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私の特別なスーツ

#推したい会社

私の推したい会社は、オーダーメイドスーツを作れる「keuzes(クーゼス)」である。
ここは、女性のためのメンズパターンのオーダースーツを作っている会社である。
店舗を持たず、各地の会議室を借り採寸会やお客様の元まで直接伺って個別注文を行い、スーツ生地、ボタンのサンプルなどを持ち全国を飛び回っている、そんな会社だ。
私は戸籍が女性である事に納得はしているが、スカートを履いたり、体のラインの出る女性らしい服装をするのが好みではなかった。高校を卒業してすぐに総合病院に就職しているため、就活にスーツが必要なことも無く、入社式は年子の姉のスーツを2日間借りるだけで間に合っていた。
スーツが好きで(見るのも着るのも)、普段着れないからこそ憧れが大きく、表したい性別が迷子の私には本当に理想の会社であった。

なぜ、普段医療現場で働き、スーツを必要とする場面のない私が、keuzesに出会い、更にスーツへの憧れを持ったのか。
それは、セクシャルマイノリティ(LGBTQ)の当事者と気づいてから、YouTubeを見ていたある日のこと。KAHOAIRIさんという同性カップル美容師のチャンネルを見かけ、過去の動画を見ていた。
すると、そこに出てきたのはkeuzesの社長、田中さんである。田中さん自身も当事者であり、性別を気にせず、着れるスーツを。女性らしくなくてもいい。と言っておられた。「私は私。田中は田中。自分らしくありたい」というとても面白くもあり、信念を貫く姿に憧れを抱いた。

私は14歳から和楽器のお箏をやっているため、舞台など人前に立つことはそれなりにあった。
振袖はそりゃもう、和の文化の象徴で舞台映えすること間違いなし。だが、一人で楽器運搬、裏方までするとなると、着付けの時間もなく、ただ気崩れていくだけの服は相応しくなかった。
そして、振袖は好きだが、帯紐を締める度に女性らしく振る舞わないといけないと思って、固定概念に縛られる自分が何より嫌だった。
それなら、スーツはどうか…?カッコイイし、動きやすいし、着崩れない……良い衣装になるのでは?そう思うようになった。

今年、縁があり、keuzesを知るきっかけになったKAHOAIRIさんの元でイメチェンさせてもらい、プロデュース企画としてYouTubeに出してもらってから、本格的に舞台とSNSに露出頻度をあげ、音楽活動を頑張ろうと思った。そのため、前から思っていたkeuzesでスーツを作ると改めて決意したのである。

イメチェンする前から、ずっと、「スーツ作りたいです!」など熱烈にアピールし、採寸会も欠かさずチェックをし、遂に日程が決まった。

《令和5年5月13日》
梅雨の訪れを感じ始めた時期の大阪。私は電車を乗り継ぎ、採寸会に出向いた。
高校の制服がスリーピースだったのもあり、オーダーメイドのスーツはスリーピースで作ると決めていた。
大体15万円くらいはするとメッセージで事前に教えていただいていたので、それくらいの心づもりをした。また、職場の先輩に誘われて、パーソナルカラー診断を受け、イエベ春と分かっていたので、ジャケット、パンツはベージュ、ベストはチョコレート色にしようと決めていた。

