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第一線では戦わない。「編集スキルありの主婦」がつかんだ、意外なポジション

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こんにちは。
新卒22歳から山あり谷あり、編集/添削業に携わって、早18年。
編集者の若橋未央と申します。

★前回まで、編集者としての新人時代中堅時代、振り返った記事を公開しています。

今回は、キャリア方向転換の話。

私は、30代、妊娠出産をはじめとしたライフステージの荒波もあり…、編集としては、第一線から完全にドロップアウトしてしまいました。

しかし、編集というスキルが、あとから思わぬ形で生きはじめ…私自身もびっくりしています。

「編集やライターの仕事って、疲弊して行き詰るよね…」とお悩みの方に、「こんな人もいるのか!」という一例になれば、嬉しいです。

本記事は、大手Webメディア編集長を務めるまむしさんと、わたし若橋未央が、過去にX(旧Twitter)スペースで対談した内容です。その後、まむしさんが、ニュースレター「みんなの編集会議」2024.4.1版でまとめてくださったものを、転載しております。

ひとり編集部ポジションのもがき

ま)みおさんは、今の会社になぜ転職されたんですか。

み)転職ではなく、再就職ですね。新卒で12年ほど在籍した会社は諸事情で退社することになりまして。

退職後は主婦として2人の子どもを子育てしながら、複数社から細々と答案の採点添削を請け負っていました。
この発注元の1つが、今の勤め先です。

あるとき、その発注元に欠員が出てまわらなくなり、「契約社員になってもらえないか」というお誘いを受けまして。
その時にたまたま家の近所に保育園ができて、子どもの預け先にめども立ったことから、再就職を果たしました。

ま)仕事内容は業務委託時代とどう変わったんですか?

み)基本的には業務委託時代にやっていた業務の量を増やす契約でした…が、入社してみたら、社内に色々な編集ニーズがあることに気づいたんです。

社内チャットやメールのやりとりを横で見ながら、「そのドキュメント、こうしたらどうですか」とおせっかいな改善案を出し続けていたら、「とりあえず、文章関係のことは若橋さんに聞くと素早くイイ感じに片付く」といろんなお願いをされるようになりました。

今では社内向けのマニュアルをつくったり、謝罪メールのような、ここぞというときの文章校正を頼まれたり―――営業パンフレットとかの編集・校正もやるようになっていますね。
社内に編集的なポジションの人は私だけなので、いわゆる「ひとり編集部」というんでしょうか。

ま)ひとり編集部、大変ですよね。

み)つらさもありますけど、明らかに重宝されるので、ありがたいですけどね。「私から言わない限り、くびを切られることはなさそうで、良かった」という感じ笑。

そうそう。Xだとよく、「編集・ライティングスキルに、何かをかけ合わせて強みにしよう」みたいな考え方がありますよね。
編集スキルを持ったうえで、第二のスキルとして別業界の資格や、専門知識を持つとか。

でも、第一線の編集じゃない立場の私からすると、編集こそ、掛け合わせる第二のスキルに位置付けるといいな、と思うんですよね。

ま)第二のスキル、としての編集…というのは。

み)企業には、「編集者」という名目では募集されていなくても、編集要素をはらんだ仕事がたくさんあって、編集者にできることが意外にあるんですよね。

事務や経理、広報として入ったうえで、「実は編集のスキルもあります」となると重宝されるんです。
そういう職場だと、編集のスキルを持っていることは採用の決め手にはならないんですけど、「いなくなったら困るから、くびにしない決め手にはなるだろう」と強く思っていて。

ま)めちゃ面白い。ちなみに今お話になっている「編集」って、具体的にどういう役割のことを指していますか。

み)文章などのクリエイティブが、一目見て、届けるべき人に分かりやすく・要件を伝えられるものになっているかどうかをさっと掴んで、直して返せること、でしょうか。

編集やライティングを学んでいる人からすれば、何らかの文章を読んだとき、
「これは誰に届けたいんですか?」
「読んだ後どうなっていて欲しいんですか?」
「誤解されたくないポイントは何ですか?」
みたいな視点って自然に湧き上がると思うのですが、そういうスキルって意外と重宝されるんですよね。

Xで、ライティングや編集業界のすごい人をフォローしまくっていると、みんなキラキラしたすごい人に見えて「自分のスキル、レベル低いな…」とつらくなるんですけど、「編集、ライティング業界じゃない場」に行くと、自分の編集や執筆のスキルは重宝される―――というか、珍しいものとして扱われる。

ま)そういう側面は忘れちゃいけないなと思わされますね。
一方で何でしょう。みおさんの場合、同僚の方々がみおさんの能力を尊敬している感じがとてもいいですね。

み)相談の一つ一つに対して打ち返していった結果「え、こんなにスムーズに分かりやすくしてくれるの」という実感を持ってくれたのが大きかったかもしれません。
声高に「この会社には編集者が必要です」「もっと自分を認めてください」みたいなことを訴えても誰もピンとこないし、それだけで採用枠やお金を用意する人・団体はめったにいないと思います。

ま)僕も一時期、ひとり編集部状態だったことがあるんです。
入社したのは良いけど、「社内にポツン」みたいな感じで。周囲からすると、「あの人何?」「何ができるの?」みたいにふわふわした存在でした。

最初は仕事をつくりだすのにも苦労したし、この仕事の価値をどう社内で認知してもらうかも、すごく腐心したんです。
「文章なんて誰も書けるでしょ」みたいに思われることも苦しかったんですけど、その辺り、自然と社内でポジションを獲得できているのはすごいなと思いました。周囲から相談されやすい、みおさんの人柄もありそうですね。

編集者の働き方は、もっと自由でいいのかも

ま)ちなみに今みおさんって、宮崎にお住まいなんですよね?会社は東京…?

