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ポートランドに学ぶ街づくり#4 、地域に貢献する大学は、早めに学生を地域に放り込む!

こんにちは、「幸せに働ける人・地域づくり」についていつもブツブツ考えていますミノです。

今回は、街に貢献する大学の機能について考えていきます。


皆さんは、過去に以下のようなニュースがあったことを、覚えているでしょうか?

日本では、少子高齢化と大学の財政難が深刻になる中で、全大学で世界一の研究機関を目指すのは辛い。
地域の大学は、地域へ貢献することや地域の活性化を担う学生を育てるべき


上記のような論調に、うなずいた方も反対された方もいるのではないでしょうか?

日本では、上記議論の結果、2013年頃から、国が「地(知)の拠点整備事業」としてCOC(Center Of Communityの略)をスタートしました。

大学が地域との連携を強化するような取り組みを展開すれば、国から補助金がでますというものです。

この施策が打たれた背景には、国から補助金を出さないと、各大学が地域連携へ舵切りが難しかったという事業があるのではと考えています。

そしてココで何が言いたいかというと、日本全体で、大学が地域貢献に動き始めたのは、ここ5年前後のことであるということです。

一方のポートランド州立大学(Portland State University)は、創設以来「Let Knowledge Serve the City — 知識をもって市に貢献せよ」というモットーを掲げ、大学とコミュニティの橋渡し役を行っています。



そして、大学のカリキュラムそのものに、学生を街づくりの人材として提供するようなカリキュラムが埋め込まれています。

地域に貢献する人材を育てることは理解できるが、

学生を地域に放り込んで本当に役に立つのか?
問題ないのか?


など色々疑問に想う方もいるかもしれません。

それを解決するための独自の仕掛け3つをお伝えします。

https://youtu.be/evMsG8eE8Pg

1)大学のビジョン


繰り返しになりますが、ポートランド州立大学には「Let Knowledge Serve the City — 知識をもって市に貢献せよ」というモットーがあります。

そして実際に行政学の教授陣や、コミュニティの実務家たちが中心になり、地域に存在する課題の解決に取り組んでいます。

街の課題というとなんだか規模が小さように見えますが、市民の多様化や人権、貧困問題などが根深い米国の街では、街の課題解決にもグローバルな視点での思考や行動が求められます。

実際に私が、滞在中にお話したUBERドライバー5名は全て異なる地域や国からの移住者・移民でした。

そんな彼らに街の課題について声を聞いてみると、

ある人は、ナイジェリア人で貧困問題を訴えている。
ある人は、高卒の米国人て教育格差と経済格差は埋まらないことを嘆いている


など地域課題が多岐にわたり、また根深く、そして色々な課題と絡まっていることを実感しました。

そして、それらの課題について考えていくと、論点が複雑に絡み合っており、頭から湯気が出そうな感覚になりました。※https://goo.gl/Yff7dr


地域への貢献。

日本で育った私が、この想いを実際に行動に移すには、大学在籍中にしっかりと学び、よい企業に就職し、経済的な安定を得て、ボランティアなどで身近な地域に力を貸す。

もしくは大きな成果を持って、ふるさとに錦を飾るような取り組みをすることが地域貢献への正規ルートだと考えていました。

そしてかなり時間がかかるなと、遠い目をしたことがありました。

だからこそ、「Let Knowledge Serve the City — 知識をもって市に貢献せよ」というモットーがあり、大学在学中に学んだことを、その期間中に地域に活かす経験ができる点は素晴らしいなと思いました。

2)キャプストーンプログラム


ポートランド州立大学は、モットーだけでなく、実際に学生が「市に貢献する」というプログラムを既存カリキュラムに埋め込んでいます。

具体的には、学生は大学4年間のうち最初の2年間を、社会で働くための教養を学ぶ時間にあて、後半2年間を、キャプストーンプログラムに使います。

このプログラムは、実際に街の課題解決に取り組んでいるNPOやコミュニティのメンバーに入り、自身が学んできた知識を持って課題解決の一助となれるかに挑戦するものです。

学生たちはこのタイミングで、学問と、実務の違い。理想と現実の違いを痛感します。そして社会問題は複雑に絡み合っていることを目の当たりにし、そこから更に必要な知識を大学で学んでいきます。

(写真:大学でもフィールドワークの場所となるリビルディングセンター)

3)教授が地域課題のキュレーター


最後のポイントは、教授が、地域課題のキュレーター役である点です。米国ポートランドは、1人あたりのNPO数が全米一多いと言われるエリアです。

教授たちは、有象無象あるNPOやコミュニティの中に入り込み、地域にどんな課題があるのかを把握します。

そして、その課題解決を目指すコミュニティや、人材とのネットワークをもち学生が参加できる機会を探っていきます。

(写真:ポートランド州立大学の雅美先生と)


まとめ


街へ貢献する人が多い街ポートランド。これを支える要素の一つを大学が担っていることは大きな気づきでした。

日本では社会人の大学の進学率が現在8%。先進国の中で、最低レベルです。その一方で、人生100年時代と言われる中、サラリーマン人生を終え、地域に貢献したいと考える人は少なくありません。

人生100年を生きる中で、大学には、そのような社会人が次の挑戦にむかえる準備と実践が出来るカリキュラムがあってもいいのではと考えました。

働き方や生き方が多様になる日本で、このような準備と実践の場を提供する大学が日本でも増えてほしと考えたミノでした。


※参考文献

キャプストーンプログラムに見る地域連携教育の進め方 : ポートランド州立大学のシニアキャプストーンプログラムから学ぶこと(プロジェクト型実践的インターンシップと大学と地域の連携に関する研究会)

https://ci.nii.ac.jp/naid/110004625963

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