採寸会会場の扉を開けると、社員の大花さんがおられる。
にこやかに迎え入れて下さり、名刺を頂く。
本当にインスタのストーリーでよく見るハムスターに似ている、そして、笑顔がとても素敵で高身長なのに威圧感がない。そんな姿に心惹かれた。
お互い席に着くと、こだわりポイントなどを聞いてくださるので、前もって準備したスーツの詳細を書いたイラストをお渡しした。真剣に目を通して下さり、「面白いですね、良いと思います!これで進めましょう」と言ってくださった。
予算を出来れば15万円以内に抑えたかったので、大花さんは「海外の生地選んじゃうと超えちゃうので、一旦国産のベージュとチョコレート出しますね」と手際よく生地を見やすいように出してくださる。
「色んな色見てると何が何色か分からんくなる…」と小さく呟きながら生地を見つめる姿は可愛らしく思った。
出していただいた生地はシックな落ち着いたカラーが多く、ピンとくるものがない…
「1度、予算関係なしに海外のも見てみていいですか?」と聞き、海外の物も出してもらう。
すると、すごく目の引かれるベージュのチェック生地と無地の綺麗なチョコレート色の生地を見つけた。
「う〜ん……これいいな……でも、予算……」
「これ可愛いですよね、両方海外のにすると高くつくので、片方国産にするのもオススメですよ」
と決して私の意見を否定することなく、色んな提案をして下さり、生地を腕の上に置き、自分の肌色に似合うか一緒に見比べる。
国産の方に柄が大きめなチェックのチョコレート色の生地があり、それに目が止まった。「チェックにチェックはちょっとうるさいですかね……?」と小さめの声で言うと、
「チェックの大きさ違うので、いい感じだと思いますよ!こっちのベージュのチェックは細かいので、ちょっと離すと柄見えにくくなりますし……」
とサンプルを遠くに離したり、丁寧に視覚を使いながら分かりやすく説明して下さる。

暫くすると、
なんとしてでも私が最初に提示した金額で抑えようとして下さる大花さん
VS
もう金額は何でも良いから拘りたくなってきた私

という構図になってくる。
結局、お金は働けば貯まるし、せっかく大きなお金をかけるなら納得のいくいいものをと思い、両方海外の生地にした。
その当時、私が選んだベージュの生地は人気なもので品薄状態になっていたため、念の為第2候補も選んでおいた。大花さんは「絶対第1希望通るように週明けにすぐ生地抑えるので、連絡待っててください!」と熱い眼差しで力強く伝えてくださった。

さて、生地が決まれば、次は裏地である。
何種類もある中からまた悩み抜くのである。大変でもあるが、そんな事よりも楽しさが勝る。
無料で付けれる裏地、少しお金のかかる生地などもあり、慎重に選ぶ。さっき選んだジャケットの生地に裏地のサンプルを合わせて何度も見比べる。
ベージュの生地の裏地を無難な茶色にしようとすると、さっきまで黙って見守ってくれていた大花さんが口を開く。

「裏地って基本見えないんですけど、風が吹いて見える時、ハンガーにかけて置いてる時に自分がテンション上がるものを選んでみてください。飾ってる時にテンション上がらないの悲しいじゃないですか。普通にあるスーツ屋さんだったら、同系色のは沢山ありますけど、オーダーメイドの良さは何色でも入れれる所ですよ。あえて奇抜な色とか入れるとオーダーメイド感が凄く出ます」

と、この採寸会1記憶に残る名言を言ってくださった。それを聞き、私は悩んでいた緑と赤の2つまで絞り、結局超奇抜な無地の赤を選んだ。
ベストはそれに引き換え、明るい黄土色と無難にしておいた。
赤を選ぶと「おぉ、いいですね、絶対かっこいいです」と褒めてくださった。
ここで大体の金額を聞くと2万円ほどオーバーしていることが判明した。それでも許容範囲内だと思った。

次はボタン選びである。これもまた種類が多く悩む悩む。楽器を弾く時に着たいと思っていたため、平ためのものを選ぼうと思っていた。
どれも良すぎて、見てるだけで楽しくて、本当に幸せな時間である。
ボタンはサンプル生地を少し折り曲げて合わせると、袖っぽくなってより想像しやすくなり、大花さんに価格が上がるとどんな良さがあるのかなど、聞きながら慎重に選んだ。

ここまで選ぶと残りはデザインである。
襟は跳ね上がってる方がいいのか、よく見るシンプルなものにするのか、ポケットは何個付けるか、内ポケットは、袖は、ベストの種類は…
私はスリーピースって決めてきただけやったら甘かったかな?と思う程、選ぶ工程が多く、種類も豊富で優柔不断な私は悩みに悩んだ。
だが、決して、大花さんが私の選択を否定することはなく、むしろ、選択の自由を増やせるように、視野を広げられるように、全てにおいてどう見えるか、メリットは何か、拘りたいならここがおすすめ、など、丁寧に事細かに説明して下さった。

