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臆病者の恋

わたしは臆病者だ。

夕焼けは恐ろしい。朝と夜はもっと怖いし、言葉を書くことを中心に生きているのに、唇は酷く重くて。
だから、わたしは見るのだと思う。黙って見ているぶんには、夕焼けは襲いかかってこない。

わたしは愛する対象について根本的にはノーアクションな性格で、愛しいと思ったものを、ひたすら見つめていたいと思う。

美しさに気がついた次の瞬間も、きみは色を変えて、触れたり言葉にしたりして自分のものにしようとすれば、自分の存在の軽さに気がつく。
ただふとした時、きみも眠るいつかの夜、瞼の裏にきみの鮮やかさが蘇って、わたしはあの日にきみを盗んだことを一生秘密にしておく。


それが臆病者の恋です。


2015年 3月 9日の言葉

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