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金相場の歴史的上昇の背景

 金の価格は1998年に865円の最安値を記録してから、その後は上昇に転じ現在に至るまで高騰が続いています。2024年3月から4月にかけての2か月間で2,000円以上も上昇し、13,105円という歴史的な上昇となりました。5月8日時点で金相場の予想価格は年内が14,300円台まで上昇が続くと考えられています。
 金相場は国際的な市場の動き・経済の変動・政治的事件・需給バランスなど多くの要因に影響されます。禁煙はスマートフォンやパソコン・建設機械などに用いられる電子部品の素材として金が幅広く利用されており需要が高まっています。また、新型コロナ流行の影響を強く受けた現代社会では経済の先行きが不透明であるという点から「価値がなくなる危険性の低い試算」として金の需要が伸び続けています。
 金相場の歴史的上昇の背景として地政学リスクや円安がありますが、現在の上昇は円安が最も大きいと考えられます。金を買い支えているのは新興国で各国中央銀行の大量金買いであり、この傾向は当面続きそうです。
 新興国による大量の金買いは、ドル高による新興国通貨価値の希薄化によるものがあります。日本円も34年ぶりの円安水準となり、円の通貨価値としての希薄化も考えられます。FRBの資産が急激に膨張しており、連動する形で金価格も急上昇しています。米国経済一強・基軸通貨ドルへの疑問が新興国の戦略的な金買いに拍車をかけているともいえます。
 1971年に米国のニクソン大統領は自国の競争力回復のための経済政策の一環として金とドルの交換停止を発表しました。この出来事をきっかけに固定相場制は終わり、主要通貨は変動相場制への移行していくのですが、貨幣と金のバランスが大きく崩れてしまい金本位制を維持できなくなったことが背景にあります。
 英国ポンドは金本位制の中で最も重要な通貨でしたが、第一次世界大戦後からその地位を低下させ、第二次世界大戦後には米国を中心としたIMFのもと没落していきました。そして、ドルがポンドにとって代わりました。英国を含む欧州主要国が第二次世界大戦によって甚大なダメージを受けたことや1913年に米国連邦準備制度が設立されたことといった大きなショックや制度的改革によって進展した面もあります。
 第二次世界大戦後、欧州の復興を支援するため1948年のマーシャルプランで多額の融資や贈与を行い米国の輸出品を買ってもらうため米ドルは世界中にばらまかれることになりました。そのため、交換手段としての機能は当該の国際通貨が決済時にどんな取引相手にも受け入れられるという「一般受容性」を前提とするようになり、自由に保有・使用できることになりました。
米国が基軸通貨ドルを使って輪転機をフル回転させ世界にばらまき、やりたい放題となったのですが、新興国を中心に自国通貨価値の希薄化もあり、米ドルのリスクを考えるようになり、ゴールドとして通貨分散させるというシフトチェンジを行ったと考えられます。
 米国の景気減速の兆しもみられるようになり、インフレが根強いとなればスタグフレーションとなり、金相場が上昇しやすくなります。また、FRBが利下げに踏み切れば、高金利の高止まりが続いてきた状況からの転換点が訪れ、国債購入から金ETFの買いに転じる可能性も出てきました。大局的に金相場の上昇傾向は続くと思われますが、今年後半の値動きに注目です。

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