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何か急に冬

半年くらい前、ホイールを派手に傷付けてしまってからそのままだった。そろそろスタッドレスの季節なので、これを機に修理に出そうと思った。家の近くに個人経営の小さな板金屋があり、ずっと気になっていたのだが、いかんせんいつも通る度に本当にここやってるのか?というレベルで人気がない。直接店に行ってみると、のこのこと作業着のおじさんが出てきてホイールを見ながら大体の見積もりを出してくれた。11月は立て込んでいるから、12月になったら持って来て、と。

ネットを見るなり、そこは遠方からも修理の依頼が来るほど良心的で信頼の厚いお店だったらしい。その噂通り、持っていくや否や手際よくちゃきちゃきとタイヤを取り替え、ものの10分ほどで交換してくれ、一本だけ明らかに空気が減っているタイヤも丁寧に見てくれた。何かあったらサービスでやったげるからいつでも言って、それと君の家僕の帰り道だから修理が終わったら持って行ってあげる、とのこと。何もそこまでしなくてもと思いつつ、対価として作業してもらった分は支払うつもりでいたのに、とても親切なことに感銘を受けた。ああ、この方は商売がお金だけじゃないことを熟知しているんだ、と素直に憧憬の念を抱いた。

お世話になっている自転車屋もお爺さんが奥さんを介護しつつひとりで経営されているのだが、これまたいい方で、いつもにこやかに世間話をしてくれたり、修理や取り付け費等ちょっと値引きしてくれたりする。空気を入れてもらうのは無料ではなく100円かかるのだが、何となくそこのお爺さんの顔が見たくて通っている。私の息子を見るなり大きくなったなあと言ってお孫さんの話や世間話をしてくれる時間が、私にとってはゆっくりとなだらかなもので、心地よいのである。

思えば、大きなお店よりも個人経営の親しみやすいお店を選ぶ傾向がある。何となく落ち着くからだ。安くしてくれるのはありがたいけれど、私は値段がどうであれ良心的なお店には通う。人はただ親しみやすい雰囲気に自然と好感を持つものなのだと思う。そこに信頼を置けるかどうかが、その人の人となりを構築していくのだと。綺麗に歳を重ねたいものだ。

何か他にも書こうかと思っていたのだが、忘れてしまったので、また今度。


tohma

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