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日本蕎麦

西日本というと小麦文化圏。
讃岐うどんにお好み焼きなど「小麦粉」メニューが有名ですが、山陰・特に出雲地方ではうどんより「蕎麦」が幅をきかせております。
蕎麦の実は縄文時代の遺跡からも見つかっています。発育も早く、痩せた土地でも育つので備蓄食料として昔から栽培されていて、主に蕎麦がゆのような形で食べられていましたが、戦国末期今の「蕎麦切り」の形になったようです。

出雲そば**豆知識**

「出雲そば」は出雲地方(島根県東部)を代表する蕎麦です。
岩手県の「わんこそば」、長野県の「戸隠そば」と並び、日本三大そばの一つに数えられます。
江戸時代初期、松江藩・松平家初代藩主松平直政公が信州松本藩から移ってきた際に、そば職人を連れてきたことから出雲地方にそばが広まったといわれています。
出雲蕎麦は丸い器に盛った「割子蕎麦」と暖かい「釜揚げ蕎麦」(「釜揚げ」は蕎麦を洗わずゆで汁と一緒に頂きます。)があります。割子は城下町の松江周辺、釜揚げは門前町の出雲(大社)周辺が発祥と言われています。

割子・・・江戸時代、城下町の松江市ではそばを四角い重箱に入れて携帯していたのが洗いやすい丸い器に変わり、一緒に出汁を別に容器にいれて持ち歩いたために今の形になったと言われています。
釜揚げ・・・神在月(今の11月、旧暦の10月)に、出雲地方の神社で執り行われる「神在祭」でならぶ屋台で温かい新そばが振る舞われたのが初まりだ。と言われています。

蕎麦というとマクロビオティックでもかなり評価の高い食材です。
昔、「ビタミンCを補えば最強」と聞いたこともあります。
特に、出雲蕎麦のような玄そば(殻のついたそばの実)をそのまま挽き込む「挽きぐるみ」と呼ばれる製粉方法でつくられ、つなぎに使われる小麦粉も2割程度と少ないものは、食感、香りがよく、栄養価も高くなります。ちょっと特徴的な栄養素としてはポリフェノールである「ルチン」が有名ですが、最近では「腸活」に最強のサポーター、「レジスタントスターチ」の存在も注目されています。

蕎麦の栄養

具体的には、そば1杯のカロリーと炭水化物は白米の1/2杯~0.6杯程度。
同じように蕎麦1杯と比較して食物繊維の量は白米の5杯。たんぱく質は、白米の1.5杯分となっています。うん、そういうい意味でもとってもヘルシーな主食といえます。

栄養面、少し細かくみていくと。
1)ビタミンB群・・・代謝を助け、心を安定させる。お肌にもいいし疲労回復にもよい定番のビタミン。
2)たんぱく質・・・これは白米の2倍 。米飯で不足しがちな必須アミノ酸、「リジン」が豊富なのも特徴の一つで、アミノ酸スコアがなんと92。優秀です。
3)ルチン(ポリフェノールの1種)・・・水溶性で血管強化作用や抗酸化作用があり、別名をビタミンPともいいます。
心疾患の予防・改善・糖尿病を予防・認知症の予防・ビタミンCの吸収促進などの効果があります。
4) ミネラル・・・カリウムは精白米の4~5倍、小麦粉の約4倍、マグネシウムは精白米の約8倍、小麦粉の10~11倍、リンは精白米の約4倍、小麦粉の5~6倍、鉄は精白米の3~4倍、小麦粉の4~5倍、銅は精白米の2~3倍、小麦粉の約5倍含まれています。
5)レジスタントスターチ・・・割子蕎麦のようにゆでた後冷ますことでレトログラデーションという現象が起きてレジスタントスターチが生成されます。レジスタントスターチは小腸で消化されずに大腸まで達することで水溶性、不溶性の食物繊維のような役割を果たし大腸の腸内細菌をととのえます。

水溶性の栄養素であるビタミンBやルチンに注目すすれば釜揚げ・・・ゆで汁ごと頂くので、レジスタントスターチに注目すれば割子に軍配が上がるかもしれません。ただし、島根の場合はお店で食べる場合、「割子そば」に「そば湯」がほぼ必ずついてきますから、釜揚げほどではなくても、「割子」もそのあたりはカバーされているかもしれません。

薬味・・・良いお仕事をしています。

割子にしても、釜揚げにしても基本の薬味は
ネギ、大根おろし、海苔、鰹節・・・でしょうか。
ネギ・・・出雲蕎麦では薬味のネギは「青ネギ」です。ビタミンCやβカロテンが「白ネギ」より豊富です。白ネギの場合はアリシンが豊富で蕎麦のビタミンB1の効果をアップさせます。
大根おろし・・・ビタミンCとジアスターゼですね。
海苔・・・ビタミンB12とヨウ素が豊富。これらは貧血改善や、新陳代謝に必須の栄養素です。また日本人は「海藻を分解する腸内細菌」をもっていることで有名です。腸内細菌を通してのいろいろな効能が考えられます。
わさび・・・シニグリンが蕎麦に含まれる美肌のビタミン、ビタミンB2の働きを活性化します。
鰹節・・・食物繊維は0です。その代わり、鉄、ナイアシン、脂肪酸のDHA、EPAが含まれています。

