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[書評]「ゼウスの覇権」安村典子

みなさんごきげんよう。noteの記事のために写真を撮ってもいつもアップロードした時に枠からはみ出してしまう苦笑

さて、今回は書評だ。しかもいささかマニア向けの本だ。ご紹介する「ゼウスの覇権」はホメロス以前(前8世紀)には主神ではなかったゼウスがいかにしてギリシア神話界の主神そして「父なる神」になったかを追う。

ゼウスは印欧語族の神でローマやインドの天空神と起源を共にする神である。これは言語学の観点から指摘されていることである。しかし、著者によればホメロス以前にはポセイドンを始めとしたギリシア土着の神が優位であったという。例に漏れず詳しいことは本書を読んでいただきたい。とは言ってもなかなか値段がはる本であるのでこの記事が購入するかの参考になればと思う。

今回本書を読んで感じたのは著者がホメロスなどを解釈する「西洋古典学」の立場ということである。当たり前に聞こえるかもれないが、言語学、それ以上に考古学的観点からの分析が少ないので著者の記述に対する説得力に不満が残る。一見「なるほど」と思う記述もあるが、文学である以上どうとでも解釈できてしまう不満がある。中にはこじつけとも言える解釈もあった。ゼウスの王権に対する叛逆というテーマが先に来てしまっているのでそれに合わせて都合良く解釈しているように見えるのだ。私たちのようなアマチュアの場合考古学、言語学的な指摘はできないので本書のような学術書にはそういった分野からの記述をしてほしかった。とはいえ類書が少ないのでこの手のギリシア神話のマニア向けな本は嬉しい。是非とも著者には新作の執筆をしてほしい。

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