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でこぼこ

「一番強い鳥を教えてください!」
こどもからの質問に、鳥の専門家、川上和人先生は、こんなふうに答えていた。

「何を強いと考えているかな?」

 “一番強い(頑丈な)くちばしを持っている” としたときの答えは、クルミのような硬い殻を割って食べる、オウムの仲間。
タカやワシではない。
(タカ(鷹)もワシ(鷲)もタカ科。大きい種類のタカが鷲。)

“つかむ力” なら、猛禽類かもしれない。
“速く泳げる” なら、ペンギンの仲間かもしれない。
“速く飛べる” なら?
“長く飛び続ける能力” なら?
“遠くの小さなものを見分けられる視力” なら?…

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「障がいがあっても〜」
というのは違和感がある。
どういう状態なら、障がいがないの?
「障がいがあっても」の前に、「ない方がいいけれど」という前置きを感じてしまう場面もある。
そう書かないかぎり、排除されている世の中なのかな、と寂しくなる。

名前ばかりだが、認定心理士の資格を持っている(臨床心理士ではないです)。
人格障害や、他の精神障害や発達障害を学んでいるとき、当てはまるものがありすぎて「私は何者?」と思った。

障がいというものがあるのなら、
困っていて、苦しくて、となると、
「障害」になってしまう気がする。

病気と障害は違う。
でも、病気から障害、障がいになることも、
障がい、障害があることで病気になることもある。

ちなみに私は摂食障害だが、摂食障がいとは書かない。
死ぬまで切り離せないだろうから、病気より障害の側面が年々強くなっているのかな。

線引できるもの、
白黒分けられるもの、
正解があるもの。
それらは、目立つだけな気がする。
はっきりしていないものの方が多い。
ほとんどの事象は、虹のように混ざりあい、移ろう。

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シャーマンは、非常に尊敬され、地域に欠かせない存在である。
定義は置いておいたとしても、
第六感がすぐれていて、幻覚や幻聴があり、霊と話せる力が、人々を救っていることには違いない。
敏感に感じとる能力は、本来喜ばれ、重宝されるものであったはずだ。

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“生産的であること”が、いつからそんなに偉くなったのだろうか。

後世に命を繋いでいくことは大切。
ただ、自然界ではその前に死んでいく命の方が多い。


芽が出るどんぐりはいくつある?
木になるどんぐりは?

動物に食べられて、彼らの血肉になったどんぐりも、
私に拾われて、私の心を豊かにしたどんぐりも、
運よくリスに忘れられて、芽が出たどんぐりも、
腐って、土に還っていったどんぐりも、

みんなすばらしいって思う。

『どんぐりの背比べ』。
なんてよく言い表したのだろう。
だって、どのどんぐりもかわいいよ。

宮沢賢治も言っている。

『いちばんえらくなくて、ばかで、めちゃくちゃで、てんでなっていなくて、あたまのつぶれたようなやつが、いちばんえらいのだ』(「どんぐりと山猫」より)

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障がいは個性だともいうけれど、個性のない人などいない。
だから、みんな障がい持ちといってもいいくらいだ。

「普通」、「個性」という言葉は難しい。
目立つ箇所は、どの集団の中にいるかによる。お国柄でも違う。

ひとりひとりの色、味。
宇宙から見れば、ささいなこと。
でも、私たちはなんだかんだ、今ここで生きているから気になる。
違いは、目につくから…。

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私は、樹林の道を歩くのが好きだ。
不思議なくらい退屈しない。
夢中になれる。

でこぼこ道を歩きながら、感じる。

世の中は、でこぼこ。
ひとりの中も、でこぼこ。
でこぼこしているから、補い合える。
「ありがとう」が言い合える。

私は、
「ありがとう」が言い合える世の中の方が好きだ。

2024.2.2


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