ベストは4~5種類程形があるようだ。
4つのボタンにして、ジャケットと合わせた時にボタンが綺麗に等間隔で並んでいる様にしたいのか、ベストだけで着ることを見込んで3つのボタンにするのか、もっと、首元が詰まっている物がいいのか…など。
こんなに種類があったのかと関心しつつ、ここはスリーピースで着ることを想定して、等間隔にボタンが並ぶ4つボタンタイプにした。
ポケットは足長効果を狙い、斜めに付け、内ポケットは使用頻度が少ないため、なし。
袖はボタンを付けるか否か、ボタンを開けられるようにするか否かというこだわりが出来るらしい。着る場面の多くなるであろう舞台では、袖を折るのは考えていなかったため、ボタンをつけるだけにした。(個人的に裏地にこだわるのであれば、あえて捲って見せるのもカッコイイので次回はそうしたい)
ジャケットの後ろも真ん中で分かれるタイプにし、小さいポケットや二重ポケットが付けれるようだが、特に必要性を感じなかったため選択しなかった。
ジャケットの内側に入れれる刺繍は、ドイツ文字で名前を入れてもらった。
「座右の銘とかお母さんの名前とか入れる人もいるんですよ」
と楽しそうに大花さんが話される。
刺繍は自分にしか見えないオシャレとして確立していて、今までスーツを作ってきた人は本当に楽しんだんだなと思う発言であった。

1番keuzesのこだわりがあって良いと思ったポイントは、ジャケットのボタンの配置である。
メンズパターンのスーツだが、keuzes仕様にすると女性用スーツと同じ方向にボタンがつく。
「ここまでメンズスーツっぽく作ってきましたが、ボタンだけはあべこべにするって面白いですよね。性別を関係なく。そういう感じです」
その言葉に感銘を受け、keuzes仕様にした。
性別とは生物学上別れているだけで、女性らしく、男性らしくなんて、関係なく、「自分らしく」が大切だと学んだ。

その後はしっかり採寸して頂き、パンツはフレアにしたり、厚底などを履くことを考慮して長めに作ったり出来るそうだが、低身長の私は大きめの物を身につけると更に小さく見えてしまうため、あえて、普通にフィットサイズで作ってもらうことにした。
170cm代の大花さんを152cmの私の採寸のために跪かせてしまい、申し訳なく思ったのと同時にメジャー裁きがかっこよすぎて見惚れてしまっていた。

スーツのサイズ感が分かりやすいように市販のスリーピースのスーツを着て行ったため、その丈に合わせてもらったり、ベストは少しオーバーサイズらしく、持参したものより小さめに作ってもらうことになった。シャツは自分のものがなく、家にあるものを着ていったので、袖が余っており、それをかっこよく丈を合わせる方法なども教えて頂いた。
全てにおいて、対応が丁寧で不快になることは一切なかった。正にこれぞ神対応。当たり前の姿勢なのかもしれないが、その当たり前を当たり前に出来る素晴らしさ。私はこんな風に仕事を出来ているのだろうか。見つめ直すきっかけとなった。

採寸が終わるとある程度の金額を出してくださる。
生地を決めた時に聞いた金額とほとんど差異はなかった。
なるほど、と呟くと、「ちょっといいボタン選ぶだろうなと思って先程は見積りさせてもらったので、あまり変化はありません。」と大花さんが仰る。
お客様の思考を見抜いてなのか、素晴らしい対応だと思った。
どの生地にするかで料金が変わるのはもちろんだが、背が高く布面積が大きいほど価格も高くなってしまうらしく、私は背が低くて良かったなと初めて思った。

