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ちいさな王様

先生から借りた『ちいさなちいさな王様』をやっと読み始め、今読み終えようとしている。

本を呼んでいるとき、めぐみさんのことを思い出した。一つか二つ年上のめぐみさんと、いつどこで出会ったのかは忘れたけど、とてもきれいな人で一度好きになったことがあった(気がする)し、「セックスしませんか」と尋ねた事がある。彼女は、その提案を軽くあしらうと、また一緒にドライブしたり、マクドナルドに行くと、コーヒー一杯で1日中話したりしていた。

「ちいさなちいさな王様」を読み、なぜめぐみさんを思い出したのかというと、物語の中で、ちいさな王様が主人公と空を眺める一節がある。

めぐみさんとはたまに、近所の大きな公園に行き、鯉に餌をやったり、売店で買ったパンや惣菜をベンチで食べ、ちょうどいい木陰を見つけ、何を話すでもなく、ただ横になっていた。
それで思い出したんだと思う。
けっこう人がいる公園だったけどめぐみさんといるとあまり気にならなかった。

週に一回会うような仲だったけど、ぼくは彼女の願う夢をとても信じる事が出来なくて、お互いどうというわけでなく連絡を取らなくなった。

何年かぶりにたまたま彼女に会った時、夢を叶えた彼女が、「みのるくん、ひさしぶり」と言っていた。 
ぼくは彼女が夢を叶えたことに動揺し、嬉しくて悲しい気持ちになり、「おめでとうございます」とわけのわからない事を伝えると、帰りの車内、「気持ち悪い」と、悪態をついていた気がする。

最近、夢と現実の区別がつかないことがよくあっ
て、それはたくさんの人に会う機会があるから、きっと脳が処理に終われているんだろうけど、めぐみさんのこと、ひさしぶりに会うまで記憶から抜け落ちていて、でも、「みのるくん、ひさしぶり」と、彼女の記憶には確かにぼくが存在していた。

ぼくは彼女を『ちいさなちいさな王様』で思い出す。彼女は何を見てぼくを思い出すんだろう。

「気持ち悪い」
noteに文字を打ち込んでそう思った。

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