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ハゲカウントウォーキング

「やってみた」という言葉の中には、「あえて」という意味が含まれる。
日常生活に必要なルーチンを、「やってみた」とはわざわざ言わない。
必要性の乏しい特別な何かを「敢えて」やるからこそ、「やってみた」と言えるわけだ。

おっしゃ、ほな、考えてみるで!

...

....


.....


そういやもうやってたわ。

俺は妻と2人で散歩するのを日課にしてるのよ。
散歩で行けるような周辺エリアはあらかた行き尽くして、新鮮味が乏しくなってきたわけよ。
それを県外の友人に話したらさ、アドバイスくれたんよ。


友人:「歩くのにちょっとした目的のある遊びを採り入れるといいよ。例えば、いろんな植物の写真を撮影するとか。」


なーるほーどねー。

このアドバイスを受けてからは、何らかのテーマを決めて歩くようになりましたとさ。

ほんで、色々思い付いたテーマの中で最もアレだったやつを、今から皆様に披露いたしまする。
これをやる時はハートが大事だからね、そこ疎かにしたらアカンよ!



全てのハゲに敬意を。


【ハゲカウントウォーキング】

もうね、タイトル見たら何をするかハッキリわかってしまうよね。
そう、そういう事です。

しか~~~し、ルールや考えなど、ある程度ちゃんとしたモノがあるので、そこはキッチリ説明させてもらおう。


~ハゲへの思い~

まず最初に理解していただきたいのが、ハゲに関する思い・考えについて。

一般的に「ハゲ」という言葉は、侮辱の意味で使われる事が多い。
けれど実際は、人間の身体的特徴の1つに過ぎない

昨今、ルッキズムの観点から、ハゲいじりを禁止しろなどという話を見聞きするけれど、それは過剰な制限だと思う。
ハゲが持つ面白味可笑しさ美しさ清々しさ、そういったものまで潰してしまう考えは、悪だと思う。

妻は、ハゲた頭髪をプラスに感じる人間の1人だ。
ハゲを売りにする芸人の技に、敬意を持って爆笑する。
たまにすれ違う人のハゲた頭髪を見て、「あれは美しい、芸術性を感じた」と言う事もある。

肌の色にせよ、こうした頭髪にせよ、それを理由に侮蔑する人間の心が汚いのであって、そうした人間に対応するために、それそのものに触れなくするのは、思考が汚染され敗北しているとさえ思う。

今回のハゲカウントウォーキングは、そうした妻の「ハゲに魅力を感じる」特性から思い付いたものだ。
ハゲを侮辱し、嘲笑するような考えを持つ人は、決して真似しないでいただきたい。


~基本ルール~

  • 2名以上の複数名で行う(最大4名までが望ましい)。

  • スタート地点とゴール地点を決め、そのコースを全員で散歩する。

  • その途中で見付けたハゲ頭の人の数をカウントする。

  • 上記を踏まえ、何らかの基準を設けて勝敗を決定する。


【今回のルール】

今回は、俺と妻の2名で行う。
協議の結果、以下のルールで対戦する事になった。

  • ハゲ頭を先に見付けた方に、ポイントが付く。

  • ゴール時点でポイントが多い方が勝ち

  • ポイントが同点の場合は、魅力的で印象に残ったハゲ頭を見付けた方が勝ち

  • ハゲ頭に付くポイントは、ハゲレベル(※後述)によって変動する。

  • ハゲレベル判定は、両者の30秒以内の協議により決定する。

  • 30秒に達してもハゲレベル判定が一致しなかった場合は、中間の数字をポイントとして確定する。

  • ハゲ発見判定は、先に見付けた方が、もう一方に確認させる事で成立する。

  • ハゲを発見しても、もう1人が確認する前にハゲに逃げられてしまった場合はノーカウント。

  • 女性の薄毛や、病気が原因かもしれない、自然なものに見えないハゲは、今回の対象から除外する。

  • 負けた方が夕食を作るか、奢る。


~禁止事項~

  • ハゲを発見した際に指差しするなど、相手に気付かれたら失礼と捉えられかねない行為。

  • ハゲ頭を持つ当人に接触し、「髪をもっとよく見せてください」などと迫ったり、そのような目的を達するための行為全般。

  • 発見判定を意図的に行わない、レベル判定で意図的に自分有利な数字を言うなどの、モラルに欠ける行為。

  • 判定や確認が不可能になるような位置への移動。

  • これらの禁止事項に違反した場合即敗北となる上、食材に苦手な物を1品追加の刑に処する。


~ハゲレベル~

ハゲレベルは、以下の基準で判定する。
1レベルにつき1ポイント(つまりレベル5ハゲを発見したら5ポイント)獲得する。
レベル判定については、以下、イラスト付きで解説する。

