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足立実の『ひと言』第20回 「裁判所は誰の利益に奉仕しているのか」 1985年7月10日

 裁判官は事実上自民党によって任命され自民党とスポンサーの資本家階級の気に入られなければ出世できないのだから、『法の下の平等』などもともと存在しないと言うべきだろう。
 大久保製壜支部の千葉君に対する判決は障害者同士の交際の事実を知ろうともせず会社の汚ない不当労働行為に目をつぶり、精神薄弱者援護の実践家識者の科学的見識に耳もかさず、会社内部や地域町内の声も無視するという世間知らずの予断と偏見そのもので、それだけに、障害者差別虐待の悪名高い大久保一族を擁護しようとする裁判官の執念だけが目立つ。
 この判決の前日二つの判決があった。一つは茨城県東海村第二発電所の設置許可取消を求めた地域住民に対し、水戸地裁が 『総理大臣のやった事は正しい』と要求を棄却した。もう一つは北海道教組が人事院(政府機関)勧告実施を要求しおこなったストライキで不当処分を受けた四千五百余人の訴訟で、札幌高裁は取り消しを認めた一審判決を覆えし大半の請求を棄却した。
 マルクスは百年以上も前に、裁判所は資本家階級が人民を支配する暴力装置だと言っているが、古くさい定義とはいえない。
 私たちはやはり大衆闘争に力を入れなければならない。合法的に直接攻めあげる方法はいくらもある。大勢の人に呼びかけ大勢の人の行動を起こし、悪者共を包囲し、彼らの威信を叩き落し、まじめに働く人々の正義の要求を実現しよう。(実)

(画像は国家の暴力装置の一つ最高裁判所)

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・法の下の平等
日本国憲法14条1項に規定されている。条文は以下の通り

憲法第14条
すべて国民は、法の下に平等であって、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない。

注2・大久保製壜支部
筆者所属地域合同労組東部労組の支部
『ひと言』第4回 「方針のこと」 参照

https://note.com/minoru732/n/n3308040cf2c4

・千葉君に対する判決
大久保製壜支部のある大久保製壜所における組合員の千葉氏と同僚の女性の障害者同士の交際を巡り会社が千葉氏を解雇した事件を巡る裁判の最高裁判所の判決
最高裁は千葉氏解雇事件の上告を棄却、組合側が敗訴した。組合は最高裁長官に厳重抗議文を提出した。

・精神薄弱者
「知的障害」の旧称。

・大久保一族
大久保製壜所を経営する一族

・「茨城県東海村第二発電所の設置許可取消を求めた地域住民に対し、水戸地裁が 『総理大臣のやった事は正しい』と要求を棄却した」
いわゆる東海第二発電所原子炉設置許可処分取消請求事件
訴訟の経緯
 本訴訟は、日本原子力発電(株)東海第二発電所の原子炉設置許可処分(昭和47年(1972年)12月23日)の取消しを求めた行政訴訟(昭和48年(1973年)10月提訴)である。水戸地方裁判所における第一審判決(昭和60年(1985年)6月25日)は請求棄却であり、国側の勝訴となった。
 原告側は同年7月5日に東京高等裁判所へ控訴したが、平成13年(2001年)7月4日、東京高等裁判所は住民らの請求を棄却した。
 平成13年(2001年)7月18日に原告側は最高裁判所へ上告した。最高裁判所第三小法廷は、平成16(2004年)年11月2日に上告棄却、上告不受理を決定し、原告側の敗訴が確定した。

 注7・「北海道教組が人事院(政府機関)勧告実施を要求しおこなったストライキで不当処分を受けた四千五百余人の訴訟」
いわゆる北教組事件
1982年に国と各都道府県は人事院勧告を凍結し、1983年には一部のみ実施した。これに対して北海道教職員組合(北教組) が人事院勧告などの完全実施を求めて1982年と1983年の計3回のストライキの処分をめぐる裁判。
この判決の後も懲戒処分を受けた組合幹部12人が道教委に処分の取り消しを求め訴訟を起こした。
2008年の控訴審判決では札幌高裁は「処分で最も軽い戒告である点などから、著しく妥当性を欠き、裁量権を乱用したとは認められない」として、処分の取り消しを命じた札幌地裁判決を取り消し、請求を棄却する逆転判決を言い渡した。

・マルクス
カール・マルクス(1818年~1883年)
ドイツの経済学者、哲学者、革命指導者、科学的社会主義、マルクス主義理論の創始者
『ひと言』第17回 「投降主義に反対しよう」参照
https://note.com/minoru732/n/n22a43b8d057c

・暴力装置
国家権力によって組織化され、制度化された暴力の様態を意味する社会学用語。主に軍隊や警察などを指し、広義には政府、国家など強制力を持つ公権力全般を含む。

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筆者の国家にばかり奉仕する人民抑圧機関=「国家の暴力装置」裁判所に対する憤りと怒りがよく表れているコラムである。

裁判や裁判所に解決を求めるのではなく、大衆闘争と正しい戦術により敵の資本家階級を責めていくことが肝要であることを述べている。

現在の労働組合運動にも警句となる箴言(しんげん)である。

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