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足立実の『ひと言』第51回 「決心から始まる」(訪中報告)」 1988年9月15日   


 第一次訪中団の十一日間の旅のなかで、みんな「やはり労働者の国だ」と云った。
 工場では大衆的に選出された職員・労働者代表大会が、次の権力を行使している。
1 社長に経営の報告をさせる。
2 その報告を審査する。
3 利潤の使い方を決定する。
4 幹部の評価と監督をおこなう。
5 幹部の任命と解任をおこなう。
 日本の社長が聞いたら卒倒するような話である。
 どこでも家賃と電気・水道・ガス使用料の合計が賃金の五%。退職後の年金が退職時の賃金の七五~一二〇%なのも「労働者が国の主人公」という実感をもった。
 矛盾や困難は山ほどある。「住宅を建築したが足りない。今これ以上つくるとインフレになる」「青年が資本主義を羨やましがって困る」・・・。「たいへんですよ」を連発する古参幹部に原則性と自信を感じた。
 人民が自分達のための政治と生産をやっている。やはり社会主義はいいと思った。
 上海の中国共産党の結党の会場で十三人の代議員の写真を見た。彼らは大会後ただちに労働運動を組織し、人民とともに農村で革命戦争をやって解放区を広げ、統一戦線で人民の大団結を実現し、二十八年の奮闘をつうじて革命の勝利をかちとった、その出発点をつくったのである。
 偉大な「労働者が主人公の国」は十三人の決心から始まった。私たちは決心の大事さをおしえられた。 (実)

(画像は中国共産党第一次全国代表大会会址にある結党13人とコミンテルンからの使者のレリーフ)

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注釈

・「上海の中国共産党の結党の会場で十三人の代議員の写真を見た」中国共産党第一次全国代表大会会址
参考

上海・中国共産党第一次全国代表大会会址で中国共産党の起源を知ろう!https://www.travel.co.jp/guide/article/33068/中国共産党が結成された第一回全国代表者会議は公式には1921年7月1日であり、現在も創立記念日とされているが、実際には7月23日である。当時の国内の党員は57名、結成大会出席者は13名(各地域の代議員、北京の張国燾ら、済南の王尽美ら、武漢の董必武ら、長沙の毛沢東ら、上海の李達・李漢俊ら、広州の陳公博、東京の周仏海)にコミンテルン代表のボロディンら2人の15名であった(中国人代表を12人とする説もある)。
会場となったのは上海のフランス租界にあった個人宅(李漢俊宅)で、現在はその場所も確認され、「中共一大会址記念館」となっている。記念館は立派に保存されているが、当日の参加者名簿や議事内容は残っておらず、不明な点が多い。陳独秀と李大釗は欠席したが、初代の委員長(書記)には陳独秀が選ばれた。出席者の平均年齢は28歳であったが、この中で1949年の中華人民共和国成立の式典に参加したのは毛沢東と董必武の二人に過ぎなかった。また参加者の中の多くは共産党を離れている。陳公博と周仏海は後に国民党に加わり、汪兆銘と一緒に重慶から離脱して南京に親日政権を作っている。後の共産党指導者として重要な周恩来、鄧小平、劉少奇らはフランスやロシアに留学中で、創立大会には参加せず、外国にいて入党している。

参考書籍
『中国共産党を作った13人』https://www.kinokuniya.co.jp/f/dsg-08-9985624580

・「二十八年の奮闘」
1921年の中国共産党結党から1919年中華人民共和国の建国まで28年間経過している。

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前回のコラムが訪中前、今回は訪中後の報告コラムである。

訪中した1988年と言えば、1978年から中国の国家指導者である鄧小平氏が進めた「改革解放」政策の晩期にあたる。

1978年以降中国においては鄧小平氏の指導のもと、資本主義的市場経済が導入された。具体的には経済特区・外資の導入などを行い、急速な経済成長を遂げ、中国独自の社会主義市場経済を形成してきた。これは1997年に鄧小平氏が死去したのち後を継いだ江沢民氏のもとで、この政策は継承され発展している。しかしその成長の陰で、農村における貧富の差の拡大や、大量の失業者が発生しているという問題点も顕在化した。

コラムで古参幹部が「青年が資本主義を羨やましがって困る」と発言していたそうだがこれは今となっては「青年」に限ったことではあるまい。

ちなみに2023年現在、中国のGDP(国内総生産)は第三位の日本をぶっちぎりで抜いてアメリカに次ぐ世界第二位の経済大国である。

参考

【2023年】世界GDPランキング https://eleminist.com/article/2710

コラムでは訪中団のメンバーが「『労働者が国の主人公』という実感をもった」とあるが現在もその実感を持てる国であるのだろうか?

ちなみに中国の医療保険制度において以前は社会主義国家らしく自己負担はなく無料で診察が受けられていたが、現在は大変高額な自己負担分をとられるとのこと。

参考

中国の医療費負担は日本よりも高額https://www.sompo-japan.co.jp/kinsurance/leisure/off/tips/sp/04_china/

ちなみに現在でもオランダやカナダ、ニュージーランド、キューバでは医療費の自己負担分はない。

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