夏場は薬味として、スダチ(クエン酸・カリウム・ビタミンC・ポリフェノール=スダチチン・エリオシトリン・ヘスペリジン・ナリルチン)、梅干し(クエン酸・リンゴ酸・ビタミンE・カリウム・リン・鉄分・カルシウ他)を加えるとさっぱりといただけます。
他にもいろいろな具材(鴨肉、とろろ、卵など)をのせることで さらに蕎麦はパワーアップします。

***鴨と宍道湖***
島根県東部にある宍道湖は有数の水鳥の渡来地で、240種以上の鳥類が飛来します。
ですから冬の宍道湖は鳥だらけ。水鳥の生息地として国際的に重要であることから、「ラムサール条約」の登録地になっています。白鳥渡来の南限としても有名です。

鴨も冬になると宍道湖に渡ってきます。
子供の頃は冬になると魚屋に「鴨」がそのままつるされていました(ほんとにつるされつるされつるされが・・・昔はあれを自宅でさばいていたのかなあ・・・・と思うと、「昔の主婦、恐るべし」と思うのでした。


本日のキーワード・・・レトログラデーション(retrogradation)

レトログラデーション(retrogradation)とは、米、ジャガイモ、そばを含む麺類など、でんぷん質の食品に起こる現象で。調理後、「冷却されたデンプン分子が再構築」されることを指します。

調理中にでんぷんが加熱されると、その顆粒は水分を吸収して膨潤し、ゲル化します。この過程で、デンプン分子はより整然とした構造に整列するのですが、これを冷やすと、特に水分が含まれている場合、デンプン分子は再び結合し、より結晶性の高い構造に再配列し始めます。この再編成プロセスがレトログラデーションと呼ばれています。

レトログラデーションで、調理でゼラチン化したデンプンの一部が半結晶の形に戻り、この半結晶状のでんぷんは小腸の消化酵素が働きにくくなります。その結果、でんぷんは消化されにくくなり、食物繊維に似た働きをするようになる。このレジスタントスターチはその後大腸に移動し、そこで腸内細菌によって発酵され、様々な健康効果をもたらす可能性があるとされています。

冷やしたご飯やジャガイモ、そして前述のように冷やした蕎麦のような食品にレジスタントスターチが多く含まれるのは、このレトログラデーション現象によるもので、これらの食品を再加熱すると、レジスタントスターチが部分的に分解されて消化可能なでんぷんに戻り、レジスタントスターチ含有量が全体的に減少する可能性があることは頭の隅っこに入れておきたいものです。


レジスタントスターチ以外にも、食品に含まれるデンプンにはいくつかの種類があり、それぞれ消化時の挙動や性質が異なります。デンプンには次のような種類がある:

急速消化でんぷんRapidly Digestible Starch (RDS):このタイプのでんぷんは、小腸の消化酵素によって素早く分解され、血糖値を急激に上昇させます。RDSを多く含む食品には、加工穀物、白パン、白米、その他の精製炭水化物が含まれる。

遅消化性でんぷん(SDS):SDSは小腸で分解されるのに時間がかかるため、血中へのグルコースの放出が遅くなる。SDSを含む食品には、全粒穀物、豆類、バナナなどの果物がある。

レジスタントスターチ(RS):先に述べたように、レジスタントスターチは小腸で消化されにくく、そのまま大腸に達し、腸内細菌によって発酵される。この過程で有益な化合物が生成され、腸の健康に良い影響を与える。レジスタントスターチは、青バナナ、加熱して冷ましたジャガイモ、冷やご飯、冷蕎麦、レンズ豆、特定の全粒穀物などの食品に含まれている。

高アミロースでんぷん:アミロースはデンプン分子の一成分である。高アミロースでんぷんは、アミロペクチンに比べてアミロースの割合が高い。消化されにくい傾向があり、レジスタントスターチと似た特徴を持っているもの、またはレジスタントスターチの一つとして扱われる。

ゲル化前デンプン:このタイプのでんぷんは、あらかじめ調理してから乾燥させたものです。冷たい水に溶けやすく、調理しなくてもすぐにとろみがつきます。プレ・ゼラチン化デンプンは様々な食品の増粘剤としてよく使用されます。

変性デンプン:改質デンプンとは、機能性、安定性、その他の特性を改善するために、物理的、化学的、酵素的な改質を受けたデンプンのことである。こうした改質により、食品用途におけるデンプンの消化性や挙動が変化する可能性がある。

デンプンの種類はそれぞれ、ヒトの健康と栄養に対して異なる役割をもっている。食事におけるこれらのデンプンの種類のバランスは、血糖値の管理と腸全体の健康に一役買うことがある。様々な種類のデンプンやその他の栄養素を多様に摂取するためには、多様な食品を摂取することが不可欠である。

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