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足立実の『ひと言』第53回 「政官財界の腐敗堕落 (リクルート事件)」 1988年11月11日 

 リクルートはよほど儲けたらしい。江副前会長は中曽根と親しい間柄だから、中曽根が権力を使って援助したのだろう。江副はお返しに中曽根に安いリクルート株を買わせて何千万円も儲けさせてやった。
 竹下首相、宮沢蔵相、安倍総務会長、渡辺政調会長、藤波前官房長官など政府・与党の最高幹部も儲けさせてもらった。
 江副は川崎市の助役にも一億数千万円儲けさせて一等地を手に入れた。NTTの新藤総裁や労働省と文部省の事務次官にもこの手を使った。株を買う金までリクルートが用立てたというのだからひどい話だ。
 「秘書がやった」と弁解するが、秘書のやったことは自分の責任ではないのか。
 誰がみても大汚職は明白である。
 自民党はよく「愛国精神」などいうが、こんな腐敗堕落した国を誰が愛する気になるか。自民党が国を破滅させているのだ。
 まだある。民社党の塚本委員長や公明党の池田代議士らもリクルートのおこぼれをもらっていることだ。「連合」は支持政党であるこの両党に抗議ひとつしていない。
 それで労働者の代表づらができるのか。上は首相から下は野党議員まで、腐った議員連中がおしゃべりしている国会は、勤 労人民にとって百害あって一利もない。
 額に汗して日夜労働し、なお生活が楽でない勤労者を甘くみるな。俺たちはいつまでもお人好しではない。
 リクルート疑獄を徹底的に糾弾すると同時に、腐敗堕落の政治の根を絶ち、勤労人民が主人公になって政治・経済を運営する社会の実現に向けて奮闘しよう。 (実)

(画像はリクルート事件の第一報をスクープした朝日新聞のトップ記事)

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注釈

・「リクルートはよほど儲けたらしい」いわゆる1988年に発覚した「リクルート事件」のこと。
リクルート社の関連会社であり、未上場の不動産会社、リクルートコスモスの未公開株が賄賂として譲渡された。贈賄側のリクルート関係者と、収賄側の政治家や官僚らが逮捕され、政界・官界・マスコミを揺るがす、大不祥事となった。当時、戦後の日本においての最大の企業犯罪であり、また贈収賄事件とされた。
参考

【リクルート事件】https://ja.m.wikipedia.org/wiki/%E3%83%AA%E3%82%AF%E3%83%AB%E3%83%BC%E3%83%88%E4%BA%8B%E4%BB%B6

・江副前会長
江副浩正(1936年~2013年)
株式会社リクルートの創業者。
1988年会長に就任、同年6月に「リクルート事件」報道が始まり、1989年2月に逮捕。2003年3月、執行猶予付き有罪判決を受けた。
参考

【江副浩正】https://ja.m.wikipedia.org/wiki/%E6%B1%9F%E5%89%AF%E6%B5%A9%E6%AD%A3

・「竹下首相、宮沢蔵相、安倍総務会長、渡辺政調会長、藤波前官房長官など政府・与党の最高幹部も儲けさせてもらった」
1986年6月に藤波孝生元官房長官へのコスモス株譲渡がおこなわれた。
さらに、リクルート事件のマスコミ各社の後追い報道によって、中曽根康弘前首相、竹下登首相、宮澤喜一副総理・蔵相、安倍晋太郎自民党幹事長(当時の竹下内閣時は総務会長ではなく幹事長・元首相安倍晋三の父親)、渡辺美智雄自民党政調会長ら、自民党派閥領袖クラスにもコスモス株が譲渡されていたことが発覚した。90人を超える政治家がこの株の譲渡を受け、森喜朗は約1億円の売却益を得ていた。

・「江副は川崎市の助役にも一億数千万円儲けさせて一等地を手に入れた」
1988年6月18日に川崎駅西口再開発における便宜供与を目的として川崎市助役へコスモス株が譲渡されたことを朝日新聞が『川崎市助役へ一億円利益供与疑惑』としてスクープした。当時再開発が行われていた明治製糖川崎工場跡地の再開発事業であるかわさきテクノピア地区に関して、本来容積率が500%のところを800%に引き上げて高層建築を可能とさせるのが目的であったと報道された。

・「NTTの新藤総裁や労働省と文部省の事務次官にもこの手を使った」
リクルート社からの贈賄の相手として政界ルートとは別に文部省(現文部科学省)ルート、労働省(現厚生労働省)ルート 、NTTルートがあった。
NTTルートでは、真藤恒総裁がリクルート社から同社事業への支援の謝礼として値上がり確実なリクルートコスモス非公開株1万株の譲渡を受けたことが発覚し、1988年12月12日にNTT会長を辞任。1989年3月6日にNTT法違反(収賄)容疑で元秘書ともども逮捕された。

・「『秘書がやった』と弁解する」
大蔵大臣である宮澤喜一は衆議院税制問題等に関する調査特別委員会で「秘書が自分の名前を利用した」と釈明した。

・「民社党の塚本委員長や公明党の池田代議士らもリクルートのおこぼれをもらっていることだ」
リクルート事件では公明党の池田克也執行部副書記長が収賄容疑で在宅起訴され離党。
民社党は塚本三郎中央執行委員長のリクルート関与疑惑が発覚し、党内から辞任要求され、1989年2月に辞任した。

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1988年6月に発覚したリクルート事件についてのコラム。

リクルート事件はロッキード事件と並ぶ戦後最悪の汚職事件。

参考

足立実の『ひと言』第5回 「誰がバクロするか-ロッキード事件」https://note.com/minoru732/n/n3c471d99a554

表題にあるように「政官財界の腐敗堕落」が露呈した事件である。

筆者は「それで労働者の代表づらができるのか。上は首相から下は野党議員まで、腐った議員連中がおしゃべりしている国会は、勤労人民にとって百害あって一利もない。
 額に汗して日夜労働し、なお生活が楽でない勤労者を甘くみるな。俺たちはいつまでもお人好しではない」と、最大級の怒りをもって弾劾している。

しかし、この事件以降現在に至るまでもIR汚職事件など政治家の犯罪は後を絶たない。

参考

IR汚職、秋元司議員に異例の実刑判決 賄賂否定の議員側は即日控訴https://www.tokyo-np.co.jp/article/129407

「こんな腐敗堕落した国を誰が愛する気になるか」!

もっともである。

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