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【創作大賞2024 恋愛小説部門】#7 サカモトリョウマは4度未来に呼ばれるEpilogue

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☆Epilogue☆


    2034年に無事に戻ってきた。

 ふと、机に置き去りにしていたスマホを見ると、見知った番号からの着信があり、追ってメッセージアプリに伝言が残してあった。

 それは1ヶ月前、NEに呼ばれた次の日だった。すれ違いだったのか……。

 タイムスリップ後のダウンタイムで身体が異常にダルかったが、そんな事もおかまいなしに僕はアパートを出て走っていた。

 もちろん、向かった先は蒼衣のアパートだった。途中、何度も人にぶつかってよろけそうになったが彼女に会うまでは倒れる訳にはいかない。

「涼真君……」

 既に連絡してあったので、蒼衣はアパートの前で待っていてくれた。僕は蒼衣を抱き寄せて、力の限り抱きしめた。幸い、夜だったから周りに人の気配はなかったけれど、多分、昼間でもこうしていただろう。

「痛い、痛いってば……」

 蒼衣が呆れたように笑いながら言ったので、僕は少し力を緩めた。

「僕は5年振りなんだからな!」

 正確にいえば、22才の蒼衣とはついさっきまで一緒にいたけれど。本当に頭がこんがらがる。蒼衣は僕の髪を優しく撫でながら宥めていた。

「分かった、分かったわよ。募る話が有りすぎるけど、ひとまず中に入ってコーヒーでも飲みましょう」

 彼女の提案に僕はもちろん頷いた。


 彼女の部屋に入るのは何度目だろうか。いつも僕のアパートの方に来てくれるので、そんなに訪れた事はない。

 大企業に勤める優秀な彼女には似つかわしくない2DKの普通のアパートだった。蒼衣は贅沢よりも利便性とか住みやすさを重視していたので、このアパートを選んだと聞いていた。

 小ざっぱりとしたリビングルームのソファーに座って、僕は蒼衣が入れたコーヒーを久々に飲んだ。僕の好みそのままで泣けてきた。

 そのまま2人でソファーで身を寄せ合ってコーヒーを飲んで落ち着いたら、どちらからともなく、堰を切ったように話し始めた。

 お母さんにはきちんと会って謝った事、5年間失踪していたので、当然ながら勤めていた会社は解雇になっていたから絶賛就活中とのこと……。

    実を言うと僕の方も1ヶ月無断欠勤したから、解雇になると思う。もちろんNEで彼女の病気を治す事の方が大事だから、全然後悔はないのだけれど。

 あとは、もちろん僕達のタイムスリップに関するすれ違いの話を。

 そもそも時間軸もややこしいし、訳が分からなくなって話を度々中断して整理しながら話した。

「ふぅ……」

 1時間くらいぶっ通しで話し続けてさすがに疲れたので僕は息をついた。話を一旦やめようと思ったが、どうしても聞いておきたい事を聞いておいた。

「そういえば、司令はどうして22才の君ではなく、27才の君をNEに呼び寄せたんだ?」

 蒼衣は、少し首を捻っていたがすぐに思い出して話してくれた。

「何でも私の生体データで検証したら、27才の時の私の能力が一番優れていたんですって。いわゆるピークって感じかしら」

「へぇぇ……」

 思ったよりも単純な理由だった。でも、合理的で未来っぽいなと変に感心してしまった。蒼衣がそんな僕の様子を微笑みながら見ていたが、ふと思い出したようにリビングから出て、他の部屋に行ったのか、直ぐに戻ってきた。

 蒼衣は僕の左手をそっと掴んで、薬指に……。

「これは……」

 僕がNEで渡した指輪と全く同じデザインのダイヤモンドの指輪だった。

「あのジュエリーボックスでシルバーブレスレットを買ったお店と同じってすぐに分かったから。どうしても同じデザインが欲しくて……」

「そうか、嬉しいよ。ありがとう……」
 
 僕はふと思い出して姿勢を正した。

「蒼衣……あの時はちゃんと言えなくてごめん。改めて、こんな僕で良かったら結婚して下さい」

 深々と頭を下げると、蒼衣も僕と同じように姿勢を正して深々と頭を下げていた。

「もちろん、こんな私でも良かったらお受けします」

 でもその前に、お互いの就活だねと笑い合った。

『近い将来、可愛い嫁を見つけて子供を作る。そして、無理かもしれないがタワマンかなんかに優雅に住んで幸せな生活を送るんだ』

 僕はNEに最初に呼び寄せられる直前に高らかに叫んだあの夢を思い出して、あまりに幼くて浅い夢に恥ずかしくなって苦笑いしてしまった。

 タワマン? 優雅? そんなのどうでもいい。こうして、お互いが大切に思える人と共に支え合って生きていく事が、僕にとっての一番の幸せなんだ。

 蒼衣の幸せそうに微笑む顔を見て、僕は回りまわってやっと本当の幸せを掴んだ事を実感していた……。

 <了>

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