後は、変更点がないか、オーダーに間違いはないかなど確認し、注意事項の説明を受けた。
そこからは少し時間があまって、大花さんが雑談を始めてくれる。
「美容室、これから何処の通われるんですか?」
KAHOAIRIさんのYouTubeに出たことを知ってくださっている大花さんは、東京は遠いでしょう?と気にかけてくださった。大花さん自身が大阪出身のため、関西から東京に行く大変さを理解してくださっているのだ。
「髪の毛切るのにどこまでの遠征が可能ですか??私が大阪にいる時行ってた所は…」
と色んな美容室を教えてくださった。
どうやったら、こんなに人に気を利かせて、人のことを覚えられるのだろう。本当に人間として尊敬すべき人だと思った。

残りわずかの時間となる。
「私の時間○時までですよね…早いですね」
と名残惜しく思いながら、カバンからプレゼントしようと思っていた手紙とイラストを取り出す。
「これ、田中さん(社長)にも渡して貰えますか?」
そう伝え、袋を開けながら、これは田中さん、これは大花さんに…と説明しながら手渡すと
「え!!私にもあるんですか!?めっちゃ嬉しいです」
と満面の笑みで喜んでくださった。それだけでお渡しする価値が生まれる。とても嬉しい。
最後に思い出として写真を撮って欲しいと頼むと、
「私なんかで良いんですか〜?せっかくなら、スーツも写しましょ!」
と画角を考えた上で、私が渡したイラストと手紙などを持って、ツーショットを撮らせてくださった。

終始にこやかで、フレンドリーな大花さんに別れを告げ、採寸会会場を後にした。
帰路に着きながら、もう既にスーツをまた作りたいと思っていた。


《令和5年7月7日》
仕事終わり、家に帰るとどデカい段ボールが玄関に置いてあった。宛先は私。送り主は「keuzes」。
そう、七夕にスーツが届いたのである。
「え〜、やばい、やばい……思ってたより早く出来上がった」
と大興奮の私は急いで夕飯を食べ終え、スーツの入った段ボールを開封した。
どうせなら、お礼に感想動画を撮影しようと思い、この前3coinsで買った照明を出し、開封動画と着用感想動画を撮影した。
ジャケットは異常な程の軽さで、自分がこだわり抜いたスーツが今手元にある。裏地の赤もかっこよく映え、思っている何億倍もの仕上がりになっていた。
予算オーバーで支払いの時は少し悲しく思っていたが、この仕上がりを見れば納得の金額であり、そのスーツに相応しい人間にならねばと思った。

SNSにお礼として動画投稿をすると、動画は需要がある!度々見える笑顔が嬉しい、と拡散してくださった。そのおかげで、「ファンになりました!」と言ってフォローしてくださる方もおられ、keuzesの発信能力の高さを感じた。
少しだけ、パンツの丈が短く、ウエストもキツかったため、お直しの連絡をすると丁寧に測り方や郵送の仕方まで教えてくださった。(元より商品到着から90日間はお直しの無料保証が付いている)

こんな感じで、keuzesとは、お客様ファーストで、目に見えてお客様のことを大切にしている会社である。
また、最近はテレビ出演も増えてきて、更に需要が高まり、SNSも毎日分かりやすくスーツの情報を提供してくれている。
このnoteの企画に応募するにあたり、社名と社員名を出していいか確認すると、快諾して下さり、今こうして書かせてもらっているのである。
私が見本にすべき会社、人柄であり、推す以外に他は考えられないほど、素晴らしい会社なのである。


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最後まで読んで頂きありがとうございました。

これを読んでくださった皆様もこれを機に、ホームページを覗いて見てください。

⬇️keuzes HP、Instagram、Twitter、届いたスーツの写真があります。


実際に届いたスーツ

最高の仕上がり。私服にして毎日着たいほどいい物になった。もっと私が大きくなったら2着目も必ずkeuzesにお願いしたいと思う。

keuzesスーツの感想動画が気になる方はこちらのSNSをご覧下さい。

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