物書きの原点小説を推敲してみた

今回は、人生で初めて書いた小説に推敲という名のツッコミを入れていくという話。

あまりにも酷過ぎて、逆にこれは文章を書く上での教材として優秀なのではないか?と。いや、今も下手なのだけれど。

今回推敲するのは、小学5年生の時に書いた人生初めての小説。字が下手くそでお恥ずかしい。タイトルから始まり、文体から構成から、何もかも突っ込みどころ満載で、でも、まだ11才なのに頑張って書いたなと幼い自分を褒めてみる。

当時はインターネットもなかったので、国語辞典を片手に書いた記憶がある(それでも誤字だらけ)挿絵は誰に描いてもらったか覚えていないけれど、多分クラスメイト。

転校生大パニック

『転校生大パニック』あらすじ

ある町の小学校に、白川由美という名の少女が転校してきた。その少女は、身長が127センチと小柄で大人しそうな印象だったが、ソフトボール部に所属して周りを驚かせた。しかも、守備もバッティングも完璧と言える実力で、部のエースだったかおりからその座を奪い取る。

由美の父は、町内の野球チームのコーチをしており、由美はもっと幼い頃から父に野球を教わっていたのだった。

ある日、広場で自主練をしていた由美は、知らない少年から話しかけられた。少年は練習の相手をしてやるといい、由美は訝し気に思いながらも、少年の言われるままに一緒に練習をしてみた。1人でする自主練より楽しかったが、少年は頑なに名を名乗らなかった。謎の少年との楽しい練習はしばらく続いた。

そんな中、ソフトボール部では、他の学校との対抗戦が近づいていた。由美は練習に励んでいたが、例の少年は広場に来なくなった。由美は少年の事が気になったが、1人で練習に打ち込む事で気を紛らわしていた。

とうとう大会の日になった。由美の学校の対戦相手は、優勝常連の強豪校であり、まだ一回も勝った事がなかった。そして、試合が始まり、相手チームが先攻だった。最初のバッターを見て由美は驚いた。しばらく一緒に広場で練習していた謎の少年だったからである。動揺のあまり、エラーを連発した。しかし、観客の応援で我に返り、由美は気持ちを持ち直して、自らの活躍でチームを勝利へと導いた。

あらすじから、既にツッコミどころしかない……。

更に要約すると、小柄で大人しそうな由美が周りのイメージを良い意味で裏切って、ソフトボール部で大活躍(今風に言えば無双)するって話なんだけれど。超ド級の運動音痴な私が初めて書いた小説が、何故この題材なのか覚えていない。

各設定推敲

タイトル『転校生大パニック』

一見大人しそうな転校生(主人公)がソフトボール部で大活躍した事で、周りがパニックに陥ったという事が言いたかったんだとは思う。しかし、何もパニックらしきものは起きていない。今付けるとしたらなんだろう?と考えてみたが、思いつかなかった……。

キャラクター

主人公、由美は小柄で大人しくて、活発なイメージが全くないのに、ソフトボール部に入った後は、水を得た魚のように大活躍する。主人公にギャップがあるのは、魅せ方としてはありがちではあるが、まあいいと思う。途中で出てくる謎の少年の役割が由美の恋の相手なのか、ソフトボールでのライバルなのかハッキリせずに終わる。名前を頑なに出さなくて謎のままにした事が設定として活きなかった。チーム内でのライバルである元エースのかおりの出番も作れなかった。

構成

由美が転校してくる→大人しそうな由美がソフトボール部で大活躍→かおりがエースから降ろされる→謎の少年が現れて一緒に練習→他校対抗戦で謎の少年と対戦相手として再会→由美が動揺してエラーを連発→気を持ち直した由美がチームを勝利へと導く

かおりがエースから降ろされる
それまでチームのエースだったかおりは、由美の登場によりエースから引きずり降ろされる。原文を読みやすいように修正して記してみる。

「今までこんな上手い子みたことない。これからはかおりさんに代わって先頭に立ってもらおう」
コーチはそう告げたが、エースを奪われたかおりは黙っている訳にはいかない。しかし、由美や他の人の説得で何とか収まった。

