見出し画像

自分の秘密基地をつくる

私は昔から学校が嫌いな子どもで、小学校のときから頻繁にぐずっては親を困らせていた。小さな理由で行きたくなくなることもあれば、特に理由がないときもあった。そのたびに「行きたくない!」と大騒ぎして、親に迷惑をかけたものである。なかなか、面倒な子どもだったのだ。

そういう学校嫌いの面倒な子どもは、いまも大学院に通っている。
一応、なんとか大人になれたので、行きたくないからとて、大騒ぎすることはないのだが、今でもときどき、理由なく急に行きたくなくなるときがある。三つ子の魂百までである。
これに関しては、もう治ったりすることはたぶんないので、自分の身体を引き受けると思って、適当に梅雨のせいにでもしつつ、自分とうまく付き合っていくしかない。

とはいえ、何も考えずに自分と付き合ってきたわけではなくて、そういうとき用のテクニックがある。今日は、そのテクニックについて、ちょっと書いておこうと思う。学校に行きたくないときの、わたしの操縦マニュアルである。


まず、海の方に行くことだ。

大学と海とは、逆方向である。ただ、逆方向だからこそ、とりあえず外に出ることはできる。どうせ、学校に行くにせよ行かないにせよ、家の前まではまた戻ってくるのだから、気が楽なモノである。


それから、お気に入りの坦々麺のラーメン屋さんである。
このラーメン屋さんは大学に行く途中の道にある。1000円くらいするのでラーメンとしては少し高いのだが、おいしい。ラーメンを使いつつ、自分で自分を釣って、とにかく形だけでも、大学の方に向かう。


通り道のカフェに行くのもいい。
喋り方がマニュアル化されすぎて、そういう伝統芸能みたいになっている店員さんがいるカフェがあって、そこでアールグレイティーを一杯飲む。2Fの窓からは駅が見えて、せわしなく動いている人たちを見ていると、人間ってかわいい生き物だなァ、などと、やや不遜な気持ちを抱きながら、ちょっと頑張れそうな気持ちになる。

そして、大学前のファミマに意味もなく寄って、The Chocolateとか、やたら高い高級なお菓子を買ってみたりして、とにかく、大学前まで来たことを、密かにお祝いすることにしている。
いちおう、自分のルールとしては、ここから家に帰っても良いということにしているのだけれど、せっかく前まで来たのだし、ということで、たいてい大学まで到着して無事に研究していることが多い。


こうやって、行きたくないときに中継するための秘密基地を、わたしは街のあちこちに作っていて、ときどき学校に行きたくなくなっては、そこで息継ぎをして、地域経済に貢献しているのだ。学校に行きたくなかった子どもも、器用になったものである。

自分をやめることはできないのだし、うまく、自分の取り扱い説明書片手に、この身体と付き合っていきたい次第である。


この記事が参加している募集

読んでくださってありがとうございます。 みなさまのコメントやサポート、大変励みになっております。