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ビジュアルプログラミングツール「vvvv」の現在地とこれから

2014年2月、日本初のvvvv本「vvvvook」を星さんと共著で発売。その後、ドイツに行ってコミュニティイベントNODEへの初参加、vvvvの生みの親であるクリエイティブスタジオMESO訪問、日本でのvvvvコミュニティ発展など、感慨深い出来事がたくさんありました。おかげさまで紙の書籍はほぼ完売し(残念ながら重版には至らず)、現在は中古しか手に入らない状態です。ちなみに電子版はいつでも購入できるので興味のある方は読んでみてもらえたら嬉しいです。

あらから6年の月日が流れ、2020年。もともとvvvvは映像表現やデバイスの制御を簡単に扱えるツールが無かった時代背景から生まれたのですが、最近はUnityやUnreal Engine、TouchDesignerといった便利で高機能なツールが気軽に使えるようになったこともあり、その勢いに押される形でvvvvの存在感やユーザー数は以前と比べて減っているように感じます。そうなるとこんな疑問が浮かんできます。

「vvvvの時代は終わったのか?」

・・・・・・どうやら、そうでもないようです。むしろここへきて長い間開発が進められてきた次世代版の全貌が明らかとなり、ヨーロッパ圏のコアなユーザーを中心に活発なやりとりが行われています。今年はコミュニティイベントのNODE20が10月に開催されるので、これは再びvvvv界隈が盛り上がってくるのでは?と期待しています。

そこで、今回はvvvvの現在地とこれからを簡単にまとめておきましょう。

vvvvおさらい

vvvvはドイツ発のビジュアルプログラミングツール。Processing、OpenFrameworks、Unity、Unreal Engineといったクリエイティブ系の人たちが好んで使うツールの1つだと思ってもらえれば良いです。特にヨーロッパ圏にユーザーが多いツールだと思います。

ちなみにvvvvの読み方に決まりはありません。ほとんどの人はブイブイブイブイやブイフォー、フォーブイなどと読んでいます。

vvvvってどんなことができるの?と思う方は、とりあえずこちらの動画をご覧ください。プロジェクションマッピング、ステージ演出、キネティックアート、ジェネラティブな映像表現など、世界中のトップクリエイターが作る作品は他のツールで作られたものと比べても遜色ありません。

最近ではアーティストのRefik Anadol氏がTEDのオンライントークでvvvvを使った作品を紹介していました。

vvvvの公式サイトはこちら。最新ニュース、ドキュメント、ユーザーフォーラム、ダウンロードコンテンツなどほとんどのリソースはここに集まっています。

とりあえずvvvv触ってみたい!という方はここからダウンロードしてみましょう。商用目的の利用には有料ライセンスが必要ですが、それ以外は全ての機能を無料で使えます。なお、vvvvの大部分がDirectXや.NET FrameworkなどのWindows環境に依存しているため、残念ながらMac OSでは利用できません。

後で紹介する次世代版もしばらくはWindows限定になりそうです。一応、開発ロードマップにはMac対応も書いてあります。Macで使えないのは残念ですが、VRコンテンツやハイスペックなGPUをガンガン使う作品の開発では多くの開発者がWindowsを使っていると思うので、vvvvにとっては追い風ですね。

vvvvの歴史はMESOというドイツの会社から始まり、現在はvvvv groupというベルリンに拠点を持つ少人数のチームが中心となって開発しています。MESOについてはどこかで紹介できたらと思いますが、vvvvの歴史に興味のある方はMESOの特集ページをご覧ください。

vvvvの現在地

vvvvookを発売した2014年あたりはユーザーフォーラムに毎日たくさんの投稿があり、年に数回最新版がリリースされたりと、あの頃が一番勢いがあったような気がします。それに比べると今は随分とおとなしくなりました。理由はいろいろとありますが、端的に言うと「時代が変わった」ということでしょう。

vvvv in numbersという、毎年発表しているvvvvのスタッツ情報の2019年版を見るとvvvvのリリース数は2017年が4、2018年が8だったのに対し、2019年はわずかに1でした。2018年はダウンロード数が61700回と過去最高を記録したものの、2019年は22000回と逆に過去最低となっています。

利用している国と企業の数で見ると、2015年は21の国で102社が使っていたのに対し、2019年は17の国で63社が使っていました。企業の数だけで判断することはできませんが、少しずつ利用者が減ってきているように見えます。

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ソース:https://vvvv.org/blog/vvvv-in-numbers-2019

公式サイトのフォーラムもすっかり大人しくなってしまいましたが、コアなユーザーはElementというチャットルームにいます。ほとんど使われていませんが、日本語のチャンネルも用意されているので、興味のある方はアクセスしてみてください。

2019年に1回しかリリースされなかったのには、もう一つ理由があります。今現在、vvvv groupは次世代版の開発に注力しています。まだ機能が限られていたため本格的な制作に使える状態ではなかったのですが、今のペースだとあと半年から1年くらいで使い物になりそうな印象です。では、vvvvの次世代バージョン、vvvv gammaについて見てみましょう。

vvvv gamma

これまでリリースされてきたvvvvはバージョンbeta、いわゆるベータ版でした。次世代版は正式リリースとしてbetaが取れるのか、それとも「VL」と呼ばれるコードネームがそのまま採用されるのかに注目が集まりました。