たった一文で収まっていい場面ではない。

急に現れた主人公にあっさりエースを奪われたかおりの嫉妬、怒り。それを由美や周りの部員達がどう収めていくのか。これは丸々1章分くらいは使って表現しなくてはダメだ。そもそも、嫉妬の対象である由美がエースを辞退するならともかく、直接説得したところでマウントであり、火に油を注ぐ。「私の方がエースに相応しいから」なんて説得する主人公は嫌過ぎる。11才だから、そこまで考えが及ばなかったのか。

どうしてこんなあっさりとした展開にしたかは実は覚えている。私は昔から喧嘩とか嫉妬とかドロドロとした展開が嫌いだから。昼ドラとか苦手。だから、書きたくなかった。だが、小説としては大事な場面となりうる部分を省略するのはいただけない。

気を持ち直した由美がチームを勝利へと導く
由美が動揺した理由が分かりづらいし、ラストなのにあっさり気を持ち直しすぎ。一緒に楽しく練習していた少年に淡い恋心があったのか、なかったのか。何故、敢えて名乗らない少年を出したのか。小学生の淡い恋を軸にしたかったのか、あくまでも少年をソフトボールのライバルとしてスポ根を書きたかったのかハッキリしない。

文体・誤字推敲

原文でおかしい所を、ほんの一部だけピックアップして直していく(膨大な量あるので)

第一部(恐らく第一章の誤り)内から。

あまりにせが低くて小さいものだから、つい先生が
この子はほんとうに四年生ですか?」
とふしぎそうに聞きました。
でもすぐにその言葉きずくような言葉と気が付くと、
「ごめんなさい。この言葉気付いた?」
と心配してあやまった。
「いいんです。この言葉は何回も聞かされてなれていますから
となれた声でいいました。

この子は ー 先生が由美に尋ねるのに「この子」と言うのはおかしい。
言葉 ー 
一文で言葉が二回入っている。直すとすれば、(でも、すぐに傷付くような言葉だと気が付くと)
きずく・気付いた ー 
「傷付く」「傷付いた」が正解。
。」 ー 
かぎかっこ内の文末の句点は省略する。
聞きました・いいました ー 
敬体になっている(常体と敬体は混合してはならない)

そもそも、文ーセリフー文とセリフが一文の間に挟まるのはおかしい。子供の頃は何も知らずに、しばらくこの文体で書いていた。ちなみに単純にひらがなから漢字に直すのは省略している。

次は、ラストに向かう一文。

最初のバッターは男の子はどうやらエースらしい。みんなからすごい歓声をあげている。由美はふっと見ているとな、なんと、前はなしかけていっしょに練習していた名前の知らない男の子ではないですか。由美はもう、気絶しそうな気ぶんでした。それからは、由美はもうあぜんとしてエラーばかりしました。

最初のバッターは男の子はどうやらエースらしい。ー 直すとすれば(最初のバッターは男の子だった。どうやらエースらしい)男女混合チームという事で男の子だという事を伝えたかったのか。出てきたのが謎の少年だから男の子だと強調したかったのか。どちらにしろ、分かりづらい文章である。
みんなからすごい歓声をあげている ー 
直すとすれば(みんながすごい歓声をあげている。もしくはみんなから凄い歓声を浴びている。だろうか)
ふっと見ていると ー 「ふと」の間違い。だが、そもそも由美はどの位置で守備をして、彼が見えたのだろうか。外野ならとても顔など見えないはず。少なくとも「ふと」見る状況ではない。
気ぶんでした ー 上記の例と同じ敬体。
な、なんと ー 言うまでもなく、完全に口語。
もう ー 由美の驚いた様子を表したいのは伝わってくるが、連続して書くのはあまりにも稚拙。

終わりに

何十年も前に書いた小説が、初々しくて泣けてきた。文学少女だった小学生時代に、小説に憧れて書いたのをふんわり覚えている。何もかもが間違いだらけの小説だが、何千文字の小説を手書きで執筆するのは大変だったと思う。今は手書きでなんて言われても無理だ。それだけ物書きに対して情熱があったのだろう。久々に物書きの原点を見て、初心を思い出した。

最後まで読んで頂き、ありがとうございました。

※最初、タイトル及び文中に『添削』と付けましたが、『添削』は他人の文章に対して行う事で、自分の文章を直すのは『推敲』なので、修正しました。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?