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読書記録#001:『売上の地図』( 著者:池田紀行)

このGWに少しでもマーケティングの学習に関わることを・・・と思い、読みかけのまま進んでいなかったマーケティング本を読了しました。今回は、読書記録として、特に学びになったポイントをまとめています。

■noteの目的

この後の本文でも記載していますが、私は、デジタルマーケティング・ソーシャルマーケティング支援会社である株式会社トライバルメディアハウスの社長:池田紀行さんが主催しているマーケティング学習サービス『MARPS』の一員であり、自分の仕事(事業会社のマーケター)のスキルアップのためにマーケティングを学んでいます。池田さんがITmediaで持っている連載「マーケティングの学び方」の中で、効果的な学習法としてマーケティング関連の書籍を読み(インプット)、それを読んで考えたことをまとめnoteに投稿する(アウトプット)という方法を推奨していました。そのお勧めに従って、今回以降、自分が読んで勉強し考えたことを読書記録としてこのnoteにまとめていきたいと思います。今回はその第一弾です!(挫折しないことを祈る・・・)

★MARPSに興味がある方はこちら
★池田さんマーケティングの学び方の連載はこちら

■今回読んだ本

●本の紹介:『売上の地図』

今回読んだのは、2022年6月に出版された『売上の地図』です!
・書籍名:『売上の地図』
・著者名:池田紀行(株式会社トライバルメディアハウス社長)
・出版社:日経BP

●この本を手に取ったきっかけ

私は現在、事業会社のマーケティング部で働いています。年次としてはミドサー中堅どころではありますが、これまでのキャリアがマーケティングの支援会社側であったり、ポジションとしても営業職に近かったりと、「事業会社のマーケター」としてはまだまだ経験と知見が浅いと感じていました。そんななかで、もっとマーケティングを体系的に学びたいと考え、この本の著者であるトライバルメディアハウス社長の池田紀行さんが主催する無料のマーケティング学習塾『MARPS』の会員になりました。MARPSでは、定期的に池田さんのウェビナーを受講したり、池田さんと各界の敏腕マーケターの方々の対談などを聴いたり、同じMARPS会員の方と交流をもつことができます。実は、この『売上の地図』もMARPSのウェビナー授業の教材となっており、ウェビナー動画形式で学んでいたのですが、仕事や家庭の都合でなかなかウェビナーのリアル参加が難しくアーカイブ動画もため込んでしまいがちだったため、「ええい、本でまとめて読んだ方が早いわ!」ということで書籍購入した次第です。

●ひと言でいうとどんな本か?

この本の内容を一言でいうと、


マーケティングを「お客様に(商品・サービスを)買っていただくこと」と定義したときに、その目的である「売上」と、売上に影響する様々な「要因」を、合計20の変数に分解、その関係性をまとめた一冊


となります。百聞は一見にしかず、それぞれの変数が以下のように図解化されており、何をどうすることが売上や売上に至るプロセスにどのような影響を与えるか、自身がいま実行している施策が売上までの過程のどの部分における施策か、パッとイメージしやすい内容になっています。いちマーケティング担当者として、目の前の施策にいっぱいいっぱいになりがち、俯瞰して自分のやっていることが本当に売上に貢献しているのか分からない、と悩んでいる方には一読をおすすめします!


日経クロストレンド記事:『「売上の地図」を構成する20要素とは? 売上の見方が変わる』より


■特に学びになったポイント

今回は、特に学びになったポイントとして以下の3点について整理し、考えたことをまとめていきたいと思います。

●学びポイント①:第3の地図 売上と想起-メンタルアベイラビリティーと第一想起の重要性-

「なぜ第一想起が重要か?」

この章は、お客様にサービスを買っていただくために重要な要素を、

(1)フィジカルアベイラビリティー(物理的にサービスが入手可能な状態であること、在庫切れなどがなく店舗などの販路が確保できている状態)

(2)メンタルアベイラビリティー(購入検討時に、自社のサービスを候補として想起してもらえる状態であること)

の2つに分け、後者の重要性について解説しています。なぜメンタルアベイラビリティー、その中でも一番に想起してもらえる第一想起を獲得することが重要なのか、それは、第一想起を獲得することで、他社と比較検討されることを回避し、一番優位な状態でサービス購入してもらうことが出来るからです。多くの競合サービスがある中で、近々の技術発展によりサービスごとの機能的な価値は均質化しています。各サービスはコモディティ化するため価格競争に陥りがちですが、第一想起を獲得して他のサービスに目移りすることなく自社の商品のみを検討(検索)してもらい、購入に至る、それが理想的な購入フローです。

