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【交流分析で考えるモヤモヤシーンのコミュニケーション②】~フォークリフト2台で~

この記事は当院のクライアントの体験談をもとにしたコミュニケーションの練習問題です。トピックの提供は、当院でエゴクラム分析と気功メニュー「愛05」「固着した悪意の解体」を受けていただいた方に限らせていただいてます。
当記事のトピック提供者は工場勤務のB村さんです。

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(個人が特定されないよう、設定などは変えてあります。そのうえで、提供してくれた方の許可を得て掲載しています。)

工場に自分でやったほうが早いのに、どうしても人を使いたい上司がいます。とくに多いのが、フォークリフトで運び出したい物の上にほかの物が載っている時、それを横に仮置きするだけの事なのに、いちいち人を呼んでもう一台フォークリフトを持ってきて「持ち上げていてくれ」と言うのです。そのためには自分の仕事を中断して、かなりの距離を歩いてフォークリフトを持ってこなければなりません…

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↑ フォークリフト
(画像はイラストACさんより)

問い
上司の気持ちを考えたうえで、上のような状況での応答のしかたを次の4つの中から選択してください。その際に「5つの自我状態」(※1)のうちどれを使うのがふさわしいか考慮すること。

①「…わかりました。すぐ行きます!」

②「どうしてわざわざ遠くの人を呼びに来るんですか?ぼくは今手が離せないんです。一人ではできませんか?もう一台フォークリフトを取りに行くと、ここからはかなり距離があるし効率悪いですよ。」

③「それなら上に載っている物を横に仮置きするほうが早いと思いますけど、一人では難しいですか?そのほうが、わざわざ遠くの人を呼びに来るより効率が良いと思いますけど」

④「いつも頼ってくれてありがとうございます。でも効率を考えると、ぼくは今やっていることを中断せずにやってしまいたいんですよね。あと5分くらいかかります。その後なら手伝うことはできますけど、それまで待ってもらえますか?」

(※1)「5つの自我状態」は交流分析の理論です。簡単に説明した表を以下に載せます。

自我状態のエネルギー

詳しくは下のマガジン記事をご覧ください。

≪解説≫

答え①

①はACのみの応答。上司の願いは叶いますが、B村さんの思いを伝えることができていません。角は立たないけれど、B村さんのほうでは今後も不満が募っていくかもしれません。

斜めストライプ(青)

答え②

②はCPとFCからの応答です。こちらの言いたいことだけを伝えています。上司が精神的に強い人なら、もしかすると受け止めてもらえるかもしれません。上司が受け止められそうにないなら、このような応答のしかたはやめたほうが良いでしょう。

斜めストライプ(青)

答え③

③は裏面的交流(※2)を読んだ応答です。

(※3)「裏面的交流」については以下のマガジン記事をご覧ください。

相手は「上司として『人を使う』ということが自分の立場にふさわしい振る舞いだ」と(表向きは)考えているかもしれませんが、本当は「人に甘えたい」と思っているだけかもしれません。すると、本音の部分は上司のCの自我状態からB村さんのPの自我状態へ発せられていることになります。

裏面交流①

その場合B村さんがPの自我状態で応答すると、意外にうまくいくかもしれません。②のように「一人ではできませんか?」と言うとCPからの応答になりますが、「一人では難しいですか?」と言えばNPからの応答になります。そうすると、上司のCの自我状態は受け取りやすくなるかもしれません。

裏面交流②

ただし、上司が自分のCの自我状態を嫌い抑圧しているような場合(人に甘えたいけど部下に甘えるのはダメだ!ここは「人を使う」ってことにしないと!と思っている場合)は、裏面的交流を読まれて不快に感じるかもしれません。そうなっていた場合、この上司はかなりややこしい人です。上司がややこしい人か、それとも素直なところもある人なのか、よく見て応答しましょう。

斜めストライプ(青)

答え④ー2

④はAからの応答が中心です。Aだけで応答すると冷たい感じになってしまいますが、④は言いたいことを「プラスのストローク」(※3)で挟んでいます。最初の「ありがとうございます」は感謝の言葉であり、最後の「それまで待ってもらえますか?」は相手に選択の余地を与えているので、どちらも相手を尊重する「プラスのストローク」です。
そうしたプラスのストロークに挟まれた部分を、上司の側で吟味する余地ができています。「5分もかかるなら…」と考えて、もしかしたらB村さんの願ったとおり、人を使わずに一人で作業することを自分から選んでくれるかもしれません。その場で即座には考えてくれなくても、あとになってB村さんの言ったことについて考えてくれるかもしれません。
②のようにB村さんの願いをストレートに伝えるのではなく、そちらの方向へさりげなく導くような応答です。

(※3)「ストローク」は交流分析の理論です。詳しくは以下のマガジン記事をご覧ください。



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