【第1心】未知との遭遇【一生片想い】
。o (全然知らん奴が結構居るな)
小学3年生への進級は、クラス替えを伴った。
小学校に入学して最初のボス猿争いに敗れたユウは、クラス内カースト4位相当に甘んじており、過去2年間、上位3人からのいじめを受け続けて過ごしていた。
好運な事に、このクラス替えによって、その上位3人とは違う組となり、いじめのストレスからは解放された。
心機一転。
。o(俺はオールAの男になるんだ!)
猿山のてっぺんが欲しくて騒ぐガキの時代はもう終わり。
これまで一歩届かなかった成績オールAを成し遂げ、完璧な人間を目指すのだ...。
【猿オブ猿】
クラス替えの人選は、以前のクラスで仲が良かった者同士を離すらしい。
基準となる児童は、その組で成績が良かった者らしい。
後者の情報はお母さん、前者の情報は教師から聞いた。
それが本当なら、自分が中心に編成されたのであろう、とユウは思った。
自分をいじめていた奴等は、教師連中から見れば、「じゃれ合っている」「仲が良い」と判断されたに違いない。
年齢1桁のガキでも、大人にいじめがバレない程度、というか、バレてもおふざけの一種みたいに見てもらえるような知恵は持っている。
あのクソな3名のうち、誰か1人とは同じクラスになってしまうのではないかという不安はあったけれど、天は自分に味方してくれた...。
。o(あ...あいつは!...ハァ...。)
前言撤回...いや、前思撤回、っていうのかな...はぁ...。
ツイてると思ったけれど、そうでもなかったみたいだ。
同じクラスになりたくなかった奴が、視界に入った。
そいつの名は、サムという。
小学校に入って最初の2年間は別のクラスだったけれど、家が近所だったために同じ保育園に通っていたのだ。
サムの性格は、猿オブ猿。
猿山のてっぺんが超大好きな奴だ。
保育園時代、こいつにやたらと絡まれ、事ある毎に「決闘だ!」となり、殴ったり殴られたりの喧嘩っぽい何かを散々やってきた。
勝ったり負けたりを繰り返した後、1度ピーピー泣かせて完全勝利してやったはずなのに、このクソ猿は超絶パンチ力を持つアキを味方に引き入れ、コンビ技まで開発して2対1で襲って来やがった。
さすがにそれには勝てなかったし、別の機会で勝ったとしても、あれやこれやとしつこく繰り返し、なんだかんだで猿山の大将の座をサムは誰にも譲らなかった。
小学3年生になったサムの言動を見るに、その性格は全く変わっていなかった。
この猿とまともに絡むと、今更繰り返したくもないクラス内カースト制度が再び出来あがり、さらに2年間、不毛な順位争いが繰り広げられる事になってしまう。
。o(同じ事を繰り返すのはバカだ)
ユウは考えた。
自分好みの環境を作るには、スタートが肝心だ。
どうすれば、今までのような愚かなクソ環境を繰り返さずに済むのか。
そして1つ思い付いた。
。0(俺の知らない奴等の中に、サムに対抗できる猿が居るかもしれない。)
そうだ、猿同士を闘わせ、漁夫の利で2人をボコってマウンティングしてしまえばいい。
どちらかがあっさり負けたなら、負けた方に優しくして、2人で勝者を倒せばいい。
この考えを実行するに当たって、まずは初めて同じクラスになった奴等に話しかけて親しくなる必要がある、と、ユウは思った。
【未知との遭遇】
サムと争う候補の猿は、すぐに見付かった。
それがダイだ。
ユウは、サムとダイを争わせようと、色々と画策した。
ところが、ユウの知る範囲の中では、この2人が激しく争ったというような事は起きなかった。
しかも、何やらダイは、サムに対してはやや引き気味に振る舞っている。
自分の知らない間に、何らかの勝負が付いてしまったのかもしれない...。
それか、ダイはサムに対して、ボス猿としての資質で劣っていると感じて引いているのかもしれない。
いずれにせよ、事が思うように進んでいないのは明らかだった。
ユウは、新たな人材を探そうと、大人しくて目立たないクラスメイトにも話しかけてみた。
この行動には別の目的もあった。
クラス分けが、「仲の良くない人とも仲良くなるように」という目的で行われているのであれば、大人しくて目立たない人と親しそうにする事で、教師連中から見た自分の印象も良くなるはずである。
また、教師目線でのクラスメイト同士の友好度を上手く印象操作すれば、2年後のクラス替えで同組になる人をある程度コントロールできるかもしれない。
。o(一応、女子とも話してみるか)
男子全員となんらかの接触を持ったが、残念な事に、ダイ以外でサムに対抗しそうな人材は見付からなかった。
女子でサムと殴り合えるような人は居ないだろうけれど、なんとなくサムが苦手にするような存在っていうのがありえたらいいなあ...と、もはや淡く期待するしかない状況だった。
そうした流れの中で、話しかけた相手の中に、マキが居た。
この時のユウのマキに対する印象は、完全に「大人しくて目立たない女子」でしかなく、どうでもいい存在だった。
その証拠に、この時どう話しかけて、どのような回答があったのか、ユウの記憶には全く残っていない。
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