髪型を変えればハゲ認定を避けられるのがこのレベル。


Mり始めの食い込みが見て取れたり、頭頂部のつむじ付近が、つむじより一回りハゲていたら、このレベルに該当する。
「髪型変えたら隠せるよね、ハゲ認定免れるよね。」って思えるぐらいが目安。


周辺の髪の毛をかき集めたらなんとか誤魔化せるのがこのレベル。

Mの食い込みが明らかだったり、頭頂部がワンコイン規模でハゲ軍に占領されていると、このレベルの判定となる。
髪型を変えるだけでなく、周辺の髪の毛軍に増援を要請し、戦線をカバーすればなんとかハゲ認定を免れそうなぐらいが目安。


もはや誤魔化しようがないけれど、まだ髪の毛が戦えているのがこのレベル。

誰が見ても明確にハゲとみなされるけれど、まだ髪の毛軍の方が数的優位だよね、というのがこのレベルに該当する。
このレベルぐらいが最も個性と芸術性が高い。


ほぼハゲあがっているものの、まだ髪の毛が完全撤退していないのがこのレベル。

髪の毛軍総帥が、「まだだ...まだ終わってはいない!!」と言って最後の粘りを見せていそうだと感じたら、このレベルに該当する。
このレベルに到達すると、光を伴う美しさを放ち始める。


髪の毛が後・側頭部にしか残っていなければこのレベル。

ハゲ軍に頭頂・前頭の主要部分を完全制圧され、後方・側方に髪の毛軍が完全に押しやられていたら、このレベルだと判定する。
完成形なので個人差が出にくいものの、一定水準の美しさが常にある。


~コース~

自宅から駅構内を抜け、大型ショッピングモールで買い物し、同じルートを通って自宅に帰るまでの1往復で勝負。
喉が渇いたからその辺の店に入るとか、トイレに行ったりするのはOK。



往復約2時間のんびり歩きます。


【やってみた】

以上のルールに両者同意のもと、仲良く手を繋いで自宅を出てスタートした。


~スタート~

開始早々、駅構内を抜ける間に、妻がレベル3と4を発見し、7ポイント先制
対するは、駅から出た直後にレベル3を発見して差を詰めた。

大型ショッピングモールの入り口で、俺がレベル2を発見
しかし、中に入ってから、妻のハゲセンサーが発動したのか、3・4・5と立て続けにポイントを稼ぐ。

ここで、妻が発見したけれど、俺が見逃してしまい判定できないという事態が初めて起きた。
お互い見る方向が違うので、発見報告を受けて振り向いた時に、物陰に入ってしまい見えなくなったりするのだ。
露骨に追いかけるのは気が引けて、そこはしょうがないと諦めた。

やってみてわかったのは、レベル判定が微妙に難しい事。
数字2個違うというのは無いけれど、1個ぶん見解の相違が出るのは結構ある

そうなる要因は、ハゲ頭を見る角度が限られるのと、見る時間も限られる点にある。
あまりに凝視すると相手に不快感を持たれてしまいかねない。


~買い物して帰路へ~

ショッピングモールに到着後は、お買い物をする。
食品コーナーで俺氏レベル3を発見
その後、休憩エリアで、立て続けに1、4、3と発見して猛追。
ちょっと本気出して、ハゲの先取りに成功した結果だ。

この間は、判定が微妙なレベル1をカウントした程度。
俺氏の逆転が見えてきた。

ところで...この辺りで、ハゲレベルと発見難度が反比例する事に気が付いた。
レベル4やレベル5は遠くからでも見付けやすい。
反対に、レベル1は近くで見ないと判定不能だ。

もし、次回やるとしたら、ポイント設定は変更すべきかもしれない。
難易度が高い方が高ポイントになるのが、「遊びの要素」としては自然だ。

ただ、レベル1が5ポイントとなると、今度は別の問題が発生する。
レベル1は、NOハゲなのか、YESハゲなのかの境界線だ。
つまり、0ポイントか5ポイントかという、振れ幅の大きな設定になってしまうのだ。
仮に今回のルールで、この判定が割れたとすると、30秒経過時に2.5ポイントとなってしまう。
これだと、かなりモメやすくなるよなあ...。

