見出し画像

『コーヒー』のはなし

『アイスクリームが売れると水難事故が増える』という話を聞いたことはあるだろうか。これは統計を学ぶとき、よく出てくる例え話だ。この話は実際、正しくない。

アイスクリームは暑い夏によく売れる。そして、水難事故が増えてしまうのも人々が水辺にでかける暑い夏に多い。

結局は『夏の暑さ』がこの2つの減少の原因なのだけれど、アイスクリームの売れゆきと水難事故の多さだけに注目してしまうと、片方が増えると片方がそれにつられて増えているように錯覚されてしまうのだ。

この錯覚は統計の世界で『擬似相関』と呼ばれる。擬似相関は真実を濁してしまうためとても厄介で、統計学を利用する人は『何が原因で、何が結果なのか』をつねに気をつけなければならない。


さて、小難しい話はいったんこれくらいにしておこう。話は変わるが、最近仕事中に眠くなることがよくある。睡魔に襲われたとき、どうやって眠気を覚ますのがいいだろうか。ストレッチをする?それともおとなしく、仮眠を取る?

こうした眠気覚ましの方法でいつも世間の上位に入るのが『コーヒーを飲む』だ。コーヒーに含まれるカフェインには覚醒効果があると科学的見地からも裏付けされてるようだし、納得の方法だ。

ただ困ったことに、僕に眠気覚ましのコーヒーが効いたためしがほとんどない。それどころか、むしろいつもコーヒーを飲むと眠くなるのだ。いつもそれを不思議に思っていたのだが、ここでひとつの仮説を紹介したい。

僕は仕事中、しょっちゅうコーヒーを飲む。しかしコーヒー自体がそこまで好きなわけではなく、眠気覚ましの手段として飲むことがほとんどだ。

そう、僕がコーヒーを飲むときはだいたい眠気も感じている。すると僕の身体は無意識的に『眠気を感じている状態』と『コーヒーの味を感じている状態』が同時発生しがちなことを学習してしまう。その結果、コーヒーの味を感じると同時に身体が「以前の記憶からすると…こいつはいま眠気を感じているに違いない」と思い出し、勘違いをしてしまうのではないか?


いやいや、この仮説も冷静に考えると、おかしい。たとえば僕はお腹がすいてるからご飯を食べるのであって、ご飯を食べるからお腹がすくわけではない。同じように、眠いからコーヒーを飲んでいることが、コーヒーを飲んだら眠くなる理由にはならないはずだ。

それに僕は食後にコーヒーを飲む事も多い。もしもこの仮説が正しいなら、僕はコーヒーを飲むと満腹感を感じられるはずだが、そんなことはない。むしろ胃がスッキリする。

結局、この仮説も原因と結果を取りちがえてしまっているのだ。だが実際、僕がコーヒーを飲むと眠くなるのも、また事実。どうやら僕の頭は原因と結果の違いについてわかっているはずなのだが、僕の身体はまだ統計学を充分に理解していない様子。

おいおい、原因と結果が逆になっているよ、と、きっと明日もコーヒーの染みた身体に教えてあげなければならないだろうな。がんばれ僕の頭。

以下は蛇足。ネットでかるく調べてみると、コーヒーを飲みすぎると脱水状態になったり、身体のエネルギー源が減少するため疲れやすくなって眠気が増す人もいるらしい。

真偽は知らないが、仮にそうだとそうするとコーヒーには覚醒効果と入眠効果が共存しているということか?そうすると、覚醒効果を得るには飲んだり食べたりした後にコーヒーを飲まないとダメってこと?でもそうすると、今度は血糖値の上昇で眠くなりそうだし…

う〜ん、むずかしい。頭が混乱してきたので、さっさとコーヒーでも飲んで寝ることにしよう。

show your real emotion