池田紀行さんのnote「これからは「一番最初に思い出してもらえる第一想起ブランド」しか生き残れない」より転載。第一想起を獲得するまでのステップ(↑)まずは入手可能な状態=フィジカルアベイラビリティーが担保されていることが前提で、「認知」を獲得し知名集合に、「商品理解(商品をよく知ってもらう)」を促し処理集合に、そのうえで数多ある同カテゴリのサービスの中から「想起」される想起集合:EvokedSetに入り、第一想起(Top of MindAwareness)を獲得する。この枠組自体は、ある製品カテゴリーに含まれるブランド群を、消費者の認知状態などにより下位の集合群へと分類する「ブランドカテゴライゼーション」という考え方に基づく。

どのように第一想起を獲得するか?

第一想起の重要性がわかったところで、ではどのように顧客に想起される状態にもっていくか?という課題が発生します。さらに、バイロン・シャープにより紹介された有名な法則:『ダブル・ジョパティの法則』(マーケットシェアの大きいブランドほど、多くの顧客を獲得し、獲得した顧客のロイヤリティが高くなる)に基づくと、基本的にはトップブランドが一番想起されやすい状態のはずです。このような状態の中で、いかにして(おそらく投下できるマーケティング予算も限られているはずの)2位以下のブランドが想起を獲得していくことが出来るのか?池田氏は、既存顧客によるTMOTをソーシャルメディア上で増産することにより、新規顧客がZMOTに触れる機会を増やす戦略が重要と説いています。

池田紀行さんのnote「消費者は4回評価する。だからファンが大切。だから刹那的なインフルエンサー起用は意味が薄いというお話。」から転載。ZMOT(ジーモット)・FMOT(エフモット)・SMOT(シーモット)・TMOT(ティ―モット)は、2004年にP&Gが規定した購入前後における消費者の商品評価の概念を、2011年にGoogleが上書きしたもの。顧客は商品購入前に、他社のレビューやコメントなどにより商品を評価(ZMOT)し、購入時に店頭で商品を評価し(FMOT)、購入後の1回目の使用で使用体験を伴った商品評価を行い(SMOT)、商品を継続的に使用する中でそのブランドに対する評価を行う(TMOT)。これらの各段階の商品レビューやコメントがソーシャルメディアや各種レビューサイトなどで共有され、新規顧客の想起を高めることや購入検討時の判断材料になる。

ほかにも想起を高める方法について、フリークエンシーの重要性など具体的に説かれておりますので、ぜひ本書をご覧ください!

●学びポイント②:第4の地図 売上と好意-好意はお金で買えない、興味は持ってもらない-

2つ目の学びポイントは、前述した「想起」を獲得するまでのプロセスとして、以下2点を意識しておくことが重要である、という点です。

想起を獲得するまでに・・・

(1)商品を知ってもらい【認知獲得】→商品に興味を持ってもらい【興味喚起】→商品に好意をもってもらい【好意=エンゲージアップ】→好意をもった状態で購入検討時に(一番に)想起される【第一想起】必要がある

(2)好意はお金で買えず(⇔”認知”はマス広告への投下など一定の予算を投下することで獲得できる)、興味をもってもらうことは一番難しい

では、どのようにして消費者に自社のサービスに興味を持ってもらえばいいのか?池田氏は、PR施策により商品を”世の中ゴト”にし、ソーシャルメディアの活用で商品を”仲間ゴト”にすることで、商品が初めてその消費者にとって”自分ゴト”になる、と解説しています。

■世の中ゴト・・・日本中(世界中)の誰もがみんなそのテーマに関心を持っている状態。TVや巨大ネットメディアなどを通じて情報に触れることが多い。

■仲間ゴト・・・自分が属する特定のコミュニティの中で関心を持たれているテーマ、状態。TwitterやFacebook、InstagramなどSNS上のつながりの中で情報に触れることが多い。

自社のサービス、サービスに関連するテーマが世の中ゴト(最近、世間で話題だな・・・)仲間ゴト(仲間内でも流行っているぞ)になって初めて、それが自分に関係のあること=自分ゴトになるのです。