そんな中、vvvv groupがアナウンスした正式名称はvvvv gamma(ブイフォー ガンマ)でした。ギリシャ文字のalpha、betaの次がgammaなので何のひねりもないといえばないですが、とてもvvvv的な発想だな〜と思います。

vvvv gammaは新しいwebサイト visualprogramming.net から入手できます。vvvv.orgとの関係がどうなるかは今のところ不明ですが、今後はこちらにも情報が集まってきそうです。

gammaはvvvv betaの良いところや特徴は残しつつ、全くの別物として作られています。例えばbetaまではDelphiというプログラミング言語で作られていましたが、gammaではC#に切り替えられました。今後はgammaをbetaの上位互換として徐々に移行していき、最終的にはgammaだけがアップデート・メンテナンスされていくことになりそうです。もちろん今のバージョンのvvvv betaは引き続き利用できると思います。

また、vvvv gammaのリリースに合わせて「VL」というキーワードが登場しています。これはvvvv gammaという開発環境で使うプログラミング言語のような位置付けで、ファイル拡張子の「.vl」やライブラリの「VL.OpenCV」といった形で目にすることがあります。今のところは「ふ〜ん、そうなんだ」くらいで良いでしょう。

待望の3Dグラフィックエンジン、VL.Strideの登場

vvvv人気が下火になった理由の一つは、3Dグラフィックの仕組みが時代遅れになってしまったことです。今でもvvvv betaの公式な3Dグラフィック表示にはDirect9というかなり昔の技術が使われています。vvvv神の1人であるvux氏が公開したDirectX11プラグインが実質的な標準機能として提供されていますが、ここしばらくはアップデートされていません。

次世代版の3Dグラフィックエンジンがどうなるのかは長年謎のままでしたが、ようやく「Stride」というオープンソースのゲームエンジンの採用が決まりました。Strideのwebサイトを見ると、UnityやUE4に劣らない高品質な描画や複雑なプロジェクトが作れそうなので、ユーザーの注目が集まっています。

ちなみにこのStrideというゲームエンジン、元々は東京のシリコンスタジオという会社がXenkoという名前で開発していました。現在は当時の中心人物が独立し、vvvv groupと密に連携してVL.Strideの開発を進めていますが、日本のvvvvユーザーとしては嬉しく思います。いつかシリコンスタジオさんとも話してみたいですね。

この記事を書いている時点ではVL.Stride対応のvvvv gammaはライセンスを購入した人限定で利用できます。予定では10月のNODE20イベントの前に無料公開されるようなので、期待して待ちましょう(私はライセンスを買って試しているので、紹介記事をご期待ください)。

NODE20はオンラインで開催

NODEはvvvvユーザーが集まってワークショップや作品展示、パネルディスカッションなどが行われるグローバルイベント。vvvvフェスです。初回が2008年のNODE08で、その後数年ごとに開催されています。そして今年の10月、NODE20がやってきます。前回がNODE17だったので、約3年ぶりですね。

毎回ドイツ・フランクフルトで開催されており、今年は中止かな?と思っていたところ、オンライン・オフラインのハイブリッドバージョンとなることが決まりました。世界中の参加者はオンラインでチケットを購入し、スマホアプリやブラウザからイベントに参加できます。現在チケット発売中なので、興味のある方はぜひ参加してみてはいかがでしょうか。(ドイツと日本の時差が7時間あるので、日本時間では夕方から明け方にかけての時間帯となります)

ちなみに、私も日本のvvvvコミュニティを紹介するオンライントークのモデレーター役で参加予定です。今でもtwitterに日本のvvvvユーザーが使った作品が流れているものの、言語の壁でお互いが交流する機会はほとんどありませんでした。そんな中、vvvv groupのjoregから彼らを紹介してほしいというオファーがありました。試しに声をかけたところ、4人のユーザーが快く承諾してくれたので無事に実施決定。オンライントークは私と4人が日本語で会話する様子をグローバルに活躍しているTakuma Nakataが通訳する形で行います。チケットがなくてもトークを視聴するだけならできるようなので、当日はぜひご覧ください。日程が決まり次第お知らせします。

さて、簡単にvvvvのこれまでとこれからを紹介しました。果たして何人の人に役立つ情報なのか、聞くのが怖いです。しかしそんなことは気にせず、今後もvvvvの情報を発信していくので、よろしくお願いします。

トップの画像はNODE15のflickrより。基調講演の時に貰ったデタラメTシャツ、今でも時々着ています
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Takramのリードデザインエンジニア。インタラクティブシステムの開発、UIデザイン、デザインリサーチ、企業ブランディング、新規事業開発など幅広い分野で「創る」活動をしている。ビジュアルプログラミングツール「vvvv」のユーザーでもあり、日本初の書籍vvvvookの著者でもある。