手続きによって失われる記憶
春らしい、川を渡る吹く風は少し埃っぽくて、陽のひかりが滲んで見える、なんだかひかりを浴びるだけで生きていることが肯定されるような気分になるような日に、突然文字が理解できなくなった。
さっきまで当たり前のようにひかりを浴びて本を読んでいたのに、前触れもなく、言葉が頭を上滑りしていく。どうして言葉が理解できるのかわからなくなってしまって、頭が混乱する。どうして、さっきまであんなに晴れていたのに。読んでいた本はマクニールの『世界史』で序盤も序盤、最初の文明を人々が気付き上げようと