み)そうなんです。会社は東京方面なので、フルリモートワークです。
このワークスタイルが認めてもらえたというのも、一つ、編集スキルの価値を認めてもらえた証なのかもしれないですね。
東京から離れて宮崎に移住したいと言っても許されたし、待遇キープできたし。

ま)みおさんのお話を聞いていると、編集の仕事の良いところをすごく活用されている気がするんですよね。
リモートワークしているとか、編集のスキルをコンテンツ制作以外の仕事でも生かして居場所をつくるとか。
手堅く本業をしながら副業でチャレンジする、とか。良い感じにこの職業をやっている感じがしますね。

み)ありがとうございます。
でも、これが良いなと思えるようになったのも、この1年くらいなんです。

教材編集者として働いていた1社目を辞めて、主婦になって。もう再就職は無理なんじゃないかなあと思っていたので。
再就職してフルリモートの本業を得られた時点ですでに感謝でいっぱい。

さらに、移住・家づくりを機にSNSを始めたのが発展して、こんな形で副業をしたり、kindle出版ができるなんて…、1年前まではつゆほども思っていなかったですもん。

ま)みおさんの場合、自分でチャンスを手繰り寄せて今のライフスタイルを構築したのがすごいなと思います。
編集者の働き方って今、きっと再定義できるんだろうなと考えさせられました。

み)失敗も色々ありましたけどね。。。

特に30-40歳近いと、編集業をやるとしても管理職とか、どこかの媒体の編集長にならなきゃみたいな気持ちになって、ゲラの山に囲まれるような毎日、終電、時には徹夜な日々を思い浮かべる人も多いと思うんですよね。

それだとどう考えても私生活との両立ができないという人もいるでしょうし、実際に退職して編集の仕事を離れる人も見てきました。
私もその1人です。

私の生存戦略…というと大げさなんですけど、「編集の現場の第一線は避けよう」というのが自分なりの考えなんです。
編集やライターってすごい方がたくさんいて、書店に行けば、文章術だけで1コーナーが埋め尽くされるくらい書籍があるじゃないですか。

そんな激しい市場から、編集者を比較検討して採用しているような職場に、わたしはマッチしないと思うんですよね。
子ども達もいて、独身時代のような働き方もできないですし。

個人や小さな団体で事業をされていて、SNSでご縁があって、お手伝いをしてみたら「次もお願いします」と言われる位の立ち位置が、私としてはちょうどいい。
クラウドソーシングで下手に市場に並べられちゃうと、逆に厳しいだろうなって。

ま)いや、そこに気づけるのが凄いですよね。
ポジショニングを言語化できてアクションできるというのか。

み)自分にとっておいしい場所を探すのって、楽しいですよね。

ま)「戦略」って要するに「戦いを略す」と書きますけど、戦わない場所を決めるというのが実はすごく大事ですよね。

全部において勝とうとするのではなくって、頑張りどころ、戦うフィールドを考えて、トータルでバランスを取っていく。
そういう姿勢って、本当に大事だよなと思います。


~編集後記/私の生存戦略2024~

X(旧Twitter)スペースで、まむしさんと私がこの対談をしたのは、2023年、9月25日。
なんと、2100人以上の方が聴いてくださって…今でも、わたしのスペース内では断トツの記録です。

今聴き返しても、我ながら、まむしさんの胸を借りて、のびのびと楽しく、めっちゃ良い話してたなと思いますw

「お2人ともノッてて楽しかった」「あっという間だった!」と、
感想もたくさんいただきました。

まむしさんのニュースレターとして3~4月に配信されたときも、多くの反響をいただいています。

その後、私はさらに、副業としての活動時間を、第一スキル「家づくりアカウントとしての発信」に割くようになりました。
インスタグラムも始めたり。
(文字畑出身なので、インスタ、なかなか大変なんですけど…苦笑)

すると。
不思議なものです、住宅分野の実力派!発信者の方から、「実用的な家づくりがわかっている若橋さんに、編集としてコンテンツ作りを手伝ってもらいたい」というお声がけをいただき、
案件に発展しているではありませんかー!
(今、始動したところです)

「編集業界」で「住宅分野」に精通しているフリー編集者を探そうとしたら、超優秀な方がゴマンといます。

でも、SNSの「家づくり界隈」で、自邸の家づくりを発信している当事者の中に、「編集者」はそう多くはいません。
(※しかも、家づくりって、基本的には一生に一度しかなく、法律や流行りも変わっていくので、情報鮮度がある直近1~2年で建てた人…に絞ると、もっと少ない)

自分がハマってしまった「家づくりの発信」に、第2のスキルとして編集を掛け合わせ、自分が入り込める少数の案件を指名で受ける。

これが私の、第一線では戦わない、編集者の生存戦略・2024版、と言えるかもしれませんね。

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★この記事を書いた人★
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 ・みお(若橋未央)
 ・「将来貸す」前提の一戸建を宮崎に建て家族で移住
 ・編集/添削歴18年
 ・noteは月に1〜数本
 ・最近は自邸紹介のインスタに力いれてます♪週2程度更新

▼若橋家の家づくりとお金について振り返ったKindle本、amazonで好評発売中です。


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