●学びポイント③ 第20の地図:売上と効果測定-現場担当者を悩ませる「それでいくら儲かるの?」の弊害-

最後に学びになったポイントとして「KGIを売上にしてはならない」という点をあげます。
マーケティングの現場で活動していると、あらゆる施策のKGIないしKPIに『この施策によって売上●●円』(ROIやROAS●%)を掲げているものが多いことに気づくのではないでしょうか。特に、事業フェーズとて顕在顧客の獲得施策、ダイレクトマーケティングや運用広告に力を入れている企業では、よく見るKGIかと思います。「で、その施策で結局いくら儲かるの?」が示されていないと、そもそも施策実行の判断が下りないということも多々あるのでは・・・。必然的に現場担当者の思考も常に、「この施策でいくら儲かるのか?」という発想に陥りがちです。

しかし、仮にその施策で先に掲げたKGI通りの売上があがったとして、あるいはKGI未達に終わったとして、その要因はその施策の成功/失敗だけに依るものなのでしょうか?この本では、ソロモン・ダトカ博士の著書を引用しながら、「売上は複数の要素が影響しあって決まるものだから、単体の施策の効果測定指標として売上を設定してはならない」、と主張しています。

池田紀行note「多くのマーケターが誤解しがちな主要施策の「できること」と「できないこと」のまとめ」より引用。売上に影響する要因は、広告のみならず価格や流通、パッケージまた競合サービスが実施している施策など複数要因が複雑に絡み合うため、施策単体の効果指標を売上で正確に測ることは難しい。

では、どうすればいいのでしょうか。池田氏は売上とマーケティングコミュニケーション(マーケティング施策)を切り分けて、その施策によって達成可能かつ計測可能、そしてその指標を達成すれば売上増加につながる指標をマーケティングコミュニケーションKGIとして設定すべきだ、と示しています。

■読了後の感想ーなぜこの3点が学びになったのかー

●顕在顧客と行動変容以降に比重が置かれがちなマーケティング活動

最後にあらためて、20章にわたって示されている様々な変数のうち、私がこの3点(想起・好意・効果測定)に着目した理由を整理したいと思います。それは一言でいうと、「普通にマーケ施策をやっていると見過ごされがち」なポイントだったからです。
Low Hanging Fruitsという概念が有名ですが、樹木になった果実をとろうとするときにLow Hanging=樹木の低い位置(手の届きやすい位置)になっている果実からとるのが効率的であるといった概念をマーケティング活動にあてはめて、すでにニーズが顕在化している今すぐ客から獲得していくことが効率的だ、という論です。あらゆる企業が予算も時間も限られている、その中でまずは顕在顧客から獲得していくことが効率的だし必須だと誰もが思うはずです。そうして、検索広告やディスプレイ、SNS広告など、顕在顧客のターゲティングが可能で、その成果も見えやすい運用広告から施策を実施する。そのこと自体は間違いではないですが、このように顕在顧客向けの施策ばかりやっていると、顧客が何らかの行動変容(検索、広告をクリックしてサイトに流入)をしたあとの部分にしか目がいかないし、デジタルツールによって目に見えるサイト流入数・購入数・売上・CVR・それぞれの単価感などの計測しやすい指標だけで成果を語りがちになってしまいます。そもそもなぜ、検索をしてくれたのか?広告をクリックしてくれたのか?その状態になるまでの顧客の認知や態度はどのように変容したのか?そこに確かにあるはずの、非認知状態~行動変容に至るまでの顧客の状態変化や、自社のサービスがどの集合体に入っているか?という視点がすぽっと抜け落ちてしまう。そうしてそのまま、潜在顧客の顕在顧客化、「そのうち客」へのアプローチが必要な事業フェーズに入ったときにも、「TVCMをやっていくら売り上げが上がるのか?」という風に、施策の役割は「認知」という態度変容なのに売上がKGIとなり、KGIが達成できなかったときにその施策が打ち切られてしまうという間違った判断につながってしまう。このような事体を防ぐためにも現場担当者はもちろん、マーケティング組織のマネージャー・経営者、組織全体でこの態度変容の過程とその効果測定について解像度を高めていくことが重要だと感じました。

自社のマーケティング施策・自分の担当施策の意義が分からない、いつもKGIが売上で認知や興味喚起施策がうまく評価されない、など、モヤモヤを抱えている人に、まずは読んでほしい一冊でした。この考え方を組織に浸透させて実践するのってすごく難しいんだろうなと思いつつ、、、まずは自分の担当施策において、正しい役割設定とKGI,KPI評価が出来るように、この本で学んだことを活かしていきたいなと思います!ではまた、次回のnoteで。

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