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米国中間層の65%が経済的に苦しい

 全米トゥルー・コスト・オブ・リビング連合による米国の世論調査では中間層の65%が経済的に苦しんでいて今後の人生でもそれが続くと回答しました。全回答中46%が500ドル(約7万7千円)の貯金もできていないと回答しています。40%が次の給料日以降の計画を立てられないと回答します。ここから読み取れるのは米国の中間層の生活実態は苦しくなっているということです。
 JOLT求人労働移動調査では4月の求人数が805万9000人と市場予想の837万人を下回りました。3月の848万8000人から大きく下げ、求人数は3年2か月ぶりの低水準となりました。労働省が発表した2024年第1四半期の非農業部門の労働生産性は年率換算で前期比0.2%上昇、速報値の0.3%から小幅に下方修正されました。
 米国の中間層が経済的に苦しいというのが生活実態だとすれば米国の経済は底堅いとはいえ、個人消費に波乱を含んでいると言っても良いでしょう。雇用数が減少、失業率が悪化となれば米国の利下げに圧力がかかることになりますが、利下げとなるとインフレ再燃の懸念が出てくることになります。
 日本においては、中小企業の賃上げ率が3.62%だったことがわかり、5%超の賃上げ率だった大企業との格差が鮮明になりました。2023年の出生率が1.2と過去最低を更新しました。出生率の低下には歯止めがかからず8年連続となります。東京では出生率が0.99と1を割りました。年齢別の出生率では25-29歳の女性の落ち込み幅が最も大きく第1子出生時の母の年齢は31歳となり初めての31歳台となりました。
 日本の場合は20歳代の低賃金や雇用環境が悪いことが原因にあります。子育て先進国であるフィンランドやフランスでも出生率が低下しています。子育て支援の金銭的支援を増やしても出生率の改善には限界があるようです。子供をもちづらい背景には生活コストの上昇や高額な教育費・住宅コストなどの要因があります。
 ドイツは働き方改革から子供と両親が一緒に暮らす時間を長く取るようにし、移民を受け入れた結果、出生率は長期的に上向いています。米国もバイデン政権以来、移民受け入れを進めた結果、出生率上昇と経済成長につなげています。日本は外国人との共生が米独と比べて進んでいません。
 米国の場合は移民を受け入れることによって中間層以下の賃金が上がりづらくなり、生活実感として経済的に苦しくなっているのだろうと思います。バイデン政権は大統領選もあるので移民規制に乗り出しました。日本の場合は企業の稼ぐ力が欧米に比べて劣っており、賃金に儲けたお金を回しづらい実態があります。PBRが1を切る企業が大半ということは持続できる企業が少ないことを意味しています。東証が改革を企業に求めたところです。米国の世論調査と日本の出生率からはっきりとわかったことは中間層の経済的困窮にある背景はそれぞれ別の理由になっているということです。
 米国の民間世論調査会社では既存の経済指標は生活実態を反映しておらず新たな指標の開発が必要と指摘しています。経済指標をたくさん開発し、多角的な視点からデータを集め分析している米国ですらこのようなデータ不足・指標不足が指摘されているのです。米国に比べると経済指標に乏しい日本はなおさらです。
 米国の低所得層が経済的に苦しいということはわかっていましたが、今回、中間層でも経済的に苦しいことが世論調査で浮き彫りになりました。日米ともに中間層の困窮が今後の大きな政治テーマになることは確実で今後の政策動向がこれからどうなるのかをよく見ていく必要があります。

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