深夜、ふと目が覚める。
変に起きてしまったから眠れない。
どうしようか考えている途中で背中に自分とは違う体温の存在を感じてモソモソと向きを変える。
「帰ってきてたんだ。」
正体は忙しくて顔を合わせられていなかった彼。
服を見ると私服のまま。倒れ込むように寝たのかな。
携帯で時間を確認すると日付がちょうど変わった所だった。
明日、もう今日か。久しぶりの休日だって言ってたからゆっくり休んで欲しい。
「眼鏡……。」
眼鏡さえ外す気力もなかったかと静かに眼鏡を取って安全な場所に移動させる。
寝れる気配は全くない。
起こさないようにベッドからゆっくり抜け出してリビングへ、そのままココアを作ってベランダへと出てテーブルにココアを置いて椅子に座る。
都会は星空なんて物は見えなくて少し気分が落ちた。
まぁ、仕方ないか。
「寝れない?」
後ろから声が聞こえて振り向くと眠そうに目をこすっている彼がいた。
「起こした…?」
「んん。違う。喉乾いたから起きてきた。ココア?」
「うん。飲む?」
「飲む。」
テーブルを挟んだ椅子に座ってココアを一口飲む姿を見つめる。
目の下には微かにクマが出来始めている。
ココアを飲み続ける彼の目元をそっとなぞると目を見開いた後に微笑みを向けてきた。
「クマ?」
「うん。出来てる。」
「最近忙しいからなぁ。仕方ない。」
「服着替える間も無いくらい疲れてるもんね。」
そう言うと彼は頭に?マークを浮かべた後に自分を服装を見て笑った。
「ホントだ。全然気付かなかった。」
「うそ。動きにくいとかなかった?」
「ないない。帰ってきて君の寝顔見て、そのまま寝ちゃったんだ。アホだなー俺。」
ツボに入ったのだろうかケラケラと1人で笑う姿に可愛らしさを感じる。
そんな私に気付いたのか首を傾げながら聞いてきた。
「今、俺のこと可愛いって思ったでしょ。」
「バレた?」
「これでも君よりは身長が高い男ですよー?」
私のココアをしっかり飲みきったのかコップをテーブルに置いて私の体をヒョイっと抱き上げた。
「重いよ。」
「軽いよ。」
私は一般的な女性より身長が高い。
だからその分体重も重いはずなのに軽々と持ち上げられるとこの人も可愛さはあれど男の人なんだなと再確認する。
「眠れないならゲームでもしますか?」
「疲れてるんじゃないの。」
「いいの、君との時間が俺にとって最高の癒しなんだから。」
そんな小さなやり取りさえも愛しく感じる。
幸せな時間が長くのなら朝にならなければいいのにと心の中で願った。

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