すぐには良い設定・解決方法が浮かばなかったので、この点は今後の課題として残す事となった。


~想定外の判定不能者~

ショッピングモールでの買い物を終えて帰る途中、駅の構内にあるスーパーに寄った

結構汗かいて水分が欲しくなったのでドリンク、あと、ついでに、帰った後にちょっとなんか軽く食べるお菓子欲しいよね、という妻の提案に俺が乗った形だ。
モール内で買っとけば良かったじゃないか、と思うものの、「その時はそうじゃなかったのよ」という、女性特有のそーゆーヤツなんだろうというのは察しが付くので、そこはあえて訊かないのが男としての正しい判断だ。
そう、これは、「あえて」「やってみた」ではなく、「あえて」「やらない」の方を選ぶんだよ、ここテストに出るよ。

逸れてしまった話の筋を戻す...ルール上、妻と俺はハゲ発見時に確認が取れる位置に居なければならない
ドリンクを手に取った後は、自分が食べたいお菓子を探すターンなんだけれど、狙っている獲物が置かれている場所は分かれていた。
そこに移動する瞬間、お互いの意識が別方向にあり、俺は妻が発見した重要人物の確認をミスる事態を引き起こしてしまった



!?



自分が欲しいお菓子コーナーの方へ行こうとした俺は、妻が付いて来ていない事に気付いて振り向いた。


妻:「ちょっと、こっち見て。」


そそくさと俺との距離を詰めた妻が何かを見てほしがっている
ハゲ発見時のそれであり、俺には対象物を確認する必要が生じていた。
しかし、妻の示す方向を見ても、それらしきハゲは見付からない
ハゲじゃない何かを見せたいのかもしれない...つまりそれは、妻が大嫌いなG系の虫なのではないか、などと思ったが...


妻:「あれ。あの人。早く見て。」


と、妻の口から催促の言葉が出た。
どうやらやはり対象物は人で、ハゲを発見したらしい。
しかし、俺にはそれがどの人かわからなかった
スーパーはそこそこ混んでいたし、目立つハゲは視界に入らなかった。

その対象を指差したり、声を出して呼び止めたりするのは禁止なので、妻はそれらをしなかった。
その結果...


俺:「どの人?わからん。」

妻:「さっきしょこ(そこ)に居たでしょ。」

俺:「居たけど、ハゲてたっけ?」

妻:「あの人、髪の毛をマジックで描いてた!」


俺:Σ(・ω・ノ)ノ!


ええ~~~っ!?
そんな人、芸人以外で存在するゥ!?

駅構内のスーパーでただ買い物するだけの一般人が、マジックペンで髪の毛描いたりするもんかね!?


俺:「そんな人居たぁ?」

妻:「居たよ!ふちゅう(普通)の髪の毛で、あんな光の反射はしない。」

俺:「そんなに不自然だったの?」

妻:「私が見た角度だったらわかる。」


むぅ、白髪染めでマジックペンを使った人の話は聞いた事があるけれど、ハゲ頭に直接マジックペン(おそらく油性)で髪の毛を描いて日常生活する一般人なんて、レア中のレアではないか。

惜しい、非常に惜しい。
見逃してしまった事がとても悔やまれる。

ともかく、この件については、ハゲカウントできず、自宅へ帰る事となった。


~最終結果~

約2時間のハゲカウントウォーキングを終え、俺と妻は自宅に帰り着いた
スマートフォンに記録した、獲得ポイント数をお互いに見せ合う。


42 対 43


結果は...


妻の勝ち

歩いている途中で何人か見付け、俺が抜いた瞬間があったのだけれど、駅から自宅に帰る途中の道で妻が再逆転してそのままゴールとなった。

振り返ってみると、正直、カウントする行為自体は楽しくなかった。
けれど、普段何気なく見過ごしているハゲ頭にいろんなパターンと個性がありイケメンとは違う魅力があるという事実を思い知った。
歩きには全く支障が出なかったし、たまにはこういうのもまあアリなんじゃないかな、というのが、実際やってみた2人の感想だ。

この勝負の敗者となった俺は、クリームシチューを作る事となった。
マッシュルームの表面をマジックペンで塗りたい衝動に駆られたが、それはやめておいた。




#やってみた大賞

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