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前線の若者たちとの一夜

ある日、兄に頼まれてZ世代の若者たちを僕の狭い部屋に預かりすることになりました。

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彼らはクーデターの抗議デモ隊に参加しているらしく夜9時を過ぎて帰れないので困っていたそうです。彼らはデモ隊を先導する最前線で体を張っているのは翌日彼らが去った後に聞かされことでした。

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Z世代とは一般的に20代前後の若者を指しますがミャンマーではクーデターの抗議に積極的に参加している若者の愛称として使います。

全員で15人ぐらいで一番上は24歳で一番は14歳でした。一番下は子は背が低く、持っていたものは自分の身長と同じぐらいの頑丈なこん棒でした。しかも女子だったのです。他の子達もほとんどが痩せ型でがっちりした体型の子はいません。女子2人を僕の寝室を使うように指示して僕と他の連中は空いている隙間すべてを使ってもらいました。

お腹すいたのかと聞いたら全員口を揃えて「僕ら食べてきました」と答えますが、どうみてもお腹がすいている様子でした。うちに残っているのは15人の食べ盛りにはとてもじゃないけど全く足りない食パンとクッキーしかないのでそれを出しました。幸い米は残っていたのでご飯を炊こうとしら彼らに止められて、自分たちでやるとのことで一人が炊くことになりました。

すると僕が「お前ら俺が信用できないのか?俺もご飯炊く経験が一週間ぐらいはあるからなんとか米をご飯にすることはできるぞ」と言ったら全員爆笑しました。ミャンマーでは米を釜(鉄鍋)で炊く習慣が多く、慣れていない人はよく失敗します。16歳の子がご飯を炊こうとして洗った鍋も汚れが残っている上、2合用の鍋に米を3合入れて溢れて慌て出した様子は未だに忘れません。

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15人の若者に残りの卵2個とソーセージ3本をどう分けるか悩んでるときに彼らを預けてきた兄貴からの電話がかかってきて救われました。義理の姉が彼らのために食事を用意してくれたらしく「あと15分で、食事の用意ができるから取りに来い」との連絡でした。15人には十分とは言えないけど楽しく和気あいあいと分け合いました。先程は食べてきたと言ってた奴らが米粒一つ残さず平らげました。その様子を見ている僕はこんな若く、本来であれば自分うちでお母さんのご飯を食べているはずがこんなとこでと思って気持ちが込み上がってしまいました。

そのグループにミャンマーで有名なプロゲーマーの子がいて、会話してみたら彼らのビジョンがとてもシンプルであることが分かりました。「僕らは政治に関しては全く知らなく元々はゲームの配信をしてました。2月1日から必死に政治を正しく理解するために食らいついて来ました。それは今まで僕らが知っていた情報は軍のプロパガンダであることを気づいたから」だと彼はいいます。

それから質問もされました。

「兄貴、もし彼らが勝ってしまったらどうなる?」と聞いて来てきた直後に「いや!僕らが勝つのを信じているけど、ただ聞いてみたかった」と補足してきました。

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「国軍の独裁が根付いたら国民はより苦しくなる上、うちらが払った税金は国軍に着付されてちゃう。国軍の関係者だけが利権を独占して国民は残りカスしかもらえないから、国軍と仲良くしてうまくやる習慣が生まれる。それが何世代か続くと国民はそれを悪いことと思えなくなって負の連鎖が起きて国が崩壊する」と僕が感じて来た問題と過去の経験を交えて説明しました。

「ですよね、兄貴。僕は今24歳だけど手を合わせて将軍たちを拝む時代を体験してきたけど、絶対その時代に戻りたくない!もし、この革命が負けたら僕は都会を離れて武装組織に入ると思います」と彼は語りました。

それから彼はまた聞いてきました。「その将軍たちってそんなにだめなんですか?僕は信じられなくて!」。以前軍の広報責任者の将軍が当時流行っていたトランプ大統領の言葉を真似て「Make Myanmar great again」を言うつもりがそのまま「Make American great again」と記者会見で言い放ってしまった事件がありました。国民は事あるごとにその動画を切取ってSNS上拡散して国軍の無能さ非難して来ました。国軍の記者会見は笑い話しとしてはとても面白いコンテンツです。

「まぁそれは俺もわからん。本当にバカなのか、もしくはわざとバカに見えるように仕向けている天才なのかな!それもあり得ない。とにかくさ、奴らがこのまま勝って奴らの考える教育システムなんて恐ろしくて想像できない」と僕は答えました。

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見回したら残りの連中はそれぞれゲームや手遊び、それから音楽をハモっている子もいました。彼らは昼はデモに参加し夜は逃げ回る日々を暮らしています。国軍という卑劣かつ残虐な組織に歯向うのには若すぎる気がします。ただ彼らは自分たちの未来のために命を危険をかえりみず、行動して抗議を続けて来ました。彼らと真逆で革命運動に対して文句しか言わず、何か言うたびに否定ばっかりをする大人はたくさんいます。

一晩中弱音は一度も出ませんでした。彼らはできることを他人より多くやろうとします。将来のことは考えず目先のことに集中します。気づいたら全員一瞬で寝てしまったので今日も彼らは達成感ある一日を過ごしたのでしょう。

その晩僕の狭い部屋で寝床や食事を提供できたこと、また彼らとの会話できたこと、若い世代の気持ちを知れたことはこの革命の中で僕が一番誇りに思えたことです。もちろん元気も付けられたし希望も見せられました。

朝起きたら一番下の14歳の女子が年上の男子たちに向けて「人間って死ぬ時はご飯食べながらでも、水飲みながらでも死んじゃうからね」って哲学的なこと言い放ちました。多分ここ2ヶ月で一生分の悲劇をみて悟ったのでしょう。

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「僕らは権力なんて興味ないっすよ。人権が法律で守られて正義を遂行できる政府が現れば十分です。この革命が終わったら僕らはゲームの世界に戻ります。また友達と遊んだり、本を読んだり、旅行したりしたいです。今は一旦思う存分戦うけど」と言い残して意気揚々と去って行きました。

率直で純粋、それに無欲の彼らが引張ってくれているのなら間違いなく僕らは勝利すると確信しました。

※この記事はSNS上で語られていた体験談を和訳したものです。


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4月10時点で国軍の武力弾圧によって600名以上が命を落としました。皆さんの支援があればミャンマーは早く平和を取り戻せると信じています。

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